Q 当社は、従業員数38人の販売会社です。今回女性従業員が出産のため休むことになりました。本人から育児休業の申し出がありますが、拒否することはできないでしょうか。
A 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(以下「育児・介護休業法」という)により、事業主は原則として要件を満たした労働者の育児休業の申し出を拒むことはできません。
2022年4月1日より、育児休業等に関して事業主が講ずべき措置義務が新設されます。①育児休業の申し出・取得を円滑にする環境整備、②妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別の周知・休業取得の意向確認が主なものです。
育児休業の対象となる労働者
「育児休業」をすることができるのは、原則として1歳に満たない子を養育する男女労働者です。
ただし、日々雇い入れられる者は除かれます。また、期間を定めて雇用される者は、現在、申し出時点において次のいずれにも該当すれば育児休業をすることができます。
① 同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上あること
② 子が1歳6カ月に達する日までに、その労働契約が満了することが明らかでないこと(労働契約が更新される場合、更新後の期間を含む)
この①の要件については、2021年6月に改正された育児・介護休業法の施行により、22年4月1日より廃止されますので注意が必要です(ただし、労使協定を締結した場合には、後述の通常労働者と同様に、勤続1年未満の期間雇用者を対象から除外することができます)。
事業主は、要件を満たした労働者の育児休業の申し出を拒むことはできません。ただし、「その事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない労働者」「その他育児休業をすることができないとすることについて合理的な理由があると認められる労働者」について育児休業をすることができないこととする労使協定があるときは、事業主は育児休業の申し出を拒むことができます。
事業主の義務
事業主は育児休業の申し出がされたときは、①育児休業の申し出を受けた旨、②育児休業開始予定日および育児休業終了予定日、③育児休業の申し出を拒む場合には、その旨およびその理由を労働者に速やかに通知しなければなりません。通知は書面によるほか、労働者が希望する場合には電子メール等によることも可能です。なお、育児休業は、労働者が適正に申し出ることにより、事業主の承諾等を要せずして休業できるものであり、この通知がされなかったとしても、適正に申し出を行った労働者は育児休業をすることができます。
22年4月1日より、育児休業等に関して事業主が講ずべき措置義務が新設されます。措置義務の主な内容は次のとおりです。
①育児休業の申し出・申し出を円滑にする環境整備(育児休業に係る研修の実施や相談体制の整備等)
②妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知(面談での制度説明や書面等による情報提供等)・休業取得の意向確認
育児休業の申し出
育児休業は労働者の事業主に対する申し出を要件とします。現在、申し出は特別の事情がない限り1人の子について1回に限られています。
この点、原則1回に限られている育児休業ですが、22年10月1日からは、分割して2回まで取得することができるようになります。さらに、男性の育児休業取得促進のため、子の出生後8週間以内に4週間まで取得することができる「出生時育児休業(産後パパ育休)」が新設されます(22年10月1日施行)。申し出期限は原則2週間前までとし、分割して2回まで取得することが可能となります。 (特定社会保険労務士・佐川 真守)
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