政府は6月15日、新たな成長戦略である「未来投資戦略2018」と「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2018」を閣議決定した。未来投資戦略では、人工知能(AI)、ロボット、IoTなどを活用した「第4次産業革命」により、さまざまな課題を解決する「ソサエティー5・0」で実現できる新たな国民生活や経済社会の姿を提示。日本経済の潜在成長率の引き上げとともに、国民所得、生活の質、国際競争力の向上を目指す。日本商工会議所の三村明夫会頭は同日発表したコメントで、「第4次産業革命、デジタル革命などにより生み出される先駆的な技術・システムを社会実装し、わが国を自律的な成長に導くための戦略が網羅されており、高く評価する。民間主導により、やるべきことをひとつひとつ、粘り強く確実に実現していくことが何より重要」と期待を寄せた。(関連記事2、3面)
未来投資戦略では、重点分野として、①中小企業・小規模事業者の生産性革命のさらなる強化、②次世代モビリティー・システムの構築、③次世代ヘルスケア・システムの構築、④エネルギー転換・脱炭素化に向けたイノベーションの推進、⑤フィンテック(ITを活用した革新的金融サービス)/キャッシュレス化推進、⑥デジタル・ガバメントの推進、⑦次世代インフラ・メンテナンス・システムの構築、⑧PPP・PFI手法の導入加速、⑨農林水産業のスマート化、⑩まちづくりと公共交通・ICT活用などの連携によるスマートシティー──の10分野を提示。ITやロボットなどの導入促進、2020年までの無人自動運転による移動サービスの実現といった主要プロジェクトが盛り込まれている。
また、経済構造の革新に向けた基盤づくりとして、基盤システム・技術への投資、AI人材の育成、サンドボックス制度の活用による規制・制度改革などにも取り組むとしている。
骨太の方針では、少子高齢化が進む中、持続的な成長経路の実現に向けて潜在成長率を引き上げるため、サプライサイドの改革として、一人一人の人材の質を高める「人づくり革命」と、成長戦略の核となる「生産性革命」に最優先で取り組むとともに、働き方改革を推進していく方針を示した。基礎的財政収支(プライマリーバランス)については、黒字化を2025年度に目指すとし、従来の目標より5年先送りした。
三村会頭は、「PB(プライマリーバランス)の黒字化目標の達成時期を先送りしたことは止むを得ないが、再度同じ轍(てつ)を踏まない強い覚悟が必要である」とコメント。財政健全化の鍵となる社会保障給付費について、「改革の遅滞は許されない」とくぎを刺すとともに、「国民的議論の下に、世代間のバランスや応能負担の視点に立った抜本改革に取り組み、国民の将来の安心を確保する必要がある」と要望した。
また、19年10月の消費税率10%への引き上げが明記されたことから、「国は、『社会保障の充実や教育無償化等の安定財源としての消費税率引上げ』について最大限の広報を行い、税率引上げに対する国民の理解を深める必要がある。また、需要変動の平準化の検討に際しては、転嫁対策が後退することのないよう留意すべき」と要請した。
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