医療機関で現在服用している薬について聞かれ、「正確な名前が分からない」「全部を覚えていない」と困った経験はありませんか。このようなとき役に立つのが「お薬手帳」です。自分が使っている薬の名称、量、日数、使用方法、副作用歴、アレルギーの有無、既往歴などを記録する手帳で、本人だけでなく家族や医療関係者なども自由に書き込むことができます。 お薬手帳は1993年に、別々の医療機関から抗ウイルス剤と抗がん剤を処方され、その相互作用で重篤な副作用が起こり、15人が死亡した「ソリブジン事件」をきっかけに導入されました。その2年後に発生した阪神・淡路大震災では、避難所などで診療を受ける際、お薬手帳があれば処方箋がなくても薬を受け取ることができたことから、その有用性が認知され、普及するようになりました。
お薬手帳があれば、複数の医療機関を受診する際や、薬局で薬を購入するとき、転居して新しい医療機関を受診するとき、休日診療や救急病院の受診時、旅行先や災害時など、現在使用中の薬や過去に使用していた薬の情報を正確に伝えることができます。ほかにも、薬の重複や良くない飲み合わせを防ぐ、薬の副作用の管理がしやすいなど多くのメリットがあります。さらに、2020年4月に改正された診療報酬制度により、全ての薬局でお薬手帳を持参して、3カ月以内に再度来局すると、自己負担額が3割負担の場合で、40円軽減されるようになりました。
お薬手帳を上手に活用するコツは、「1冊」にまとめること。医療機関や薬局ごとに分けたりせず、1冊に全ての情報を記録しましょう。急な受診などに備えて、常に携帯しておけば提示忘れを防ぎます。また、薬に関することだけでなく、体調に関して気になることなどをメモ代わりに書き込んでおくと、受診時の参考になって便利です。
現在、お薬手帳の電子化が進み、スマートフォンで薬の情報を保管する「eお薬手帳」が広がっています。自分が使いやすい方法でお薬手帳を活用し、健康管理に役立てましょう。
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