千葉県北西部の端に位置し、江戸川・利根川・利根運河の3河川に囲まれた野田市。古くからしょうゆづくりのまちとして栄え、世界的な食品メーカーであるキッコーマンの創業の地としても知られるこの地で、鉄道誘致という“壮大な夢”を掲げて結成されたのが野田商工会議所青年部(以下、野田YEG)だ。彼らが結成以来、40年にわたり情熱を注ぎ続ける「東京直結鉄道誘致活動」と、地域への思いを取材した。
鉄道を引くために設立し 3県連携して次世代へつなぐ
野田YEGの最大の特徴は、その成り立ちにある。1970年代からの地下鉄8号線延伸構想が、80年代に国の基本方針に向け議論が本格化したことを受け、野田市でも誘致活動が活発化した。翌年には約8万人の署名が集まるなど市民の期待が高まる中、その活動の「担い手」として白羽の矢が立ったのが地元の若手経営者たちだった。
「野田YEGは85年発足以来、鉄道誘致推進を最重要の主幹事業とし、全力で取り組んできた組織なのです」と、野田YEG会長の眞田太一さんは語る。設立以来、鉄道誘致は野田YEGの主幹事業として位置付けられ、毎年欠かさず「東京直結鉄道建設・誘致促進大会総決起大会」を開催し続けてきた。
この活動は野田市内だけにとどまらない。鉄道が通過する千葉・埼玉・茨城の3県にある複数のYEGと商工会青年部(impulse)が連携し、3年に一度の持ち回りで大規模な早期実現大会を開催している。2025年度の第39回大会は野田YEGが担当し、若手リーダーの濱田陸さん(26年度鉄道委員会委員長)を中心に、子どもたちをターゲットにした体験型イベントを企画。目玉のビンゴ大会には、400人を超える親子連れが詰めかけた。また、同大会と併せて記念事業「39フェスティバル~野田の中心で感謝を叫ぶ~」も実施し、来賓78人、ステージ出演者約50人、一般来場者は約2000人だった。
直前会長の栗原基起さんは、「東京直結鉄道の必要性や首都圏へのアクセス向上が市民生活·地域経済にもたらす効果を広く発信し、運動への理解を深めていただく機会になりました」と話す。一方、濱田さんは、「鉄道誘致が始まって40年がたち、市民の間でも活動が当たり前になり過ぎたり、忘れられかけたりしている面もあります。だからこそ、将来の利用者である子どもたちに『このまちに電車が通るとこんなに便利になるんだ』という夢を伝え、機運を再燃させたかったのです」と振り返る。
変遷する入会動機と変わらぬ地域への誇り
結成当時の世代は、まちの衰退への危機感から鉄道誘致に心血を注いできた。一方で、現在の若手メンバーの入会動機は、ビジネスチャンスや人脈づくりへと多様化している。実際、濱田さんや同事業に長年携わった木名瀬宣人さんらも、入会当初は鉄道活動の背景を詳しく知らなかったと言う。しかし、YEGの活動を通じて地域の歴史を学び、流山市がつくばエクスプレスによって劇的に発展した姿を目の当たりにする中で、メンバーの意識は変化していく。
木名瀬さんは、「地元の経済人が元気でなければまちは回らない。鉄道の誘致が実現すると経済成長に寄与することができ、野田も変われる可能性がある」と、先輩たちがつないできたバトンの重みをかみ締めている。
発足40周年を迎えて挑む「忍者」という新たな一手
昨年度野田YEGは設立40周年を迎えた。その歩みは止まらない。鉄道誘致という大願を追い続ける一方で、世界中から忍術を学びたいと集まる人が後を絶たない「武神館」を活用し、インバウンドを意識した観光事業や、清水公園などの地域資源を生かした新規事業の構想も膨らんでいる。また、卒業生も、早期誘致の実現を目指すOBを中心に組織された「野田商工会議所2030鉄道実現委員会」に参加し、現役世代をサポートする体制を整えている。
最後に眞田さんは次のように展望を語った。「50周年、60周年に向けて、もう一度勢いそのままにスタートを切りたい。YEG以外の関係者・OB・市民との交流を柱に地域に選ばれる団体を目指します」。40年前の若者が抱いた“東京と直結する”という夢は、時代を経て形を変え、さらに大きな地域愛へと昇華されながら、次世代へと着実に引き継がれている。
野田YEG
会 長 : 眞田 太一
会員数 : 38人
創 立 : 1985年
スローガン : 王道~ 信じる道をともに歩む ~
HP : https://noda-yeg.com/
編集後記
宮野剛至(稲沢YEG)
最も印象深かった点は、野田YEGが「鉄道誘致」という明確な使命を担って設立されたという、全国的にも極めてまれな組織の成り立ちです。40年という長きにわたり、地域住民悲願の実現に向け、粘り強く機運醸成に努めるその真摯(しんし)な姿勢には深く感銘を受けました。
キャラクターOTTOくんの活用や、次世代を担う子どもたちを対象とした体験型イベントの開催など、青年経済人らしい独創的かつ多角的なアプローチも大きな魅力といえます。しょうゆの香る歴史あるまちに、新たな利便性と活力をもたらす鉄道が敷設される日を心待ちにするとともに、地域の未来を切り開く野田YEGのさらなる躍進を期待しております。
取材:日本商工会議所青年部(日本YEG)広報DX委員会/写真提供:野田商工会議所青年部

