テーマ別企業事例 産学官で育てる! 地域主導で動き出す“人材創生”

事例3 香川の大学発ベンチャーがロボット開発で海外市場を開く

未来機械(香川県高松市)

日本を飛び出し、海外、それも中東で脚光を浴びている大学発ベンチャーがある。13年前に起業し、特に屋外で働くロボット開発では群を抜く。拠点を地方に置く利点、従業員の世代別による特性を巧みに生かし、国境を超えてその地域特有のニーズ、課題に果敢に応えている。

電子回路の設計、プログラム開発、機械設計を社内で完結できる体制を強みに、水を使わない高度なブラッシングを実現

社会ニーズと時流をつかんで学生時代に起業

「うどん県」の呼称で親しまれる香川県。中でも中核都市、高松市は平成27年の国勢調査で四国唯一の人口が増えた自治体として注目されている。高松駅や再開発した大規模商店街、丸亀町商店街など活気あふれる市街地から、車を走らせること20分ほど、香川大学近くに未来機械はある。

創業は16年で、代表取締役社長の三宅徹さんが香川大学大学院2年のときだ。いわゆる大学発ベンチャーで、当時の平沼赳夫経済産業大臣が13年に掲げた「大学発ベンチャー1000社構想」の機運に乗り、第一次ムーブメントが起きた時期と重なる。入学当初から起業を意識しており、サービスロボット製作を模索していたという。そんな三宅さんの目にあるとき留まったのが、キャンパスの窓拭きをしている人の姿だった。

「在籍していた工学部は高層階で、窓掃除が大変そうでした。それで大学4年のときに、窓ガラスに吸盤で張り付きながら動く窓拭きロボットを開発したんです」

ここからロボット開発に向けた人生の歯車が加速する。このロボットで出場した岡山県主催のビジネスコンテストで準優勝し、賞金300万円を会社の設立資金に当てる。設立の翌年、愛知万博で窓拭きロボットの出展を果たすと、これが国内大手の重工メーカーの開発者の目に留まった。

「ソーラーパネルの掃除ロボット開発のオファーでした。それからエンジニア3人ぐらいでアリゾナやカリフォルニアに行ってはテストを繰り返しました。アメリカのオバマ大統領(当時)が20年にグリーン・ニューディール政策を打ち出すなど、自然エネルギーや地球温暖化対策への投資熱があったんです。時流をうまくつかんだチャンスでした」(三宅さん)

清掃ロボットの活路は中東にあり

だが、この事業は立ち消えとなる。汚れているのではと設置したアリゾナのメガソーラーパネルは降水量が少ないので思ったほど汚れておらず、メーカーはソーラー事業から撤退してしまったのだ。

「それなら独自に開発を続けよう、掃除ロボットのニーズは必ずあると自力で調査し、目を付けたのが中東です。サウジアラビアの電力会社を介して現地を訪ねると予想的中。メガソーラーのパネルは砂埃(ほこり)をかぶって発電効率が低い状況でした」

24年から実地試験を10回も繰り返し、ロボットの性能を高めていく。完成したロボットは、水を一切使わず、パネルのエッジを検知して隅々までブラッシングし、パネルの端まで走行したら自ら方向転換して、万が一スリップしても自動修正して掃除を続ける。人間がすることといえば、ロボットをパネルにのせてスタートボタンを押すことと、バッテリーを2時間おきに交換するだけというから驚く。

「パネルの枚数やサイズを入力すると、人為的ミスで事故が起きる原因になりかねません。ルンバなどの家庭用掃除ロボットより動きは単純ですが、屋内用センサーでは屋外の過酷な環境には耐えられません。自社開発したセンサーは、当面どこもまねできないテクノロジーだと自負しています」

すでにサウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールで販売され、ドバイやアブダビでは1GW規模の事業の引き合いがある。さらにインド市場は数10億円規模の需要があると読み、営業活動を広げている。

若手とベテランの社員の関係性が強みに

同社が開発したソーラーパネル掃除ロボットは、世界7カ国で特許を出願・取得している。また、その効力ばかりに頼ることなく、社員13人の少数精鋭で、ロボットの研究開発、市場開拓に余念がない。

「設立時は10人のスタートで、少しずつ増員していく予定でしたが、これまで一度も人材募集をしたことがないんです。海外から自社サイトにアクセスしてインターンになった学生がいますが、あとは大学や友人、知人の紹介などつながりがある人ばかりです」

人材育成は今後の課題と苦笑するが、結果的に効果を上げているのが社員の年齢構成の二極化だと語る。30代前後の若手と、60歳以上の大手メーカーで設計や開発を担当してきたベテラン勢だ。もともと香川大学の工学部は、三宅さんが入学する1年前に設立された国立大学では最後発の学部で、特色を打ち出すべく産学官連携にはかなり力を入れていた。その産学官連携のリーダーを務めていた地元企業の社長が顧問として20年に入社し、そのつながりで現在4人のベテランが技術者として週3回出社している。センサーやシステム開発は若手が、ハードウエアの設計・製造や品質管理はベテランの経験が生きる。ハードウエア、電子回路、ソフトウエアの開発・試作が社内で完結できることが同社の強みとなり、さらに評価スタッフ、営業スタッフが加わった全員参加型でプロジェクトが進む。よくある「最近の若い者は」という世代間の軋轢(あつれき)はなく、若手の斬新なアイデアに年長者は具現化を模索し、若手も年長者の助言に素直に耳を傾ける。そうした関係性が相乗効果を生み、ロボットの研究開発に弾みをつけているようだ。

実際、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)や経済産業省の助成金を受けるほか、四国の大学の学生ベンチャーでは初のベンチャーキャピタルから本格的な投資が決まるなど、同社への期待は大きい。

「屋外で働くロボットは未来機械。そう認知されるデファクトスタンダードを目指します」

時流は、今なお追い風だ。

会社データ

社名:株式会社未来機械

所在地:香川県高松市林町2217-44 ネクスト香川202

電話:087-816-5112

HP:http://miraikikai.jp/

代表者:三宅 徹 代表取締役社長

従業員:13人

※月刊石垣2017年11月号に掲載された記事です。

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