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テーマ別企業事例 日本のものづくりは揺るがない 新分野を開拓"部品屋の挑戦"

事例4 一貫生産の強みを生かし自社ブランドをグローバル展開

千石(兵庫県加西市)

「短時間でカリッとおいしく焼ける」とヒット中のグラファイトトースター

プレス加工から始まり、大手電機メーカーのOEMを中心に歩んできた千石。自社ブランド製品の開発に力を入れるとともに、中国やアメリカに進出してグローバルな製造販売を展開してきた。そんな戦略が奏功してヒット商品を連発し、大手に引けを取らない家電メーカーとしての地位を固めている。

付加価値を追求しながら下請けから事業を拡大

グラファイトという材質をご存じだろうか。炭素(カーボン)を高温熱処理して黒鉛化したものだが、カーボンに比べて柔軟性に優れ、鉄の10倍以上の熱伝導率を持つのが特徴だ。その性質に着目し、グラファイトヒーター、トースター、グリラーなどを開発販売しているのが、千石である。

同社は1953年に、大手電機メーカーの二次下請け工場として創業し、主にプレス加工を行っていた。

「私は大学を卒業してすぐここに入社したんですが、いくら仕事を受けても業績は厳しいし、このまま続けていても未来はないんじゃないかと感じていました」と同社二代目社長の千石唯司さんは振り返る。

千石さんは仕事に付加価値を生み出そうと、溶接や塗装まで扱うことにした。やがて大手商社からの依頼で、電化製品の完成まで請け負うようになった。商社には設計や開発部門がないため、同社は社内に設計部や製品開発部などを設け、完成品をつくるための技術力を培っていった。

「実は、当社が完成品をつくったことに、大手電機メーカーがへそを曲げましてね。もう仕事は出さん!と取り引きを打ち切られてしまったんです。私もこういう性格だから、それならそれでいいと。その分、ほかにも目を向けていこうと思ったんです」

自社ブランドを持つなら価格競争より高級路線

同社は、主にガス製品に使うパーツをつくる部品事業と、家庭内製品をつくる完成品事業とにすみ分け、それぞれ技術力向上に努めた。特に家電製品に力を入れ、電気ストーブやこたつユニット、オーブントースターなどを次々と製造してきた。

それと並行して、海外にも着目する。1990年代に日本企業の中国進出が加速したが、同社も93年に中国に工場を開設し、そこへ生産の一部を移した。

「トレンドに乗ったわけではないんです。私は中国の美術品集めが趣味で、個人的に中国や香港に行く機会が多かったので、現地の事情に明るかった。当社の工場も決して都会にあるわけじゃないし、中国でつくっても変わらないと思ったんです」

その後もアメリカや中国に生産工場や販売拠点を次々と設け、生産地ごとに特徴ある事業に取り組んでいく。これにより商品企画から設計、製造、販売まで一貫したプロセスが整い、OEMメーカーとしての基盤を固めた。

しかし、OEMを受注していれば安泰というわけではない。それまでいかに実績を積んでも、新製品に切り替わる際のコンペに落ちればゼロになってしまう。また、それまでつくってきた製品が、突然生産中止になる場合もある。そうしたことからOEMだけに頼るのではなく、自社ブランドの開発にも目を向けた。

「自社ブランドを持つなら、ある程度価値あるものでなければダメだと思いました。仮に1000円のブランド品をつくったとして、最初は安いからと皆飛び付くけれど、価格競争が起きて次は900円、その次は800円と、どんどん値段を下げなくてはならなくなります。それではしんどい」

特許技術を搭載した製品が瞬く間にヒット

そこで着目したのが、「Aladdin(アラジン)」ブランドで暖房機具を製造販売していた日本AICという会社だ。アラジンとは80年以上前にイギリスで生まれ、日本に渡ってきた石油ストーブで、そのレトロな風貌にコアなファンがいる商品。そんな由緒あるブランドと自社製造品のラインナップが似ていたことから、関心を持った。

「日本AICを調べると後継者がいないことが分かり、『会社を売ってほしい』と訪ねて行ったんです。すると向こうの社長が『おもしろい』と、前向きに検討してくれてね。その4~5年後に社長が引退したのを機に当社が事業とブランドを引き受けることになりました」

こうしてブランドを手に入れた同社が、次なる暖房器具として開発したのがグラファイトヒーターだ。一般的な電気ストーブとの違いは、熱伝導の良さに加え、熱の進む方向が調節できるため暖房効率が良いことだ。さらに、グラファイトの入ったガラス管内には、大気中に存在するアルゴンガスを使用して環境にも配慮されている。

同社はこの特許技術を活用したヒーター、トースター、グリラーを、アラジンブランドの下、高級家電として次々に発売する。特に2015年に発売したトースターは0・2秒で発熱し、庫内温度が一般製品より30℃高いことから、表面はカリッと中はモチモチに仕上がることが支持され、瞬く間にヒット商品となった。続けて発売したグリラーも、「魚を焼いても煙が出ない」とユーザーから好評を得ている。

「少々値段が高くても、おいしく調理できるものは売れます。今後も内容を吟味しながら、焦らず1年1つのペースでアラジンらしい製品を展開していきたい。目標としては2020年に売り上げ200億円を達成することですが、これは息子たちが頑張ってくれるんじゃないかな」と千石さんは会心の笑みを見せた。

会社データ

社名:株式会社千石

所在地:兵庫県加西市別所町395

電話:0790-44-1021

HP:http://www.sengokujp.co.jp/

代表者:千石唯司 代表取締役社長

従業員:295人

※月刊石垣2018年6月号に掲載された記事です。

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