2020年7月12日、先住民族〝アイヌ〟の文化復興・創造の拠点である「ウポポイ」(民族共生象徴空間)が、当初の予定より約3カ月遅れで開業した。北海道白老町のポロト湖畔で整備が進められていた「ウポポイ」は、新千歳空港から車や鉄道で40分、登別温泉へも車で40分というアクセスの良さもあり観光ルートとしての期待も高まっていたが、新型コロナの影響で開業延期を余儀なくされていた。特集では、同拠点の概要を北海道商工会議所連合会の特別寄稿で紹介する。
先住民族の尊厳を尊重 事前予約制での船出
ウポポイ(民族共生象徴空間)とは
「(おおぜいで)歌うこと」を意味する愛称「ウポポイ」は、アイヌを主題とした日本初となる「国立アイヌ民族博物館」とアイヌ文化体験の場である「国立民族共生公園」、アイヌの方々の「慰霊施設」を中核施設とし、アイヌ文化の歴史などに触れる多彩な展示やアイヌの衣食住、舞踊、工芸などの体験プログラムを有している。
当面の間、入場は事前予約制とし、体験プログラムを変更するなど感染防止対策を優先させる。
国立アイヌ民族博物館
先住民族アイヌを主題とした日本初の国立博物館は、アイヌの尊厳を尊重し、国内外にアイヌの歴史・文化などに関する正しい認識と理解を促進し、新たなアイヌ文化の創造及び発展に寄与することを理念としている。
伝統的なアイヌ文化の一面的な展示にとどまらず、アイヌ民族の視点で語る「六つのテーマ」を掲げ、現代に息づく多様なアイヌ文化とそれに関わる人々を紹介する。館内は、アイヌ語を第一言語として最初に表示している。
また、館内には、これらテーマに対応する体験キットを手に取って体感できる「探究展示」(当面の間、触れることはできません)やアイヌ文化を多様なテーマから高精細・大画面映像で分かりやすく紹介する「シアター」も用意されている。
アイヌ民族の視点で語る「6つのテーマ」
1.私たちのことば
口伝えで語り継がれてきたアイヌの口承文芸をはじめ、アイヌ語のしくみやアイヌ語由来の地名などについて、音声や映像を交えて紹介
2.私たちの歴史
現代に続くアイヌの歴史のひろがりと連なりを、地図と年表を用いて映像でわかりやすく紹介
3.私たちの世界
儀礼に使われる道具などを通じて、アイヌの世界観の中心となる、カムイ(神)の考えかた、自然観、死生観などについて紹介
4.私たちのしごと
狩猟、漁ろう、採集、農耕といった伝統的な生業のほか、現代を生きるアイヌ民族の多様な仕事を紹介
5.私たちのくらし
衣食住、人の一生、音楽や舞踏など、アイヌ文化の特色や地域差を紹介。また、それらの文化伝承に携わる現在の人々についてもスポットをあてる
6.私たちの交流
アイヌは、まわりの民族と交流してきた。交易品を通して、さまざまな文化や民族との交流をたどっていくとともに、現在に続く民族共生のありかたを伝える
国立民族共生公園
古式舞踊の公演や多様な体験プログラムを通じてアイヌ文化を体感できるフィールドミュージアム。豊かな自然に囲まれた、アイヌ文化が息づく憩の場。(当面の間、実施プログラムは予めご確認ください)
1.体験交流ホール
ユネスコ無形文化遺産に登録されている「アイヌ古式舞踊」やムックリ(口琴)・トンコリ(五弦琴)の伝統芸能上演プログラムが楽しめる。(要確認)
2.体験学習館
3.工房
木彫りや刺繍の製作体験を通じて、アイヌ文化の特徴的な模様の意味や歴史を学ぶことができる。(要確認)
4.伝統的コタン(集落)
アイヌ語や伝統的生業などの体験プログラムが実施される。「食体験」では、実際に食べることはもちろん、調理体験などを通じて、食文化の奥深さを味わうことができる。「伝統芸能体験」ではムックリ(口琴)・トンコリ(五弦琴)などアイヌ伝承楽器の演奏や、ムックリ製作が体験できる。「遊び」と「学び」の要素を持たせた子ども向けのプログラムも用意されており、楽しみながらアイヌ文化を学ぶことができる。(当面の間、プログラムは予めご確認ください)
白老町や周辺エリアの観光情報
開業場所の白老町は、7千年余り前の縄文時代から人々の営みがあったと言われている。2008年の北海道洞爺湖サミットで提供されたブランド牛「白老牛」の産地で、毎年6月には「白老牛肉まつり」を開催。また、虎杖(こじょう)浜のたらこや毛ガニなど食材も豊富だ。隣町の登別市には「温泉のデパート」と呼ばれる登別温泉や北海道遺産の「登別温泉地獄谷」があるほか、人気のアミューズメント施設「登別伊達時代村」もあり楽しめる。
木村 義恭
北海道商工会議所連合会 観光振興委員会 委員長/登別商工会議所 会頭
北海道42商工会議所をはじめ、官民が一丸となって盛り上げてまいります。
豊かな自然に抱かれたポロト湖のほとりに位置する「ウポポイ」にぜひお越しください。ご来道をお待ちしております。