病院で処方してもらい、自宅に残ってしまった薬を「残薬」といいます。厚生労働省の調査によれば、残薬は年間500億円近くにも上るとされ、薬の適正使用や医療費の観点からも社会問題の一つとなっています。
薬が残ってしまう理由で多いのは飲み忘れです。うっかり忘れる場合もあれば、仕事や外出などで物理的に飲めない場合も考えられます。また、症状が治まったからと、自己判断で使用を中止してしまうケースもあります。そのまま薬を放置したり、まだ残薬があるのに次の受診時に新しい薬をもらったりすると、さらにたまることになります。
残薬は処分することが原則ですが、処分方法に注意を要するものもあるので、薬局に持ち込んで相談するといいでしょう。もったいないからと、残薬を他人に譲ってはいけません。たとえ家族でも、年齢、体質、体調は異なるため、選択すべき薬も変わります。薬によっては飲み合わせや副作用など留意が必要な場合もあるので、素人判断はやめましょう。また、使用期限を過ぎたものは、絶対に服用してはいけません。使用期限が不明の場合は、薬局で確認してみましょう。
残薬を減らすには、処方される際に、自分が決められた方法で使用できるか考え、難しそうなら医師に相談して処方を工夫してもらいましょう。例えば高血圧や脂質異常症など慢性疾患の薬なら、次回は残薬の分を差し引いて処方してもらい、頭痛やアレルギーなどの薬は症状が治まったらやめていいか、残った薬を次回の発症時に使ってもいいか、いつ頃までなら使用可能かを率直に質問しておくといいでしょう。
また、残薬を減らす取り組みとして「ブラウンバッグ運動(節薬バッグ運動)」があります。薬局に用意された専用バッグに、自宅にある薬を入れて持っていくと、薬剤師が薬の余り具合を確認して、期限切れの薬を廃棄し、まだ使用できる薬は再利用するなどしてくれます。薬剤師から医師へ処方箋の変更を依頼することも可能になります。「いつも薬を余らせてしまう」という人は試してみてはいかがでしょうか。
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