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テーマ別企業事例 コロナに負けない!商工会議所の底力

事例4 地域飲食応援サイト「みらい飯」で全国トップクラスの“支援”を呼び込む

近江八幡商工会議所(滋賀県近江八幡市)

コロナ禍で大打撃を受ける飲食業界をサポートすべく、日本商工会議所は4月28日、地域の飲食店をサポートする「地域飲食店応援プログラム みらい飯」を開設した。これを活用し、全国トップクラスの支援金を集めたのが、近江八幡商工会議所だ。1カ月足らずで集まった支援金総額は1776万2000円。その秘策を聞いた。

全国50商工会議所以上が参画した「みらい飯」。画像は近江八幡商工会議所のプロジェクトトップページで、近江商人をモチーフにデザインしている

「支援する人」も得をする〝三方よし〟の支援に

「参画しない手はない」

近江八幡商工会議所の事務局長、中西利之さんは、「みらい飯」の情報が入るや否や、そう確信した。「みらい飯」とは、日本商工会議所がクラウドファンディングサービス運営会社「READYFOR」と連携し、創設した地域の飲食店を応援するプロジェクトだ。これを各地の商工会議所が活用することで、県内外から広く支援金を募り、地域の参加店舗に支援金を分配するというもの。近江八幡市は水郷めぐりなどが有名で、近年は、たねやの複合施設「ラ コリーナ近江八幡」の人気で観光業、飲食業、宿泊業が勢いづいていた。その最中の新型コロナウイルスの猛威で、地域経済は急激に悪化していく。

「みらい飯の参画前に、異業種間のマッチングサイトを開設して一定の成果を出していました。マスク資材がある企業と縫製工場、飲食店とテイクアウト容器の製造業者やデリバリー会社などのつながりが生まれています。この勢いでクラウドファンディング(CF)を考えていた矢先に『みらい飯』の情報が入りました」

所内でもCFに関する理解に差があると感じた中西さんは、「みらい飯」に参画するために、CFとは何か、「みらい飯」の利点は何かを何度も丁寧に説明し、所内の理解度を深めることから始めた。

CFは「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を合わせた造語で、インターネットを使って不特定多数から少額ずつ資金を調達できるシステム。このシステムを用いた「みらい飯」は、地域の飲食店が自らプロジェクトを立ち上げる負担がないのが最大のメリットだ。同所では、「みらい飯」のフォーマットにのっとり、以下の3コース全13パターンで支援を募った。

①店舗指定コース(プレミアム付き食事券)

②店舗指定応援コース

③地域応援コース

各コースに3000円、1万円、10万円などの支援金額が設定されている。なかでも注目したいのが①で、支援金より多い食事券のリターンがあるのが特徴だ。このプレミアム率をどのくらいのパーセンテージにするかは各商工会議所で自由に設定できるが、それを同所では市の協力を得て20%に設定した。0〜10%とする商工会議所が多い中、20%は目を引いた。支援者の善意とお得感を引き出し、飲食店も地域全体も盛り上げる。まさに近江商人の〝三方よし〟を反映した支援策となった。

数字が数字を呼び込む流れが成功の鍵を握る

「みらい飯は、独自にCFを立ち上げる手間暇と費用を省け、リターン設定などは実行者の各商工会議所がアレンジできるという自由度が便利でした」(中西さん)

同所は6月15日に「みらい飯」の受け付けを開始したが、CFは開設すれば勝手に支援金が集まるというものではない。

「CFはいかに多くの人に知ってもらうかが成功の鍵です」というものの、開始当初は思うように支援金が集まらなかったと苦笑する中西さん。同所のFace bookで、エントリーしている地元の48飲食店を1店舗ずつ紹介し続け、多い日には1日3回、ランチタイム、夕方、就寝前とSNSをチェックする時間帯を意識して配信した。さらに強力な助っ人を得る。同所の青年部である若手経営者団体「はちまん青年経営者会」だ。

「私にCFの知識があったのも彼らのおかげです。約50人の団体ですが彼らの情報拡散力は絶大で、SNSに長けたメンバーが複数います。中でも突出してフォロワー数の多いメンバーがいて、その人が発信するだけで閲覧数180件が10倍の1800件に変わったこともありました」と笑う。

CFは支援者が多いと、その多さに興味を持って支援する人が増えるという傾向がある。この流れを同所はつかんでいく。READYFORの分析を踏まえた目標支援額900万円を優に超え、延べ846人の支援者を得て、総額ベースで約2倍の1776万2000円となり、1店舗当たりの支援額(平均)では全国トップとなった。

オンラインだからこそ〝人力〟がものをいう

「900万円を超えそうなころから、気になったのが予算です。しかし、市も当所も予算よりも応援の〝伸びしろ〟を見届けようという意見でまとまり、結果、行けるところまで行けました」とうれしそうに語る中西さん。

20%のプレミアム付き食事券も功を奏し、3コース中、支援者の9割がプレミアム付き食事券の「店舗指定コース」を選んだ。内訳は、1万円の支援金を選んだ人が46%と半数近くを占め、「たまには贅沢をしたい」という潜在的ニーズに合致したと思われる。

加えて、人的な努力あっての成功でもある。近江牛など客単価の高い店舗にエントリーを交渉したり、市民団体に声を掛けて一度に10人の支援者を集めるなど、インターネット任せではない人海戦術も地道に続け、1店舗300万円以上の支援を得た店舗もある。

「みらい飯以外にも、市・商工会議所職員を対象に地元飲食店からのテイクアウトランチを実施し、1カ月足らずで1710個、多いときで1日百数十食分の売り上げに貢献するなどしてきました。持続化給付金・補助金の申請サポートや、コロナ禍で深刻化する事業承継問題など、取り組む課題は多いですが、そんな中、職員向けにCFの勉強会を行うなど、みらい飯を通じて新たな機運が生まれたことは確かです。今後もいろいろな対策を考えていきたいですね」(中西さん)

「あきんど助けあいネット滋賀」のHPはこちら

会社データ

近江八幡商工会議所

所在地:滋賀県近江八幡市桜宮町231-2

電話:0748-33-4141

HP:https://8cci.com/

※月刊石垣2020年9月号に掲載された記事です。

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