第20回アジア競技大会が9月19日〜10月4日、第5回アジアパラ競技大会が10月18〜24日、愛知県名古屋市などで開催される。国内製造業の一大拠点として知られる東海地区には、自社の培ってきた自慢の技術を転用しスポーツ分野にも領域を広げている企業もある。そこで、熱戦が期待される同大会に負けない東海地域のものづくり企業の熱い思いを届けたい。
トレーニング器具・ケトルベルを「つくる・売る・教える」でブランド構築
伊藤鉉鋳工所は、主力事業として機械部品を製造するかたわら、自社ブランドとしてトレーニング器具のケトルベルを生産している。代表取締役の伊藤允一さんは、自らケトルベルのインストラクターの資格を取得し、製造・販売に加えて、〝使い方を教えられる〟唯一無二の国産ケトルベルメーカーとしてブランド強化を図った。スポーツのニッチ市場で、確固たる存在感を示している。
鋳物の「重さ」が喜ばれるトレーニング器具に注目
「鋳物のまち」として知られる三重県桑名市。その地で1950年の創業以来、伊藤鉉鋳工所は、三代にわたり鋳物を製造してきた。だが、三代目代表取締役の伊藤允一さんの表情は浮かない。
「国内の鋳物業界全体が右肩下がり。多くの中小企業が設備投資できないまま、かといって統合するわけでもなく、売り上げの下降曲線を緩やかにするのが精一杯な状況です。一方、大手メーカーは海外に生産拠点を移し、大規模な自動化設備への投資が進んでいます」
同社もまた、BtoBによる小ロット・多品種の受注生産体制で事業を展開してきた。だが、他社の撤退による残存者利益を待つ余裕はない。事業リスク分散のため、付加価値のある自社製品の開発を考えた。その思いを決定づけたのが、工業高校のインターン生の質問だったという。
「『この部品は、何に使われるのですか』と聞かれて、答えることができませんでした。明らかに興味を失っていく学生を目の当たりにして、これでは人材確保はおろか、従業員の士気も上がらないと痛感しました。自社の名前で世に出せる製品をつくろうと決意しました」
三重県の老舗鋳物メーカーで、「魔法のフライパン」で有名な錦見鋳造(2026年3月事業停止)のビジネスモデルを、意識したこともあったという。
「鋳物なのに軽いことを謳(うた)う調理器具で注目されていたので、それを追随する開発を考えました。しかし、僕自身が料理をしないため、早々に行き詰まってしまいます。重いのは、鋳物の最大の特性であり良さです。逆転の発想で、重いことが歓迎される市場を探すようになりました。ちょうど子どもが生まれ、僕自身が体型を気にし始めたことから、トレーニング器具に行き着きました」
ダンベルや鉄アレイなどは、すでに安価な海外製品が席巻していた。そこで注目したのが、国産品が希少で、高価な輸入品が主流のロシア発祥のケトルベルだった。
2年間トレーニングを積んでインストラクター資格を取得
「うちでなら相場の半値でできる。そう思いました」
三重県鋳物生産技術競技会で数多くの受賞歴を持つ同社にとって、ケトルベルの製造は難しいことではない。だが、調理器具と同じ課題に直面した。「使い方」だ。
