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テーマ別企業事例 老舗企業には、経営者が学びたい"ヒミツ"がある 長寿企業の人材育成術

事例2 人材教育と環境変化への対応により「老舗だけど成長志向」を推進

ヨコウン(秋田県横手市)

シンプルながら目立つロゴは地元でおなじみ。企業のイメージアップにも貢献している

秋田県南部の内陸にある横手市は、江戸時代から交通の要所として栄えてきた。今では毎年2月に行われる雪まつりのかまくらが全国的に知られている。この地に初代・塩田儀三郎が塩田陸運社を創業したのは、明治14(1881)年のことだった。以来、時代の流れや顧客ニーズに応えていく中で発展し、毎年右肩上がりの成長を続けながら現在に至っている。

厳しくてもやめずに何とか続けてきた

「老舗企業で成長志向のところは、それほど多くないと思います。でも、当社は“老舗だけど成長志向”をうたい、売り上げをどんどん伸ばしています。昨年度はこれまでで最高の売上高、最高の利益でした」と、八代目(同族では六代目)で社長の塩田充弘さんは胸を張る。これまでの売り上げを示したグラフを見ると、たしかに昭和40年代初めからほぼ毎年、売上高が前年比増となっており、50年前と比べて現在は40倍以上にもなっている。秋田の地でヨコウンは、138年の歴史の中でどのようにして成長を続けていったのだろうか。

初代・塩田儀三郎は、銃砲火薬店を営みながら塩田陸運社を創業した。横手の近隣の岩手県湯田町に鉄道の線路がまだなかったため、国鉄(当時)の貨物を代行運送することを始めたのだった。これについて塩田さんはこのように語る。「初代はその前からいろいろな仕事をしており、造り酒屋をしていたという話もあります。稼ぐためにいろいろやっていて、運送屋もその一つだったのでしょう。長く続いてきた企業はどこも、一つの商売だけをやってきたのではなく、本業が厳しいときにはほかのことで稼ぎ、なんとか本業を続けていたのではないかと思います。ただ、その商売をやめずにずっと続けてきたのです」

マネジメントができる人材に運送や物流を教えていく

塩田さんは大学を卒業後、別の運送会社で働いたのち、1994年に家業の横手運送(51年に横手運送を設立)に入社した。「当時はCIを導入したばかりで、会社が変わっていく最中にあったと思います。しかし、運送業の社会的地位は低く、利益も低いまま。利益率が低くても、売り上げは伸びているし、お客さまから発注があるだけありがたいという考えが大半でした。お客さまとの従属的な関係、業界横並びの風潮、売上主義、会社よりも業界への帰属意識、一般の人の関心度の低さ……これでは、世の中から認めてもらえる会社にはなりえない。だから全部変えようと思ったのです」

2012年に塩田さんが社長を引き継ぐと、社名を「横手運送」から「ヨコウン」に変えた。社名から「運送」の文字をなくすことで、自社が総合物流サービス業であることを内外に高らかに宣言したのだ。現在、ヨコウングループの事業内容は輸配送業、倉庫業、梱包(こんぽう)業、流通加工業、通関業、環境事業、自動車整備事業、産業廃棄物収集運搬業、総合保険代理店業、ソーラー事業など多岐にわたっている。

そこで重要となってくるのが、幅広い業務に対応できる人材である。それまでは中途採用がほとんどだったが、塩田さんが社長となった7年前から大学生の新卒採用を始めた。「以前は社内で運送や物流が分かる人に会社のマネジメントを教えていましたが、それについていけない人も多く、それでは会社を大きく変えていくには限界がありました。そこで、会社のマネジメントができる人材を入れて、運送や物流を教えていくことにしたのです。新卒採用を始めてまだ7年で、現在も彼らは各部署で経験を積んでいるところなので、実際のマネジメントに携わるようになるのはもう少し先になりますが、能力のある人がどんどん成長していると感じます」と、塩田さんは自信を持って語る。

業務の属人化を避け新たな業務で社員を育てる

同社では新卒採用の開始と同時に、社内でのさまざまな研修も始めている。新入社員向けの「YOKOUNスクール」では、基本的な社員教育のほかに、新規事業の立ち上げを実体験させる演習も盛り込まれている。次世代の経営幹部を育てる「YOKOUNアカデミー」では、会計財務の知識や経営戦略の策定、部下の育成、組織マネジメントなど、多様なカリキュラムで、経営幹部に求められるスキルを学ばせている。

「これから人材の流動性が高まるのは間違いなく、業務の属人化は絶対に避けなければいけません。また、同じ人間が同じ仕事を同じ営業所でやっているとマンネリになります。そのため、会社としての業務方法を確立し、社員に対しては常に環境を変えて育てています。新しい事業を始めると、そこに配属された社員たちは自社のいいところを伸ばし、足りないところを補うにはどうしたらいいかと考えるようになる。それにより経験値が上がっています」

また、地域貢献の一環として地元のプロサッカーチームとプロバスケットボール2チームを支援し、今年春には地元秋田県を拠点にして活動するライフル競技のトップアスリート選手を新卒で採用した。これについても塩田さんは、「スポーツ支援により若い人がヨコウンに興味を持つようになり、それが新たな人材採用の呼び水になってくれればと思っています」と語る。

同社では会社の経営理念を「総合物流サービスを通じて地域社会に貢献します」と定め、単なる運送業から「総合物流サービス業」への脱却を図った。塩田さんが入社して間もない1999年に環境事業の一環として開始したフードリサイクルでは、スーパーやレストランから排出された生ゴミを回収して堆肥化し、その肥料でできた野菜をスーパーが「ヨコウンエコフードコーナー」で販売するという取り組みも行っている。これなどはまさに、運送という枠組みを超えた展開といえる。

「老舗だけど成長志向」の理念は、そういった環境の変化に対応して新たなことに挑戦していく社員たちによって支えられている。

※健康経営優良法人2019(中小規模法人部門)に認定されました

会社データ

社名:ヨコウン株式会社

所在地:秋田県横手市卸町8-14

電話:0182-32-3667

代表者:塩田充弘 代表取締役社長

創業:明治14(1881)年

従業員:361人(臨時含む)

HP:http://www.yokoun.co.jp/

※月刊石垣2019年5月号に掲載された記事です。

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