以前より疲れやすくなった、走るとすぐに息切れする、外出が億劫(おっくう)……。年齢とともに多くの人が感じるこうした虚弱の状態を「フレイル」といい、健康と要介護の中間の段階を指します。
フレイルには大きく分けて三つの種類があります。筋力や体力が低下してできる行動が限られる「身体的フレイル」、うつ状態や軽度の認知症になる「精神・心理的フレイル」、社会とのつながりが減ることで孤独や経済的困窮に陥る「社会的フレイル」です。これらが連鎖していくと老いが進み、自立度も低下していきます。
フレイルになる原因は多岐にわたります。加齢、摂食不良や栄養不良、太り過ぎややせ過ぎ、運動不足、病気やその治療による活動の制限、口腔の健康不良といった身体的要因のほか、定年退職、趣味や楽しみがない、会話が乏しい、外出や活動の機会が減る、パートナーや家族、友人を失うといったことも引き金になります。
フレイルは高齢者の課題と捉えがちですが、個人差が大きく、40~50代でも該当する人がいることが分かってきました。もし、「意図しない体重減少・疲れやすい・歩行速度の低下・握力の低下・身体活動量の低下」の五つの評価基準のうち、三つ以上該当すればフレイル、一~二つに該当すればプレフレイルです。ただし、自分の状態と向き合って予防に取り組むことで進行を緩やかにするなど、健康に過ごせていた状態に戻すことはできます。
予防するには、栄養、身体活動、社会参加の三つが大切です。特に重要なのは筋肉の衰えを防ぐこと。ウオーキングや筋トレ、グループ体操など定期的な運動を行って筋力維持に努めましょう。食事はバランスを心掛けるとともに、筋肉のもととなる肉や魚、卵や大豆製品などのタンパク質を多く含む食品や、骨を強くする乳製品などを積極的に取り入れましょう。良くかんで口腔機能を保つことも大切です。さらに、趣味のサークルや地域ボランティアに参加するなど、自分に合った活動を見つけましょう。そうして新たな人間関係を築けたら、意欲や張り合いが生まれ、フレイルを遠ざけてくれます。