日本商工会議所はこのほど、「雇用・労働政策に関する要望」および「多様な人材の活躍に関する要望」を取りまとめ、公表した。
中小企業の景況感は新型コロナウイルスの影響により依然厳しく、雇用情勢も予断を許さない状況が続く。感染拡大防止の徹底と経済社会活動の推進を両立させることが大きな命題となっている。
雇用・労働政策に関する要望では、ウィズコロナ、アフターコロナを踏まえた雇用・労働政策に加えて、企業活力の向上やイノベーションの創出に向けた規制緩和や制度改革、多様で柔軟な働き方の拡充など、今後求められる雇用・労働政策についてまとめた。重点項目として、①雇用調整助成金の特例措置の延長②「失業なき労働移動」の促進に資する施策の強化・拡充③新型コロナウイルスに起因する雇用への影響の的確な把握とタイムリーな政策展開④企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大⑤テレワークの普及・定着に向けた支援策の強化・拡充を掲げる。また、「同一労働同一賃金」に関する支援策の強化・拡充のほか、中小企業の実態を考慮した最低賃金などに関連し、明確な根拠の下で納得感のある水準の決定や地域の経済実態に基づいたランク制の維持、生産性向上に向けた支援策の利用促進を求めた。
多様な人材の活躍に関する要望では、①外国人材のさらなる活躍に向けた特定技能などの制度改善に向けた検討②保育の受け皿整備による待機児童の解消③改正高年齢者雇用安定法の幅広い周知を重点項目として掲げる。
2020年12月18日、日商女性・シニア・外国人材活躍推進専門委員会の上條努委員長、労働専門委員会の塚本隆史委員長が三原じゅん子厚生労働副大臣を訪問し、要望書を手渡した。これに対し、三原副大臣は産業雇用安定センターを通じた在籍型出向に対する支援策の強化・拡充や外国人材の受け入れに係る申請書類簡素化の推進などに取り組んでいく姿勢を示した。
また同日、二つの要望実現に向け、土屋喜久厚生労働審議官をはじめ厚生労働省幹部との意見交換会をハイブリッド形式で開催した。上條委員長は、「人手不足の克服のみならず、一億総活躍社会の実現や多様性から生まれるイノベーションの創出、ひいては持続的な経済成長を実現するために、女性、高齢者、外国人材、障害者など、多様な人材の活躍を推進していくことが不可欠」とあいさつ。続いて塚本委員長が「コロナ禍で仕事の成果やスキルに基づく人材活用や評価が注目され、効率の良い働き方や地方での就労に対する機運も高まっている。規制緩和や制度改革により企業の自由度や裁量を高めていくとともに、多様で柔軟な働き方の拡充を通じて、企業活力の向上やイノベーションの創出を図っていくことが必要」と述べた。コロナ禍での課題の対応など、雇用・労働政策について幅広く意見を交換した。
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