2022年3月に131件認定された「100年フード」の中から、日本が誇る食文化を文化庁、有識者がリレー形式で紹介します。
近代の幕開けは、わが国の食文化にも大きな変化をもたらしました。その典型が肉食です。
欧米の事情に通じた当時の知識人たちは、日本人の体格が貧弱である理由を、肉食しないこと、乳製品を食べないことにあると考えました。そこで、軍隊の食事には肉を使用した献立が採用されるようになりました。
明治20年代以降、天然の良港を持つ横須賀、呉、佐世保、舞鶴に軍港を築き、海軍の拠点である鎮守府を置きました。それまでは静かな農漁村であった地域に、最先端技術を集積し、海軍諸機関とともに都市インフラが整備され、日本の近代化が推進されました。
その海軍が地域にもたらしたものの一つが「食」です。海軍が栄養不足解消のために、西洋式の食事を取り入れたことが、日本における洋食の始まりといわれています。
明治41年に海軍が発行した料理教科書『海軍割烹術参考書』には、100種類を超える西洋料理やお菓子のメニューが載っています。その参考書を基に、鎮守府4市では、カレーやビーフシチュー、肉じゃがなどのご当地グルメを再現し、かつての海軍グルメの継承と新たな海軍グルメの普及に努めています。
その一つ、舞鶴市にある松栄館は、かつて東郷平八郎鎮守府初代長官をはじめ旧海軍関係者らが愛した老舗旅館です。文化庁のリビングヒストリー(生きた歴史体感プログラム)事業なども活用して再現された海軍ゆかりの食や当時の雰囲気などを楽しむことができます。
100年フード
文化庁は、①地域の風土や歴史の中で創意工夫し地域に根差したストーリーを持つ②世代を超えて受け継がれてきた③地域の誇りとして100年を超えて継承することを宣言する団体が存在する、食文化を「100年フード」として認定しています。
100年フード公式ウェブサイト ▶ https://foodculture2021.go.jp/jirei/
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