中国の2021年の国内総生産(GDP)の伸び率は実質で8・1%となった。一見、高い伸びだが2020年の落ち込みからの反動で、決して好調とはいえない。10~12月の伸び率が4・0%まで低下したことをみれば中国経済が坂道を下っていることが分かる。実際、知り合いの中国人の民間企業経営者数人に聞くと「本業の売り上げがほとんどなく、いろいろな副業で食いつないでいる」と口をそろえる。大都市圏ではコロナ感染対策で事業を本格再開できない中小・中堅企業が多い。それでも「廃業や倒産に追い込まれていないだけまし」という。
経済悪化の直接的な要因はコロナだが、中国人自身が疑問を持ち始めているのは、西安、大連といった1000万人都市でも容赦なくロックダウンする習近平政権の厳しい姿勢だ。コロナの抑え込みによって輸出産業や自動車など一部の産業は順調な生産を続け、21年の輸出は前年比29・9%増、貿易黒字は6764億ドル(約77兆円)と過去最高を記録した。
だが、今や中国のGDPの過半を占める消費は停滞している。行動制限で買い物や旅行に行けないというだけでなく、先行きへの不安感で支出を減らしているためだ。輸出も先進国のコロナ対応消費、リベンジ消費が一巡、スマホなどの受注は低下し始めている。
中国の庶民が持つ不安の根底には雇用問題がある。中国で昨年11月下旬に始まった政府の75部局と23機関の公務員採用試験には212万人が殺到、史上初めて200万人を突破した。平均競争倍率は68倍で、最高倍率の職は1万9200倍に達した。企業の採用が氷河期で、大卒の公務員志向が強まっているためだ。数年前までは初任給が1000万円超ともいわれ、清華大学などトップクラスの大学の卒業生が殺到していたアリババ、テンセントなどデジタルプラットフォーマーやファーウェイなど先端技術企業がリストラを進めるなど、中国の雇用情勢は急激に悪化している。これでは消費が盛り上がるはずはない。
コロナ禍でも旺盛だった中国需要に支えられてきた日本、韓国やアジアの途上国はこれから中国経済の落ち込みに備えるべきだろう。北京冬季五輪後に警戒すべきだ。
景気が悪化すれば政府がインフラ建設などで支えるという前例は、今の習政権には通用しない。習政権が最優先するのは格差解消であって、高成長ではない。その意味でもアフターコロナのアジアでは中国経済の位置付けは一変してしまったといえる。
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