日本国内は言うに及ばず、海外でもその名が知られる地域の中核企業。地域に根差し、地域の風土、歴史、文化に寄り添い発展し続ける中核企業が実践している人材育成・成長戦略・地域貢献など、今こそ中小企業の経営者が学ぶ点は多い。
地図の進化を支える人財開発が地域の未来を描く
日本最大手の地理空間情報会社、ゼンリン。詳細な住宅地図とカーナビ用地図データの二本柱で事業を拡大してきた同社だが、その礎となったのは早期に着手した地図情報のデジタル化だ。その先見の明が後のインターネット時代でさまざまな事業展開へとつながっていく。それを支えてきたのが同社のデジタル人財を含めた、幅広い人財開発施策である。
地図情報をいち早くデジタル化して事業を拡大
1948年に創業したゼンリンは、日本の地図インフラの象徴とも言える企業だ。住宅地図をはじめ、カーナビやインターネット用地図など地図データベースの制作、ソフトウエア開発、地図情報に関連した各種コンテンツの提供などを行う業界のリーディングカンパニーである。
「当社の原点は、1949年に発刊した別府温泉の観光冊子です。その巻末に収録した地図が好評を博したことから、地図制作をスタートしました」と同社会長の髙山善司さんは振り返る。
その後、一軒一軒の建物や居住者の情報を記載した詳細な住宅地図を展開。各地で事業基盤を築きながら、対象エリアを九州から全国へと拡大していく。同社の住宅地図は、物流や不動産、電気やガスなどの事業者、自治体、警察、消防などに幅広く活用され、社会基盤として機能していった。
同社にとって転機となったのは、80年代前半に着手した地図情報のデジタル化だ。地図を手描きしていた職人の高齢化や、火災などで紙の原図を焼失するリスクを考慮し、日立製作所と共同で「住宅地図製作自動化システム」を開発。住宅地図のデジタル化に取り組み、実用化を進めた。
「その後GPS技術を用いたカーナビが普及し始めたり、GIS(地理情報システム)という都市計画などに利用されるシステムが開発され、そのベースとなる地図情報に当社のデジタル地図が導入されたりしたことで、事業は拡大していきました」
専門性を深めた人財を育てインターネット時代をけん引
地図情報のデジタル化や新たな事業展開を支えてきたのが、同社が育成する深い専門知識を備えた人財である。育成に関して、かつては全社共通の研修制度が整備されていたわけではなく、各地域の担当者が顧客やメーカーとの協業を通じて知識や技術を身に付ける形が中心だった。現場で経験を積みながらスキルを習得するOJTが人財開発の基本であり、研修も活用しながら専門性を高めてきた。
