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テーマ別企業事例 なぜ、あの企業は元気なのか? 「夢のある会社」に人は集まる!

中小企業の人材不足が叫ばれて久しい。その一方で、地方や中小規模であっても優秀な人材が集まり元気な企業もある。人材が集まる企業に共通しているのは、社員を大事にし、自社製品に強い愛着が持てるように環境を整えている「夢のある会社」だった。各地で評判の元気な企業の人材戦略に迫った。

事例1 働きたいという思いに応える職場を実現し人材を確保

ホリ ホールディングス(北海道砂川市)

北海道産原料で菓子をつくるアイデアを実現し大ヒット商品となった「夕張メロンピュアゼリー」

日本を代表する大企業が「終身雇用を守っていくのは難しい」と悲鳴を上げる中、「長く勤めてもらいたい」と願う中堅・中小企業も多い。「夕張メロンピュアゼリー」などの人気商品で知られる、北海道砂川市にある菓子製造販売のホリは、メンター制度導入など、さまざまな工夫をしている。

ぜひ長く勤めてくださいと面接時に社長が「お願い」

ホリをはじめ、北菓楼、ホリ薬局などを展開するホリ ホールディングスの堀安規良代表社員は、就職面接や新入社員研修時に、必ず「お願い」することがある。

「ご縁があって入社していただくのだから、ぜひ長く勤めてください。みなさんは、日本で一番いい会社に入社したと思って働いてください」

もちろんお題目などではない。

「皆と仲良く、長く勤めてもらいたいので、採用では協調性や元気、笑顔、素直さなどを特に重視しています。また一番いい会社になるように毎年、研修制度、職場環境、待遇、福利厚生を改善しています」

新入社員研修では、誰が何を教えるか、教える内容、教え方を先輩社員が考え工夫する。そうすることで、先輩社員は自身が身に付けた経験や知識を整理できるし、教える勉強にもなり、新入社員との密なコミュニケーションを取ることができる。

それでも新入社員には日常生活の中で困りごとが起こるかもしれない。それを解決するために同社には、「お兄さん・お姉さん制度」があり、新入社員が先輩にどんなことでも気軽に聞ける関係をつくっている。

職場環境改善の一例として、2016年4月から製造現場へのロボットの導入を進めている。ロボットの主な仕事は、箱詰めやパレットへの積み上げといった作業者の体の負担が大きく、かつ「商品の味に関わらない部分」(堀さん)。18年12月からは美唄工場で作業者の腰への負担を軽減するパワーアシストスーツの利用も始まった。

ホリで働く従業員は386人。60歳以上の比率は約14%(54人)で、その中には70代4人、80代2人が含まれる。ロボットやパワーアシストスーツの導入は、年齢を重ねても働きたいと思う限り働いてもらうための施策だが、若い層にも好評だという。

しかし、一般的なピラミッド型組織の場合、係長から課長、課長から部長というように頂点へ向かうほどポストが少なくなっていく。辞める人が少なければ、ポストに空きがなくなり、昇進というインセンティブがなくなってしまうのではないか。

堀さんは、二つの方法でその解決を図っている。まず役職定年を設けているので、役職者が一定の年齢になればポストは空く。ただし「その人が健康で、やる気があって、上司に力を認められていれば、そのままの役職で働いてもらいます。社員はその姿を見て、本当に長く勤めることができるのだと実感しているはずです」。

次に継続的な設備投資。和菓子、洋菓子、おかき、ゼリーなどの工場を砂川や隣の美唄市などに次々と建設してきた。現在は砂川にチョコレート工場を建設する計画が進んでいる。来年、工場が稼働すると多くの従業員が必要になり、管理職ポストも増えるというわけだ。

北海道の素材を使った菓子にこだわり成功

「昨年、スイスを視察して気候風土が北海道に似ていることに気が付きました。そこでスイスで盛んなチョコレートづくりを学び、北海道の素材を使った北海道らしいチョコレートづくりに挑戦したい。北海道の牛乳を使ったおいしいミルクチョコレートもつくりたいと考えました」と堀さんが言うように、ホリの菓子に共通するキーワードは「北海道の素材」だ。

堀さんの父・貞雄さんは1947年、砂川で菓子店を始めた。ここは上砂川や赤平、歌志内などの炭鉱町の交通の要所として栄えており、炭鉱労働者への配給所に菓子を売る店が集まっていた。3人兄弟の末っ子だった堀さんは父から「お菓子屋はいい仕事だ」という言葉を聞いて育った。その理由は、菓子を食べるときは誰でも笑顔になるからだ。しかし父は息子たちには安定した仕事に就いてほしいと願い、3人とも薬科大学へ進学させて薬剤師の資格を取らせ、次兄・均さん(前会長)と堀さんを製薬メーカーに就職させた。

