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テーマ別企業事例 新発想で市場をつくり出す 宅配・訪問ビジネスの可能性

事例3 訪問ビジネスは顧客との信頼関係が鍵 常に顧客の声に耳を傾け、ニーズに応える

栄水化学(兵庫県尼崎市)

昭和34年の創業以来、栄水化学は〝おそうじ一筋〟にビルやオフィスの清掃事業を展開してきた。そして平成24年、女性の活躍を支援する「家事支援サービス」を開始、育児や介護、仕事で忙しい女性の家庭を訪問し、家事の手伝いをするサービスを行っている。各家庭の事情に応じたオーダーメードのサービスを低料金で提供することで業績を伸ばしている。

「どこまでもお客さまの心情やニーズに寄り添っていくことが、訪問ビジネスの重要なポイントだと思います」と語る栄水化学の松本久晃社長。尼崎商工会議所青年部の部会長も務める

現状に満足することなく新たな取り組みを模索

ビルメンテナンスや清掃が主な事業なのに社名に〝化学〟が付くのは、もともとは薬品の卸売りをする会社として創業したからだと、社長の松本久晃さんは説明する。

「創業者である私の祖父が薬品販売会社を設立し、創業間もなく清掃用ワックスの販売を始めたのですが、売れなくて大量の在庫を抱えてしまった。それを処分するために自分たちで会社やビルの掃除を引き受け始めたのですが、清掃業のほうがビジネスとして発展性があると判断したようです。それで薬品の卸売りはすぐにやめて、清掃業に特化していったのです」

その後の経済成長とともに、会社やビルの清掃を外部に任せる企業が増えていき、早くから清掃業を始めていた同社は順調に業績を伸ばしていった。そしてそんな中、大学を卒業後にほかの企業に就職していた松本さんが会社に戻ってくることとなった。

「23年ほど前です。当時は父が社長で、景気がよかったこともあり、営業開拓することも新たな社員を入れることもありませんでした。若い社員がいなくて、私と一番近い年齢の人は60歳くらい(笑)。会社はそれで成り立っていたので問題ないのですが、これから業績が尻すぼみになった場合を考えると、このままではいけない。そこで顧客回りをしながら、新たな取り組みを模索していきました」

そうして松本さんが注目したのが、個人宅を対象にしたハウスクリーニングだった。

働く女性をターゲットに家事支援サービスを開始

「当時は大手が先行していてハウスクリーニングの認知度も高まっており、そこに入っていく余地があるのではないかと思いました。そこでハウスクリーニング会社とフランチャイズ契約をして、平成10年から営業を始めました」と松本さんは言う。個人宅に入っていく以上、男性よりも女性スタッフの方が受け入れられやすいと考え、女性従業員を多く採用し、トレーニングを行ってから仕事に送り出していった。

「訪問ビジネスでは、お客さまといかに信頼関係を築き、それによりリピート性を高めていくかが成功の鍵となります。しかし当時はまだそれが分かっていませんでした。収益を出せるよう仕事の効率化や生産性ばかりに注力してしまい、リピート客を生み出すまでにはなかなかいかなくて。結局、5年後にフランチャイズ契約が終了した時点でやめてしまいました」

それから10年近くビル清掃に集中していたが、24年にハウスクリーニング業を再開した。前回は富裕層が主な顧客だったが、今回は時代の変化を読んで違う層にターゲットを絞っていった。それは、働く女性たちだった。

「社内の従業員の入れ替わりが進んで女性スタッフが増え、彼女たち自身が働きながら家事もする人たちでした。そこから、掃除だけではなく洗濯や買い物、ご飯の準備などのサービスがあったら利用したいという声が社内であがり、それができる態勢が整ったので、始めることにしたのです」

そこで開始したのは、女性の活躍を支援するための「家事支援サービス」。それぞれの家庭が必要とするサービスをオーダーメードでつくり、長期契約だけでなく、1回だけでも利用しやすい形にして、それを低料金で提供していった。

継続利用のため新たな提案を出していく

「家事支援サービス」では女性スタッフが各家庭に派遣される。家事に慣れているというだけでなく、依頼者と同性で、同じ年代の働く女性という共通項もあり、家を訪問した際、家事の悩みなどを相談しやすい利点もあった。同社では、仕事の依頼を受けると、まずアドバイザーがその家を訪問し、どのようなサービスを必要としているかを聞き取り、それに応じたサービスをオーダーメードで組み立てて提供している。それを担当しているのが、最初にハウスクリーニング業を始めた時に店長として入社し、現在は統括部長を務める長村和美さんである。

「この仕事はお客さまに継続してご利用いただくことが重要で、同じことをしていては飽きられてしまいます。そこでアドバイザーはこまめにお客さまと顔を合わせ、ニーズをしっかりキャッチして新たな提案をしていく必要があります。また家事支援サービスはお客さまの自宅で仕事をする関係上、スタッフとお客さまの個人対個人の部分が出てきます。そこで間に必ずアドバイザーが入り、両方の橋渡し役となることで、お客さまがスタッフに直接言いにくいことはアドバイザーに言っていただけるようにしています。これも、家事支援サービスを行う上で重要な部分の一つかもしれません」

この家事支援サービスは、広告を出したり新規営業をしたりすることはなく、口コミや紹介で顧客を増やしている。そこには、積極的に顧客を増やせないジレンマを抱えていると、松本さんは言う。「スタッフ教育に時間が掛かるので、仕事を増やしても人手をすぐに増やすことができません。これはどの業種でも同じでしょうが、これからの訪問ビジネスは人手の確保が一番の課題になります。そのためにも、地域の奥さま方が気軽に集まれる場所をつくり、働きたい女性のネットワークを築いていきたいと考えています」

現代は家事と仕事の両立に悩む女性も多い。同社は家事支援サービスを通じて、働く女性の家事支援を行うとともに、働きたい女性のための場も提供していく。

プロフィール

社名:株式会社栄水化学

所在地:兵庫県尼崎市築地2-6-25

電話:06-6401-5915

HP:https://www.eisui.co.jp/

代表者:松本久晃 代表取締役社長

従業員:147人

※月刊石垣2017年8月号に掲載された記事です。

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