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テーマ別企業事例 なぜ、あの企業は元気なのか? 「夢のある会社」に人は集まる!

事例3 「弱いお肌の、強い味方に。」を合言葉に地域と共存共栄するコスメを開発

マックス(大阪府八尾市)

商品に配合する成分の一部を自社農園で栽培。無農薬・有機栽培で原材料にも責任を持った取り組みをしている

化粧品メーカーのマックスは、スキンケアやボディケア、ヘアケア製品など多品目を扱い、東南アジアを足掛かりにグローバル展開も視野に入れている。その原動力になっているのが、「悩み解決」をテーマにした商品開発だ。一時は赤字に転落しかけた業績は社員の悩みの実体験をヒントに商品化したことで、見事に回復していった。

「こんなんあったらええな」の社員の声を次々商品化

小学校の手洗い場の、ネットでつるされた固形石鹸。幼少期の記憶の断片にある風景に、マックスは大きく貢献している。

創業1905年、小学校の手洗い石鹸の代表格として知られる「レモン石鹸」を製造し、以来、贈答用や機能性石鹸など、時代のニーズに合わせて数多くの石鹸を開発してきた。幾多の試練を乗り越えての歴史だが、2009年に五代目で代表取締役社長に就任した大野範子さんの代も例外ではない。市場も固形石鹸離れや、お中元・お歳暮などのギフト市場の縮小など急速に業績は悪化し、13年には創業以来初めての赤字となる危機に直面した。さらに自身もがんを患い、一時はステージ4に進むなど、入退院を繰り返す状況になってしまう。

「抗がん剤の副作用で肌はボロボロでした。その時に、悩みを解決できる商品をつくろうと強く思いました。会社の次の100年に向かってのビジョンが明確になった瞬間です」

大病を経験されたとは思えない肌ツヤの大野さんは、歯切れよく語る。そして、その言葉通り14年、「悩み解決」路線に商品開発の舵を切った同社は、赤字転落を回避するとともに、新たな経営基盤を確立していく。

そして「悩み」の徹底した洗い出しに、社員たちの生の声を反映していった。

「日用品というジャンルを扱う企業だからこその戦略です。日頃どんなことに悩んでいて、どんな商品が『あったらええな』と思っているか、そこに商品開発のヒントがたくさん詰まっていました」 同社の快進撃が始まった。

社員のアイデアを採用しやる気を生かせる体制

社員の意見を基に自社ブランドを見直した。OEMを含めて、化粧品を①臭いをケアするデオドラント商品、②敏感肌対応の商品、③新陳代謝を促進する入浴剤、④スキンケアと、カテゴリーを大きく四つに分けて商品開発を進めた。

社員の中から出てきた高校生の息子の汗臭さや夫の加齢臭、子どものアトピーやご自身の乾燥肌、冷え性など、世代別、性別、体質別にある多種多様な悩みを一つひとつすくい取り、新商品を次々生み出した。売上高の約7割を占めるそれらの商品は10年前にはなかったものであり、販路もなかったという。前例なき挑戦が、赤字転落の危機を救ったようだ。

「月1回は社員一人一人と面談をして、意見を聞くようにしています。商品のヒントになるアイデアを聞き出すだけではなく、個人のやりがいをいかに引き出すか、組織ありきではなく人ありきの対話です。組織に人を当てはめるようでは会社の勢いは減速します。こんなことをやってみたいという思いがあれば、それを実現できる体制を考える。自分が前に出るのではなく、社員を後押しするのが私の役割だと思っています」と大野さん。

トップダウンで指示するのではなく、ボトムアップで自主的に行動することを推奨している。担当部署が違っても、発案者のやる気があれば、立案から業務を完逐することも多々あるという。

「モチベーションが高い社員ほどやりがいを感じる環境づくりに努めています。自由度は高く責任は広く、です。トライ&エラーしながらチャレンジするのが、弊社の方針。リスクを恐れて守りに入るのではなく、起こり得るリスクを検証しながら前に進む自己変革型企業を目指しています」

世界的なニーズを読んで地域循環型のビジネスモデルへ

優れた商品は優れた〝人財〟によって創られるという考えは、さらに新たな可能性を導き出す。産学官連携による地域密着型コスメの開発だ。

同社は、大阪府八尾市にある本社工場のほかに、奈良県にも30年ほど前から製造工場を有し、現在製造の9割を奈良工場が担っている。この先100年のビジョンを見据えた時、地域との共存共栄は不可欠と考えた大野さんは、奈良を代表するご当地コスメができないかと社員らに投げかけた。

化粧品の歴史をひもとけば、奈良に都があった時代に行き着く。そんな奈良県の農産物をコスメ成分に取り入れれば、地域循環型のビジネスモデルになり得る。

すでに柿渋配合の商品を開発している同社は、柿に優れた抗酸化性があるとのエビデンスを取っており、奈良の特産品である柿を使ったご当地コスメの可能性をさらに導き出せる。18年度から奈良県の「平成30年度高付加価値獲得支援補助金事業」の支援を得て、県の農産物を使った商品化の研究に乗り出す。柿の研究で成果を上げている近畿大学農学部と連携し、地元農家との契約を取り付けていった。

そして19年2月、建国記念の日に奈良県限定のご当地コスメ「やまとcosmetic」シリーズが産声を上げた。

「店販、ネット通販、OEMが販売ルートの3本柱ですが、これに観光が加わる新事業になり得ます。奈良県はすでにインバウンドの勢いがあり、欧米を中心にビーガン(完全菜食主義)が広まっていることから、完全な非動物性のビーガンコスメにして、インバウンドを取り込むのも狙いです」

同シリーズの中でも女性社員のアイデアがさえる大仏型の美容マスクは注目株。店舗によっては早くも月100枚単位で売れているという。

「今後は国内だけではなく、海外も視野に入れた事業拡大を考えています。東南アジアを足掛かりに、メード イン マックス、世界のオンリーワン企業へと成長していきたいと考えています」 そう言って快活に笑った。

会社データ

社名:株式会社マックス

所在地:大阪府八尾市植松町2-9-29

電話:072-994-5050

代表者:大野範子 代表取締役社長

従業員:93人

HP:http://soapmax.co.jp/

※月刊石垣2019年7月号に掲載された記事です。

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