堀さんが28歳の時、転機が訪れる。父から菓子店を閉めるという連絡が入ったのだ。堀さんと均さんは躊躇せず菓子店の再建を決意、会社を辞めて砂川へ戻った。家族が力を合わせてもすぐに店の経営が持ち直したわけではなかったが、車に商品を山積みにして、北海道中を営業して回る中で、北海道のおいしい産物を生かした菓子づくりという目標を見つけた。

飛躍のきっかけとなったのは、87年に北海道を代表する農作物である夕張メロンの果肉を使った「夕張メロンピュアゼリー」の商品化に成功したことだ。

「当時、兄は営業・企画・宣伝を担当、私は製造・財務と営業もしていました。車に商品を満載して出発、函館の朝市やお得意さま回りをしていました。砂川より北は兄、南は私が担当でした。兄は夕張メロンを使ったゼリー製造の許諾を得るために試作品を持って夕張市農協さまに日参し、父は工場で試作品づくりに没頭していました。そのため3人が顔を合わせることができる早朝5時から毎日会議をしていました」

「夕張メロンピュアゼリー」は、繰り返し試作を行い、食感にまでとことんこだわり、農協の人たちを「この味なら大丈夫」と言わしめた逸品だ。

88年からは日本航空の機内茶菓として採用されたこともあり、大ヒット商品となった。以後、堀さんは「北海道を元気にしたい」という思いから、「とうきびチョコ」やグループの北菓楼が販売する「バウムクーヘン 妖精の森」「北海道開拓おかき」などの原料の大半を北海道産にこだわっている。

例えば、「北海道開拓おかき」を見てみると、ベースとなる餅米も塩も北海道産なのは当たり前として、9種類(6月1日現在)もの北海道の味を用意している。函館産のイカ、増毛産の甘エビ、標津産の秋鮭、枝幸産の帆立、えりも産の昆布、白糠産の柳だこ、白老産の虎杖浜たらこ、期間限定野付産の北海シマエビ、そして「北海道開拓おかき」25周年を記念した新商品の枝幸産毛がに。これらの産地を地図上に落とし込めば、全道から特産品を調達していることが分かる。

このように北海道の素材にこだわり、特徴のある、手間暇掛けた丁寧なお菓子づくりを実践しているのは、堀さんの「北海道のお客さまにご支持をいただけなければ、全国のお客さまからのご支持はいただけません」という思いによるものだ。その思いがきちんと形になっているからこそ、社員は誇りと自信と夢を持って長く働けるのだろう。

売上高100億円の目標を達成し皆でハワイ旅行へ

売り上げ一億円からスタートし、業容を拡大していったホリは、社員に対する待遇や福利厚生も充実させていった。上の表のように、社員にやりがいを持って働いてもらうために、さまざまな施策を推進している。一例を挙げると2012年に売上高100億円を達成した際には、社員をハワイ、パート社員は東京ディズニーランドへ招待した。しかもお小遣い付きだ。もちろんその場の思いつきではなく、ホリグループ全社員が持つ名刺大のクレド(具体的な行動指針)で宣言し、目標達成した翌年に約束を果たしたのだ。10年に兄(前会長)が急逝したこともあり、社員にも元気を出してもらいたい思いもあったという。

また、創立60周年の年にはパーティーの計画を取りやめ、代わりに(社員が望んだ)長年の勤務への慰労としてのお金をパートを含む全社員の口座に振り込んだ。このような施策が評判を呼び、社員の家族や友人が入社を希望したり、介護や出産・子育てのため退職した社員が一区切り付いた後に復職を願ったりするケースも多いという。

ホリになぜ人材が集まるのか。新入社員に対しては面接時から長く働いてもらいたいと宣言し、「素直・元気・勉強・挨拶・掃除」のできる社員を求めていることを明確にする。これで採用のミスマッチは減る。新入社員教育では、先輩社員が考えた実践的な教育を行う。先に紹介した「お兄さん・お姉さん制度」というメンター制度で不安や悩みを解消し辞めないようにフォローする。

設備投資を継続して会社を持続的に成長させるとともに、味に関わりのない部分については積極的にロボットを導入して中・高年者の体力の衰えをカバーするなど社員への負担を減らす。行事などの施策を数多く用意して、コミュニケーションを密にして仲間意識を高める。このような継続的な職場環境や待遇の改善を目の当たりにしている社員は、年齢を意識せず、安心して長く働ける。

堀さんは言う。「いい会社には人が来てくれます。また働きやすい職場づくりをしていると愛社精神も育つと思います。社員に、この会社に入って本当に良かったと思ってもらえるような会社にしていきたい」

何よりも、夢のある会社の人材は辞めないのである。

会社データ

社名:合資会社 ホリ ホールディングス

所在地:北海道砂川市西1条北19丁目2番1号

電話:0125-53-2231

代表者:堀安規良 代表社員

従業員:386人

HP:http://www.e-hori.com/

※月刊石垣2019年7月号に掲載された記事です。

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