日本商工会議所は12月15日、西村康稔経済産業大臣との懇談会を都内のホテルで開催し、日本経済、中小企業の現状と課題、地域活性化などについて意見交換を行った。会合で、日商の小林健会頭は、コスト増、人手不足に苦しむ中小企業の賃上げ・投資拡大について、「生産性向上・取引適正化による原資の確保が不可欠」と強調。商工会議所としては、「今回の補正予算で措置された支援策などを活用し、デジタル化・事業再構築などを伴走型で支援していく」との考えを示した。
懇談会には、日商から小林会頭のほか、鳥井信吾副会頭(大阪・会頭)、嶋尾正副会頭(名古屋・会頭)、上野孝副会頭(横浜・会頭)、塚本能交副会頭(京都・会頭)、川崎博也副会頭(神戸・会頭)、福田勝之副会頭(新潟・会頭)、岩田圭剛副会頭(札幌・会頭)、泉雅文副会頭(高松・会頭)、池田晃治副会頭(広島・会頭)、谷川浩道副会頭(福岡・会頭)、藤﨑三郎助副会頭(仙台・会頭)、石田徹専務理事ら15人が出席。経産省側は西村大臣はじめ、中谷真一副大臣、太田房江副大臣、長峯誠大臣政務官、里見隆治大臣政務官、多田明弘事務次官ら幹部21人が出席して、意見交換を行った。
会議の冒頭、小林会頭は、わが国の経済情勢などに触れ、「コロナ禍からの活動回復が進み業況は改善傾向にあるが、約2割の事業者はいまだ厳しい経営状況にあるため、真に困窮する事業者への支援の継続が必要」と指摘。停滞から成長する経済への転換に向けては、「デフレ・コロナマインドを払拭する必要がある。ウィズコロナ対策が最大の経済対策であり、エンデミックへの早急な移行が必要」と述べた。
政府内の防衛費増額の議論については、「防衛力強化は重要」との考えを示した上で、「恒久財源を措置し、国民全体で広く薄く負担することには賛成するが、歳出の中身や、法人・個人の負担バランスなど具体的な内容が示されないまま増税議論が進むことには違和感がある」と指摘。また、政府と国民とのコンセンサスの必要性を強調し、「早急に具体的内容を示し、民間の意見も聞いた上で、時間をかけて議論すべき。法人に偏った増税は賃上げや投資意欲に水を差すため、中小企業への最大限の配慮、増税時期も慎重に検討してほしい」と要請した。
財政再建については、「コロナ禍の歳出拡大で大きな政府になったことはやむを得ないが、成長とともに、政策にプライオリティを付け、ワイズスペンディングで、健全化の道筋も考えた政策が必要」と指摘。インボイス制度については、「残念ながら事業者の理解が進んでいない」との見方を示し、「政府が責任を持って広報し、事業者の混乱防止に全力を尽くし、導入の影響を最小化する対策も検証すべき」と述べた。
西村大臣は、「官民挙げて国内投資拡大を図り、イノベーション、所得拡大の好循環を実現したい」と述べるとともに、パートナーシップ構築宣言の取り組みを推進する考えも改めて表明。今回の総合経済対策については、「この好循環に向けたスイッチを押すもの。足元の物価高・エネルギー価格、資金繰り対策などの支援、価格転嫁の推進、生産性向上、輸出拡大などを強力に進めていく」と述べ、中小企業の挑戦を後押しする考えを改めて示した。
インボイス制度については、「負担軽減策など、中小企業への影響最小化を進めていく」との考えを表明。防衛財源については、「中小企業の賃上げや投資意欲に水を差さないよう、タイミングを含め、経産省として慎重な検討を求めていきたい」と述べた。
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