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事例2 苦戦した商業施設のテナント誘致をきっかけに飲食事業に進出

要建設(茨城県水戸市)

茨城県水戸市に本社を置く地場建設業・要建設。地場の食材と健康にこだわった飲食店舗を運営し、県内はもとより台湾にも出店している。建設業と飲食業の接点はどこにあるのだろうか。

水戸市内にあるビオハーヴェストの店内は、同社が手がけるレストラン内装のショールームにもなっている。本社の目の前にあり、社員食堂としても活用されている

本業以外でも地域の雇用を守る

要建設の事業は8つある。①公共・民間の建築工事・土木工事を請け負う建設事業、 ②スターツグループのピタットハウスを運営する不動産事業、③太陽光発電を中心とした環境事業、④JR常磐線日立駅前の商業施設「まちステーション日立」の開発事業、⑤まちプラン研究所という別会社で展開するコンサルティング事業、⑥蕎麦処(そばどころ)まち庵とCafé de ville(カフェ・ド・ヴィレ)を運営する飲食事業、⑦和食の健康レストランとエステサロンを一体化させた「ビオハーヴェスト」を運営する健康事業、⑧蕎麦やポンせん、ロージュースを製造する食品製造事業である。このうち⑤のコンサルティング事業までは、建設会社の関連事業として多くの会社が手掛けていることだが、⑥以下の飲食事業は本業とはあまりにかけ離れている。

「飲食事業を始めたきっかけは、当社が日立駅の高架化に伴う旧駅舎跡地の再開発事業を手掛けたことでした」と社長の髙野賢さんは振り返る。

平成22年に始まった再開発事業は、日立市がJRから購入した旧駅舎跡地に公共施設と商業施設を建設するプロジェクト。商業施設部分の建設と運営は官民パートナーシップ事業(PPP)として民間に任され、要建設が請け負うことになった。当初髙野さんは施設の建築とテナント付けを行うリーシングを想定していたが、「そこへ東日本大震災の影響もあり、閉店が決まっていた駅構内の蕎麦店の従業員たちが再建してほしいと頼みに来たのです」。

雇用を守りたいと考えた髙野さんは、従業員たちと協議を続けた。1年かけて信頼関係を築き、並行して蕎麦の勉強を行い飲食店経営者としてもやれるという自信をつけた。そして24年、まちステーション日立(設計監修・妹島和世、建築面積917㎡、7テナント区画)のテナントとして要建設が運営する蕎麦処まち庵が開店した。

髙野さんは日立駅の実際の客数からして、まちステーション日立の運営は難しくないと考えていた。ところが「リーシングを始めたところ、複数の牛丼店をはじめ国内の名だたる飲食フランチャイズチェーンに、採算が取れないことを理由にことごとく断られました。日立製作所のお膝元で、日立市の顔となる駅の商業施設にテナントが入らないなんて情けない話ですが、それが地方都市の現状なのです」。

7区画のうち当初からローソンと英会話教室のイーオン、常陽銀行ATMコーナーなどが入り、遅れて居酒屋のわたみん家が入居した。だが、駅に人を呼ぶには気軽に立ち寄れるカフェが必要だ。「ところがリスクがありすぎると、誰もやる人がいないのです」。髙野さんはカフェの運営も決断し、キーコーヒーと組んで日立市で本格的なコーヒーを飲める店を売りにした「Café de ville」を開店させた。「当初は苦しい経営が続きましたが、従業員を『日立の顔になろう』と励まし、5年かけてようやく採算が合うようになりました」

茨城の食材の魅力をアジア各国でPRしたい

まち庵とカフェの展望が見えてきた27年、茨城の有機玄米とオーガニックな旬野菜を使った健康料理を提供するレストランとエステサロンとを一体化させた「ビオハーヴェスト」がオープンした。「飲食事業は建設事業の展示会場という位置付けでもあるのです。そのため頻繁にリニューアルして鮮度を保っているし、エアコンなどの空調機器も最新の製品を導入しています。お店を見に来て、『おたくに決めた』と電話をくれたお客さまもいます。また、ビオハーヴェストは社員食堂や接待の場としても活用しています」。社外だけでなく、社員の福利厚生にも役立てている。

髙野さんが次の一手と考えているのが海外進出と国内展開である。すでに台湾・台北市に1店舗あるまち庵(28年開店)は台湾や周辺国へのチェーン展開を想定。ビオハーヴェストは中国・蘇州市に出店する計画だ。「茨城食材をPRするためにも、韓国・ソウル、中国・蘇州、上海、香港まではやっていきたい」。国内ではJR東日本グループの駅ビルエクセルのレストラン街にまち庵を出店しているが、「茨城の最高ブランドである常陸秋(ひたちあき)そばをひっさげて、東京駅や品川駅も含めた常磐線沿線のアトレ(JR東日本グループ)に出店したい」。このような建設会社の枠を超えた総合的な取り組みが評価されて、中小企業庁の29年版「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選ばれた。

中小企業の事業は55点でスタートして良い理由

なぜ髙野さんは新事業を次々と決断できるのか。「それは中小・小規模企業の事業は55点でスタートと考えているからです。100点が理想ですが、中小・小規模企業がすぐに満点を取れる事業は既存の事業の中にしかない。55点でスタートして、足りない45点は事業を進めていく中で埋めていく。そして経営者・従業員は毎日1点でも上げる努力を続ける。もし逆に下がって50点以下になったらつぶれてしまうので日々真剣です」。事業は、髙野さんが社長就任時に定めた「創造と変革、安心と安全、楽しさと豊かさ」という経営理念に基づいて進められている。

同社の売上高は本業が約20億円、飲食事業その他が約2億円。「本業の市場は縮小しているので、20億円を守りつつ利益率を上げていきたい。飲食事業その他は年10%成長を目標にしています」。一方でもうけよりも雇用の確保と社会貢献を目的として、日立駅前に高校生が集える低価格カフェと、仕事帰りに立ち寄れる立ち飲み屋をつくるという計画もある。「駅前に明かりをともし続けたい」と願う髙野さんの挑戦は続く。

会社データ

社名:株式会社要建設

所在地:茨城県水戸市白梅1-2-36

電話:029-226-1166

HP:http://www.kaname-k.com/

代表者:髙野 賢 代表取締役社長

従業員:40人

※月刊石垣2017年7月号に掲載された記事です。

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