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テーマ別企業事例 老舗企業には、経営者が学びたい"ヒミツ"がある 長寿企業の人材育成術

事例3 時代のニーズに合わせて“幸せな結婚式”に応え続ける

マリアージュ吉野(茨城県石岡市)

西洋の城を思わせる総合結婚式場のマリアージュ吉野

料亭として創業し、結婚式場やホテル経営へと事業を転換したマリアージュ吉野は、今年で創業128年を迎えた。老舗の伝統とおもてなしの精神を受け継ぎつつ、結婚式のスタイルに大革新を起こして、今日に至る。後継者として事業を担う娘2人の協力を得て、人材の資質を生かした経営で、地域に貢献している。

「常磐線に吉野あり」と評された割烹から結婚式場へ

茨城県の中央に位置する石岡市の中心部、JR石岡駅より徒歩1分の距離に、ホテルグランマリアージュはある。マリアージュ吉野が経営するホテルで、「結婚式のために創られた宝石箱のようなホテル」をコンセプトに誕生した。

「ここから車で10分ほどのところに市内で最も大きな宴会場を有し、独立した教会と神殿のある結婚式場『マリアージュ吉野』があります。『割烹(かっぽう)吉野』という料亭を営んでいたことから、弊社の歴史はスタートしました。水戸や土浦の旦那衆に一目置かれた有名店で、当時は割烹吉野で食事をすることが、ある種のステイタスだったと聞いています」

そう説明してくれたのは五代目で代表取締役の山本裕子さん。1891年に創業した割烹吉野は、連日芸妓(げいぎ)の奏でる三味線が鳴り響く繁盛店だったようで、その人気は大正、昭和と時代が移り変わっても揺るがず、戦後の復興期には「常磐線に吉野あり」と名を轟かせ、遠方から訪れる人も多かったという。百畳敷きの大広間があったことから1955年ごろより結婚披露宴が行われることが増え、77年には料亭から結婚式場へと業態を変えて「吉野会館」を設立する。だが、競合他社が進出し、個性を明確にできないまま業績は低迷していく。料亭時代の人気が少しずつ陰りを見せていった。

「私が夫から継いだ時は、倒産寸前でした。それも継いでから分かった事実で愕然(がくぜん)としました」と山本さんは苦笑する。だが、山本さんが社長に就任した89年からマリアージュ吉野の快進撃が始まった。年間売上高約1億6000万円を、5〜6年後には約12億円へと押し上げていったのだ。そして98年には石岡駅前にホテルグランマリアージュを新築開業した。

お客さまの信頼を得る人材を育てる

「ピアノ教室を経営した経験はありますが、結婚式場は未経験でした。でも、夢のある大きな事業で、やってみたいという思いが強くありました。花嫁さんと世代が変わらなかった私だからこそできることがあると引き受けました」と、山本さん。

さまざまなブライダルセミナーを受講し、月1回は東京を訪ねて結婚式場の最先端の情報を収集した。日本青年会議所の経営開発委員会への参加や、経営知識を深めるべく、82年4月には中小企業診断士の資格を取得して、経営力を多角的に磨いていく。そして、金融機関の融資を受けて89年に、吉野会館を教会と神殿を併設する結婚式場「マリアージュ吉野」に一新させた。

「バブル期の勢いに乗って、結婚式が華やかになっていった時代です。ドライアイスを使ったり、白い鳩を飛ばしたり、レーザー光線やミラーボールの光がきらめく、いわゆる“派手婚”ができる式場へと改革しました。幸せな結婚式を挙げ、幸せな結婚生活を送ってほしい。その一心です」

山本さんの社長就任に伴い、9割の従業員を入れ替え、急激な経営革新を断行した。

「天ぷらを揚げる職人がいなくなったら、自分が揚げよう。それぐらいの覚悟を持って人員を整理しました」と語る山本さんだが、当時から働き続けている70代、60代の従業員は多く、30年間、荒波をともに超えた団結力はゆるぎない。

「私と一緒に歩んできてくれた従業員は家族も同然の関係です。ノルマやペナルティーを課して接客向上を図るのではなく、お客さま一人一人に柔軟で心の通ったおもてなしができる人材育成に努めてきました。それができてこそ、お客さまから信頼される結婚式場になり得ます。親子三代にわたって式を挙げてくださったり、七五三で利用してくれた方が結婚式を挙げてくださることもあります。こうしたお客さま、従業員との信頼関係がマリアージュ吉野の最大の強みです」と山本さんは笑顔で語る。

事業承継も視野に会社、地域を活性化

時代に柔軟に対応しつつも、割烹吉野から受け継がれたDNAがある。厳選した食材で職人が手づくりする料理だ。冷凍食品やレトルト食品を使わないことを信条としており、上質な料理を提供し続けることにブレはない。

その一方、事業承継を見据えて、山本さんの娘2人が入社したことで、さらに事業に弾みをつける。長女の真莉子さんはホテルの運営に携わり、2016年9月より宿泊部門の責任者に就任。熱心な営業活動で集客稼働率を約60%から約85%に押し上げ、17年には最新型レジを導入し、業務の効率化を図るなど、母親譲りの経営手腕を早くも発揮している。次女の恵莉子さんは、卓越した歌唱力で山本さんが作詞・作曲する曲を歌い上げ、マリアージュ吉野や地元、石岡市のPR活動に尽力している。石岡商工会議所青年部が15年に企画した石岡市公認キャラクター「いしおか恋瀬姫」にちなんだ楽曲も、マリアージュ吉野から数多く提供しており、地域の盛り上げ役を買って出ている。

「東日本大震災で、ホテルも式場も大規模半壊して、商工会議所が提案してくれたグループ補助金制度に申請したことで事業を継続できました。地域あってのわが社を痛感しました」と語る山本さん。地元密着型の結婚式場として今後も地域とともに、「幸せの大輪を咲かせたい」と目を輝かせた。

会社データ

社名:株式会社 マリアージュ吉野

所在地:茨城県石岡市旭台2-16-5

電話:0299-26-8800

代表者:山本裕子 代表取締役

創業:明治24(1891)年

従業員:34人

HP:http://www.mariage-yoshino.com/

※月刊石垣2019年5月号に掲載された記事です。

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