日商 Assist Biz

更新

テーマ別企業事例 なぜ、あの企業は元気なのか? 「夢のある会社」に人は集まる!

事例4 狭い地域に結びついた企業だからこそ世界に発信できる魅力も生まれる

黒木本店(宮崎県児湯郡高鍋町)

黒木本店の建物の奥で、焼酎が製造されている

宮崎県にある黒木本店は、全国的にその名を知られた麦焼酎「百年の孤独」をはじめ、“焼酎一筋”に数々の銘柄を製造している。畑での原料栽培から酒づくり、そして廃棄物の堆肥化まで自社で行う「自然循環農法」にこだわる酒づくりに多くの若者が共感し、人口約2万人のまちにある従業員35人の小さな会社に、全国から就職希望者が集まってくる。

50年後も100年後も良い焼酎をつくるために

明治18(1885)年に創業した黒木本店は、創業100周年の節目となる1985年、麦焼酎を樫樽で長期貯蔵して熟成させた「百年の孤独」を発売。今ではプレミアがつくほどの大ヒット商品となっている。これにとどまらず、その後も麦焼酎「中々」や芋焼酎「㐂六」、米焼酎「野うさぎの走り」など、こだわりのある新たな製品を次々に出している。現在、同社の社長を務めるのは、今年1月に先代の後を継いで五代目となった黒木信作さんだ。

「ヒットした商品だけをつくり続けていくというやり方もありますが、百年の孤独は生産量も限られています。私たちは宮崎のこの豊かな大地から生まれた原料を使って焼酎をつくっているので、その原料の魅力をどんどん掘り下げていくうちに、麦だけでなく、芋や米など、いろいろな焼酎もつくるようになっていったのです」

さらに同社では、この地の豊かな自然環境を生かし、それを守るための「自然循環農法」で焼酎づくりを行っている。これは、畑での原料の栽培から始めて、焼酎生産で出た廃棄物を堆肥化して畑に戻すというものである。先代社長は98年に廃棄物を堆肥化する有機肥料工場を設立し、2004年にはその肥料を使って自分たちの手で焼酎の原料を栽培する農業生産法人「甦る大地の会」を立ち上げ、農場の運営も始めている。

「黒木本店で代々受け継いできたビジョンです。私たちはこの土地の自然に生かされて酒づくりをしているので、50年後も100年後も良い焼酎をつくり続けるためには、自分たちの手でこの土地を豊かなものに保っていく必要があるのです」

ホームページでの情報発信で会社の思いを伝えていく

〈豊かな大地 豊かな森 豊かな空 そして 豊かな水。こんなにも恵まれた地が他にあるのだろうか。〉

これは同社のホームページの最初に出てくる文言である。ここでは、製品の紹介よりも自社のコンセプトや焼酎づくりに対するこだわり、製法の説明により多くの言葉がつづられている。それ以外にも、フェイスブックやインスタグラムで会社の近況を発信している。このような情報発信が、働く場所としての同社に人をひきつける理由にもなっている。

「5年ほど前にホームページを刷新して自分たちの取り組みを発信するようにしたら、うちで働きたいという人が連絡してくるようになりました。でも以前は、地元でこちらから探しに行かないと入社してくれる人がいないという状態だったんです」と黒木さんは笑う。

同社は規模が小さく、従業員の離職率も低いため、定期的な求人の必要がなかった。しかし、5年ほど前から働き方改革がうたわれるようになって従業員の休日を増やしたり、新規事業の計画があったりしたことから、従業員を少しずつ増加していく必要に迫られた。

「それからホームページがすごく生きてきて、県外からも就職希望者が来るようになりました。ホームページで発酵や微生物によるものづくりの世界、職人としてのあり方などに興味を持ってもらったり、農場で原料から栽培していることを知ってもらったりすることで、うちが焼酎づくりをしているだけでなく、広がりのある会社であることに魅力を感じて、若い人がエントリーしてくれるようになったと感じています」

焼酎づくりを核に地域の魅力を世界へ

同社には別会社として、山の中腹で手づくりの焼酎を製造している尾鈴山蒸溜所と、農場を管理する「甦る大地の会」がある。それぞれの会社の従業員が交互に行き来しており、技術や理念を共有し合い、農場での草刈りや収穫の時期には手伝いに行っている。

「従業員の8割ほどが地元出身で、最近採用した5人は県外です。県外から来た人にここが新たなふるさとだという感覚を持ってもらうには、この土地を愛してもらうことが一番です。そのために、自分たちで育てた野菜や牛・豚の肉を使ったバーベキューをして、この土地への感謝の思いを持ちながら、ここの生活を楽しんでもらうということを毎年やっています」

それと同時に新たなことにも取り組んでいる。尾鈴山蒸留所ではスピリッツなどの別の蒸留酒製造を計画しており、農場では焼酎の原料だけでなく、野菜やハーブの無農薬有機栽培も始めている。

「東京だけが最先端の仕事の場ではなく、田舎の狭い地域に結びついた企業だからこそ、世界に発信できる魅力も生まれると思っています。今後は海外展開を進めていき、うちの焼酎を好きになってこの土地に興味を持った人が世界中から訪ねてくるようになり、地域全体が潤っていくことが僕の夢です。私たちは自然と向き合いながら、焼酎のつくり手として新たなことにチャレンジし続けていく。その姿勢をインターネットで常に発信していこうと思っています」

働く人にとって魅力ある会社にするだけでなく、確固たる理念と未来像を持ち、その情報を発信していくことで、小さなまちの中小企業であっても、その志に共感した人たちが全国から集まってくる。同社はその好例といえるだろう。

会社データ

社名:株式会社黒木本店(くろきほんてん)

所在地:宮崎県児湯郡高鍋町大字北高鍋776

電話:0983-23-0104

代表者:黒木信作 代表取締役

従業員:35人

HP:https://www.kurokihonten.co.jp/

※月刊石垣2019年7月号に掲載された記事です。

次の記事

八千代工業株式会社/株式会社フォーバル/大和産業株式会社/株式会社今仙技術研究所

いよいよ来年に迫ってきた2020年東京オリンピック・パラリンピック。過去の大会以上にパラリンピックにも注目が集まっている。そこで、20年に開催する東京オリ・パラを1年後に…

前の記事

一般社団法人日本ほめる達人協会/大東自動車株式会社

「働き方改革」というと、少し大上段に構えてしまうかもしれない。しかし、日常的に“ほめる”を実践すると、笑顔が増え、人間関係も良好になり、会社の業績も劇的に変わる。社内…

関連記事

札幌商工会議所/大阪商工会議所/岐阜商工会議所/近江八幡商工会議所

未だ収束が見えないコロナ禍は、日本社会や経済に甚大なダメージを与えている。この窮状を打破するため、全国515の商工会議所は一斉に動き出した。地域の企業や地域の特色・状…

西光エンジニアリング株式会社

BCP(事業存続計画)本来の意味は、企業を存続させて、雇用と顧客を守るということである。自然災害の多いわが国の場合は、BCPについて、災害から社員や社屋・施設を守る防災計…

釧路駅西商店街振興組合/中町商店街振興組合

人口流出や郊外型の大型ショッピング施設などに押されて、苦境に追い込まれている地方の商店街も多い。しかし、そのまちの特色や地域の名産を生かし、見事に復活した商店街もあ…