Q 当社の従業員Aさんが、深酒をしてしまい、帰宅途中に、近所の庭へ入り込んで鉢植えを壊してしまいました。警察から家族に、「Aさんを逮捕した」と連絡があり、家族から「どうすればいいのか分からない」と当社の役員が相談を受けました。会社や家族は、どのように対応するのが一番よいのでしょうか?
A 刑事事件では、できるだけ早期に弁護士が対応することが重要です。最初から国選弁護人が選ばれる場合もありますが、そうでないときは自分で弁護士を探さなければなりません。逮捕直後から弁護士が適切に活動すれば、事件によっては刑事処分を受けずに、早期に釈放してもらうことも十分可能です。そうすることで会社へのダメージも最小限に抑えられます。
誰でも当事者になりうる
誰でも交通事故を起こして刑事事件の当事者になったり、酒に酔い前後不覚になり事件を起こしてしまう可能性があります。
刑事事件を起こしてしまうと、まず逮捕(刑事訴訟法199条1項等)され、72時間以内に勾留(刑事訴訟法207条1項)となり、勾留されてから20日以内に裁判にするかどうか(「起訴」するかどうかといいます)が決定されます(刑事訴訟法208条、208条の2)。ここまでを「被疑者」の段階といいます。
裁判をすることになると、罰金を命令されて終わりか(略式命令、刑事訴訟法461条)、正式な裁判を受けて(公判請求、刑事訴訟法256条1項)、刑を言い渡されるかのどちらかになります。正式裁判を受けることになった場合、「被告人」の段階になります。
なお、逮捕・勾留されてしまった場合、①最もよい結果が裁判をしないという不起訴処分、②次が略式命令で罰金支払い(罰金だけでその場で解放されるため)、③一番重い結果が正式裁判になります。
早期に弁護士が適切な対応をすれば、①や②の処分で済むことも見込まれます。
起訴されるまでの弁護活動がカギ
逮捕されてから正式裁判にするか決まるまでの日数は、最大で20日程度しかありません。
その中で弁護士が逮捕された本人と会って事情を聞いたり、被害者と接触するため検察官や警察と交渉する時間も必要になります。従って、かなりタイトなスケジュールになります。
事例の場合、被害者の庭に無断で入り(住居侵入罪)、被害者方の鉢植えを壊しています(器物損壊罪)。従業員に前科前歴がないことが前提ですが、この程度ならば被害者にお金を弁償して示談することで、不起訴処分に持ち込むことも十分可能です。
早期対応で従業員と会社を守る
事例と似た実際の事件では、逮捕の翌日に弁護士へ依頼がありました。弁護士は、検察官経由で被害者に連絡し示談金支払い交渉を開始しました。その後示談が成立し、検察官へ報告。従業員は逮捕から7日目に不起訴処分となり釈放されました。新聞の地方欄には細かな事件も掲載されますが、掲載前に早期に解決できたことで、会社の評判に傷がつくことも避けられました。
ほとんどの方は、刑事事件にはなじみがないと思います。しかし、トラブルに突然巻き込まれた時はスピードが大変重要ですので、早急に弁護士へ相談してください。 (弁護士 貝塚 聡)
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