テーマ別企業事例 逆境に強くなる! 着眼点と技術力で業績を伸ばす

事例2 眼鏡で培った“鯖江クオリティー”で異業種に積極的に打って出る

北陸ベンディング(福井県鯖江市)

「めがねのまち」で知られる福井県鯖江市。国産眼鏡のフレーム生産9割超を占める福井県の中核エリアだ。手堅い産業に思えるが、リーマン・ショック、それに続く海外の廉価商品の流入、そしてコロナ禍により産業の勢いは鈍っている。そんな中で、眼鏡の加工技術を他分野で生かし、北陸ベンディングは邁進(まいしん)している。

ベンディングマシン1台で創業し、わずか2年で現在の社屋を建てるまでに急成長

事業の柱を1本から複数へ異業種進出に活路

福井県鯖江市は、眼鏡づくり100年以上の歴史があり、1981年には世界で初めてチタンフレームの眼鏡を開発し、眼鏡産業の最先端を走り続けてきた。眼鏡は多いもので200以上の工程を要し、漆器同様の完全分業制で専門分野に特化しているため、クオリティーは極めて高い。その一端を担う北陸ベンディングは93年に創業し、眼鏡フレームのベンディング(巻き)加工やコイリング(曲げ)加工に卓越した技術力で頭角を表してきた。今では難加工材であるチタンやチタン合金の加工技術で業界屈指を誇る。

「眼鏡のフレーム製造だけで業績を上げてきましたが、リーマン・ショックで潮目が変わりました。じわじわと売り上げが下がり、最終的には半分にまで落ち込みました。そんな中、米国の大手IT企業からスマートグラスの受注があって業績は持ち直します。しかし受注が大きい分、止まったら一気に業績が悪化する危機感がありました」

このとき、代表取締役の萩原勉さんは「眼鏡」という柱1本だけではなく、複数の柱の必要性を痛感する。幸い、IT企業の受注実績から、国内、それも眼鏡以外の業種や職種からの問い合わせが増え、なかでも医療機器分野からの引き合いが増えていったという。その間にOEM生産したアクセサリーは、有名アスリートらが身に着けていることで話題になり、ここ5年で新たな「柱」になっていった。

経営者自らが先頭に立ち新分野、自社開発に挑む

さらにキーマンも現れた。前述のIT企業との関わりを聞きつけ、大阪出身のインダストリアル・デザイナーから声が掛かったのだ。そのデザイナーのデザイン監修によって国内大手家電メーカーが開発したのがフェイスシールド。そのチタンフレーム部分を北陸ベンディングが担当し、長時間装着していても疲れないと好評を博す。

「コロナ禍で一気に需要が高まったフェイスシールドですが、そのほとんどが樹脂製です。チタンフレームなら弊社が手掛けたものと言ってもいいほどのシェアを獲得しました。ウェアラブル製品に強いデザイナーなので、今もタッグを組んでいろいろと新商品の開発を進めています」と萩原さんは声を弾ませる。今では売り上げの7割をアクセサリーとフェイスシールドが占め、2、3割が眼鏡フレーム、残り1割が医療関係の加工機器となり、十数年前の眼鏡フレーム加工一色から大きく様変わりしている。

こうした変化に従業員からの反発がなかったわけではない。だが、萩原さん自らが先頭に立って、他分野開拓を進めてきた。さらに自社開発にも着手し、その代表格に「さばえルーペ」がある。「老眼が進んだ私自身の実体験から生まれたもの」と苦笑するが、老眼鏡の上にさらに拡大鏡をつける市販品は、どうしても鼻パッドに負担がかかり、長時間かけてはいられない。そこで萩原さんが着目したのが「眉骨」だ。2年がかりで商品化。新たな販路はクラウドファンディングサービス「Makuake」を活用し、ネットショップ制作プラットフォーム「STORES」で通販サイトを立ち上げた。やったことがないから挑戦する。それが萩原さんの信条だ。

営業も価格競争もせず技術を安売りしない

さばえルーペは、歯科技工士やネイリストなど新型コロナウイルスの感染予防と見えづらさの板挟みになっていた職種から、「こういう商品が欲しかった」という声が数多く寄せられた。部品製造の工賃よりも利益が上がり、エンドユーザーとのつながりが、そのまま社会貢献への手応えとして感じられたという。

「3、4年前から営業を置かず、競合相手との価格競争をしない、技術を安売りしない体制へとシフトしていきました。ノルマ達成よりも気持ちよく働ける環境づくりに注力して、外注費も2割上げてものづくり精神や、やる気を底上げしています。コロナ禍において雇用調整助成金でなんとかしのいでいる地域企業がたくさんあります。しかしコロナのせいにばかりしていられません。何でもできるまでやり続ければ成功します。失敗は途中でやめるから失敗なんです」と萩原さん。

2008年に、地域企業5社(現在6社)と「チタンクリエーター福井」を発足させた。異業種からの受注獲得に奔走し、地元で確保が難しい若手人材はIOTやロボット、最新加工設備の導入や外国人研修生の採用などで、柔軟に対応している。

「チタンは軽くて丈夫でさびない素材。宇宙や深海分野にも切り込んでいきたい」とコロナ禍をものともせず壮大な夢を楽しそうに語った。

会社データ

社名:有限会社北陸ベンディング

所在地:福井県鯖江市舟枝町5-13-4

電話:0778-54-0123

HP:https://www.h-bending.co.jp/

代表者:萩原 勉 代表取締役

従業員:30人

【鯖江商工会議所】

※月刊石垣2021年7月号に掲載された記事です。

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