まちの視点 世界の国から千客万来

宇治園では中国人スタッフを採用、中国人観光客の買いやすさを追求している

東京・秋葉原の電気街─中国人観光客を乗せたバスが列をなして乗り付け、競うように電子炊飯器をいくつも買い求めていく。「そんなに買ってどうするのですか?」と問うと、彼らは一様に「日本の炊飯器で炊くと、お米がおいしくなるから親戚にも配る」という。

青森市の海の玄関口、青森港─入港したばかりの外国大型クルーズ船から多くの外国人観光客が商店街へ繰り出していく。乗員や乗客およそ2000人が小さな店々をめぐり、地元の海の幸など名物料理に舌鼓を打ち、東北地方の特産品を買い求めていく。 いま、こうした風景が全国各地のまちで見られる。

外国人によるショッピング売上高は2013年には約4600億円に上り、3年前の1・5倍、直近の1年間で1200億円増という驚異的な伸びを見せている。訪日外国人数も2011年の621万人が2013年には1037万人と6割近く増加している。

さらに2020年には東京でオリンピック・パラリンピックが控えている。そこに向けて訪日外国人客数2000万人、1兆円規模の市場形成を目指し、官民挙げて動き出している。

その一つ、大阪商工会議所の取り組みを取材した。

外国人さん いらっしゃ~い!

「買物をトリガーにして、数ある都市の中から大阪を選んでもらいたい。外国からのお客さまが快適にお買物を楽しめるよう、商店街の皆さんと一緒に取り組んでいます」と話すのは、大阪商工会議所流通・サービス産業部の土居英司さんだ。

同所では、外国人観光客の誘致・購買促進を目的の一つとする「千客万来都市OSAKAプラン」を2011年度から展開、今年度から第2期のプロジェクトに着手した。外国人観光客が買物しやすい環境整備、事業の具体化に向けて「機運醸成」「インフラ整備」「情報提供」「人材育成」をテーマに掲げている。

商店街へのアンケートの実施、各店の取り組み事例をまとめた「外国人観光客受け入れ事例集」の作成、公開シンポジウムの開催、年末年始や春節時期のセール開催など、さまざまな取り組みの中でも特徴的なのが、「了解中国! 出前セミナー」だ。これは、中国からの観光客にターゲットを絞り、さまざまなノウハウ資料を使いながら具体的な解説を行う出張型セミナーで、これまでに市内の商店街や百貨店、商業施設60カ所以上で開催、1140人以上の販売員が受講している。さらにまち全体のおもてなし力を上げようと、土居さんは各所へ精力的に出前セミナーに赴いている。

まちぐるみで効果は上がる

「外国のお客さまが求める日本らしさ、商品構成や接客で確実に伝えられるよう取り組んでいます」。こう語るのは、明治2年創業、心斎橋筋商店街に本店を構える茶舗「宇治園」の重村桜子専務。同店では急増する外国人観光客に日本の茶文化を伝えようと、独自で商品を開発している。

「人気商品は桜をモチーフにした商品と抹茶関連の商品です。いずれも日本らしいイメージが好まれますので、従来にはない斬新なデザインにしたところ、お茶に対するハードルが低くなったようです」と手応えを感じている。また、最も多い中国人観光客に対応しようと中国人スタッフを採用。積極的に声を掛けて店内に招き、お茶の試飲を行っている。

「当店の前にある大丸さんにも、多くの外国のお客さまがお見えになっています。でも、一つの店だけではお越しいただけません。いろんな店が協力してこそ、にぎわいは生まれます」と重村さん。「大切なのは個々の店のプロモーションだけではなく、地域がチーム一丸となって取り組んでいくことです」と、前述の土居さんも異口同音に言う。

千客万来の鍵はそこにある。

(笹井清範・『商業界』編集長)

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