日本・東京商工会議所はこのほど、「雇用・労働政策に関する重点要望」および「多様な人材の活躍に関する重点要望」を取りまとめ、公表した。雇用・労働政策については、中小企業の「人材確保に向けた自己変革」支援と「活力ある労働市場」への政策シフトの必要性を強調。多様な人材の活躍については、外国人材、女性、高齢者の活躍推進に向けた支援、障害者雇用の促進、就職氷河期世代の就職支援などを求めた。日商・東商では要望書を関係各方面に提出。今後、政府・与党などに要望内容の実現に向けて働きかける。
雇用・労働政策に関する重点要望
雇用・労働政策に関する重点要望では、「中小企業の人材確保に向けた自己変革」に加え、コロナ禍での「雇用安定」から、成長分野・人手不足産業への円滑な労働移動を促す「活力ある労働市場」に向けた政策シフトの必要性を強調。特に、「中小企業の自発的な賃上げの推進」「魅力ある職場環境の整備」「中小企業の採用活動支援」「円滑な労働移動、活力ある労働市場への政策シフト」の4点を実現するための施策を求めている。
中小企業の自発的な賃上げに向けては「取引価格適正化の推進、賃上げを促す助成・特例の拡充」「DX・生産性向上を担う人材の育成支援」を強調。魅力ある職場環境の整備に向けては、企業による教育訓練の拡充、労働者の主体的な学びへの支援、多様で柔軟な働き方の推進、働き方改革フォローアップと「2024年問題」対応支援などを要望している。
中小企業の採用活動支援については、「人材確保に向けたマッチング支援の強化」「採用活動に活用可能なインターンシップの促進」を要望。円滑な労働移動、活力ある労働市場への政策シフトに向けては、成長分野、人手不足産業への円滑な労働移動の推進に向けた施策や雇用保険財政の安定化、解雇無効時の金銭救済制度の早期具体化などを求めている。
雇用・労働政策に関する重点要望(主な要望項目)
1.中小企業の自発的な賃上げの推進
(1)【重点】取引価格適正化の推進、賃上げを促す助成・特例の拡充
○賃上げ原資確保に向けた取引価格適正化の推進
○企業の積極的な賃上げを促す助成・特例の拡充
(2)【重点】DX・生産性向上を担う人材の育成支援
2.魅力ある職場環境の整備
(1)【重点】企業による教育訓練の拡充、労働者の主体的な学びへの支援
○企業による教育訓練の拡充への支援
○労働者の主体的な学びへの支援
(2)多様で柔軟な働き方の推進、働き方改革フォローアップと「2024年問題」対応支援
○時間や場所にとらわれない多様で柔軟な働き方の推進
○働き方改革のフォローアップと物流・建設業界における「2024年問題」対応支援
○「物流危機」の克服・回避に資する、物流効率化・省人化に向けた支援
3.中小企業の採用活動支援
(1)人材確保に向けたマッチング支援の強化
○中小企業の人材確保に向けたマッチング支援の強化
(2)採用活動に活用可能なインターンシップの促進
○新ルールに準拠した採用活動に活用可能なインターンシップの促進
4.円滑な労働移動、活力ある労働市場への政策シフト
(1)【重点】「雇用安定」から「能力開発による円滑な労働移動」への労働政策の重点シフト
○デジタル・グリーン分野などの成長分野、運輸・建設などの人手不足産業への円滑な労働移動の推進
○雇用保険財政の安定化、「能力開発」への重点シフト
(2)解雇無効時の金銭救済制度の早期具現化
多様な人材の活躍に関する重点要望
「多様な人材の活躍に関する重点要望」では、基本的な考え方として、女性や外国人材など「多様な人材の活躍推進の重要性がこれまで以上に高まっている」と指摘。潜在的な労働力としての活用だけでなく、誰もが働きやすい環境の整備や経営に多様な視点を取り込むことで生産性向上や新たな事業展開につなげるため、「外国人材の活躍推進」「女性の活躍推進」「高齢者の活躍推進」「障害者雇用の促進」「就職氷河期世代の就職支援」に向けた施策などの必要性を強調している。
外国人材の活躍に向けては、「技能実習制度の見直しと運用適正化」「特定技能制度の制度改善と中小企業の活用支援」を強調し、特に、特定技能制度については、書類・手続きの簡素化などとともに、対象分野の追加を要望。「留学生・高度外国人材の活躍推進」「外国人材が働きやすい環境整備の推進」に向けては、在留資格における要件の見直しとともに、外国人材から選ばれる環境づくりとして日本語教育の充実などについて要望している。
「女性の活躍推進」については、「中小企業における女性活躍推進の取り組み支援」「女性の主体的なキャリア形成支援」「女性の就労を阻害する税・社会保障制度の抜本的な見直し」「仕事と育児の両立支援」「保育の質の充実」の5点を要望。具体的には、女性による一般教育訓練給付の利用促進など女性の主体的なキャリア形成を支援するとともに、女性の就労を阻害する税・社会保障制度の抜本的な見直しとして、第3号被保険者制度の廃止などを要望している。
仕事と育児の両立に向けては、男性の育児休業取得推進に向けた支援の必要性を指摘。また、子育てに関する取り組み推進に係る企業の負担がこれまで以上に増大することのないよう、育児休業給付にかかる財政の安定化と企業主導型保育事業の運用規律徹底などを要望している。
「高齢者の活躍推進」に向けては、企業と高齢者とのマッチング機能の強化・拡充、高年齢雇用継続給付の激変緩和措置に係る中小企業への配慮などを要望。「障害者雇用の促進」「就職氷河期世代の就職支援」については、各種支援制度の周知や中小企業の取り組みを後押しする制度の強化・拡充などを求めている。
最新号を紙面で読める!