食いしばりは、歯をぎゅっと強く食いしばる癖のことです。似ているものに歯ぎしりがあります。歯ぎしりは歯を横方向にずらして摩擦音が鳴る行為なのに対し、食いしばりは歯の上下に力がかかります。ちなみに、食べ物をかむときに歯にかかる負荷は60㎏程度ですが、食いしばりは体重の約2倍の負荷がかかるといわれています。
食いしばりがやっかいなのは、無意識にしてしまっていることです。そのため就寝中でも行われ、負荷が常習的に蓄積して、体にさまざまな悪影響を及ぼします。例えば、歯が欠けてその亀裂から知覚過敏が起こり、冷たいものがしみるようになったり、詰め物やかぶせ物が取れて虫歯や歯周病を招いたりします。また、顎(がく)関節症や頭痛、肩こりを引き起こすこともあります。
食いしばりの原因として、まず食べ物を奥歯だけでかむ習慣が挙げられます。奥歯にある筋肉が常に緊張を強いられるため、食いしばることが癖になりやすいのです。ほかにもかみ合わせが悪い、歯科治療の詰め物が合っていないことも要因となります。また、不安やストレスを感じているときも、知らず知らずのうちに歯を食いしばってしまう場合があります。
無意識の行為だけに、本人も気付いていないことが多いのですが、もし、何かに集中しているときに奥歯の上下をかみしめているようなら、食いしばりをしているサインです。この癖をなくすためには、まず上下の歯を接触させないようにすることが肝心です。唇を閉じた際には、上下の歯を意識的に離すように心掛けましょう。また、ストレッチなどをして体の緊張をほぐすと、奥歯の筋肉の緊張も和らいで改善する場合があります。ストレスを感じているときは、深呼吸をする、こまめに休憩を取る、ゆっくり入浴するなど、リラックスを心掛けることも効果的です。
それでも改善しない場合は、歯科の受診をお勧めします。歯医者さんは、患者さんの状況や症状に合わせて、食いしばりを防止するマウスピースをつくってくれるはずです。適切な対応が遅れると、予期せぬ病気につながる危険性があるため注意が必要です。
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