かつての名プレーヤー、トニー・ペナ(※1)は「スタートホールは何事もなかったように静かにスタートしたい」と言っています。一方で、チチ・ロドリゲス(※2)は「1番ホールは単に18分の1ではなく、18分の18の勢いで迎えたい」と言っています。2人は全く違う考えをしているように思われるかもしれませんが、そこには共通点があるのです。つまり、心も体も技術も、なるべく普段どおりの状態でスタートしたいと考えているということです。スタートホールの出来は、その日のゴルフを左右しかねません。その重要なホールを乗り切るためには、スタート前になるべく普段どおりの状態をつくっておくことが大切なのです。
そのためには、まずスタート前にマッサージとストレッチを入念にすることです。ゴルフは長く歩くし、いろんな傾斜から打ったりするので、前後、左右、上下のバランスがとても重要なスポーツです。そのためには下半身を動ける状態にしておくことが大切です。ぜひ、イラストで紹介している方法を試してください。プロゴルファーの場合、全身のストレッチを30分前後やる人が多いようです。
実際の練習でボールを打つときも、あくまでも体を温める程度にして、スイングを直そうとしたりしないことです。その上で、練習に意味を持たせるといいでしょう。例えば、スタートホールをイメージしながら打つのです。右がダメなら右に打たない練習、打ち下ろしや狭いホールならクラブを短く持って低いボールを打つ練習をしておけば、朝イチの緊張を和らげることができるはずです。
とにかくスタート前の時間を上手に過ごしてほしいと思います。遅刻で気持ちが焦り、息が上がった状態でスタートするなど、もってのほかだと肝に銘じてください。
※1 トニー・ペナ:1908-1995。イタリア系アメリカ人。PGAツアー(米国男子ゴルフツアー)で4勝を挙げたプロゴルファーだが、名クラブデザイナーとしても名を馳せた ※2 チチ・ロドリゲス:1935年プエルトリコ生まれのプロゴルファー。60年にPGAツアーデビュー。2007年2月までの47年間でレギュラーツアー8勝、チャンピオンズツアーで22勝を挙げる。92年に世界ゴルフ殿堂入りを果たす
イラストレーション:アカハナドラゴン
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