きっとこれはうまいぞ! と、食べる前から一目ぼれをした。拍子木状に均一に手切りされた大根に、じっくりと塩漬けされたシソの葉が巻かれている。大根は、採れたてのシャキッとしたみずみずしさは消えて刈安(かりやす)色に染まり、シソも良い塩梅に若々しさが抜けている。そうそう、この感じ。浅漬けなんか足下にも及ばない、時間をかけないと出でこない漬物の色気やオーラが、一本一本から立ち上っている……。
昭和の初め、漬物づくりが得意だった長久保ツネさんお手製のしそ巻きは、常磐炭鉱で働く人々に愛されていた。ツネさんは毎日リヤカーを引いて炭鉱へ届けに行ったという実話も残る。これが「長久保のしそ巻」で、今や一店舗の味ではなくいわきの人々の心の味となっている。
手作業で1本ずつ巻いていき、本醸造しょうゆでつくった調味液に三度漬けると、ようやく完成。香り・食感・味ともに、唯一無二のしそ巻きが出来上がる。箸でつまんでぽりぽりと食べる。手間と時間をかけた分だけ、大根のうまみが凝縮している。それにしても何と優しい味だろう。ごはんのおかず、酒の肴(さかな)、おやつにもよさそうだ。いわきの名物、ここにあり。
Data
社名:有限会社長久保食品
住所:福島県いわき市好間町中好間字鍛冶内28-2
電話:0120-232-423
Infomation
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