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テーマ別企業事例 発想を変えて"季節外れ"をなくす

特定の季節だけに売れる“季節商品”は、どんなにヒットしても、季節が変われば売れ残ってしまう恐れがある。そこで、“季節外れをなくす”という新たな発想で自社商品を開発し、売り上げを伸ばしている企業を直撃し、その戦略に迫る。

事例1 ユーザー目線で新たなニーズを開拓し“なるほど”商品を消費者に提供していく

アイリスオーヤマ(宮城県仙台市)

羽と羽の隙間を少なくすることで風量を増やし、形をボール型にすることで風が中央に集まり、遠くに風が飛ぶ工夫がされている

アイリスオーヤマは宮城県仙台市に本社を置き、家庭用プラスチック製品やペット用品、日用品、生活家電などを製造・販売している。同社の家電製品であるサーキュレーター(送風機)や布団乾燥機は、季節を問わず売れるヒット商品となっている。いったいどのような発想からこれらの商品が生まれ、どのように売り出していったのだろうか。

業務用や工場用だった製品を家庭用に変えて売り出す

サーキュレーターは扇風機ではなく送風機である。どう違うのかというと、扇風機が一般的には人に向けて風を送るのに対して、送風機は室内の空気を撹拌させるために風を送る。風を送るという機能は似ていても、この二つはそもそもの用途が異なっているのだ。

室内に風を送るという単純な機能のサーキュレーターだが、アイリスオーヤマの製品は2010年の発売以来、1年を通して売れるヒット商品となっている。そこにはいったいどんな秘密があるのだろうか。同社の執行役員で家電開発部部長の原英克さんに話をうかがった。

「サーキュレーターは当社が発売する以前からあった製品です。ただ、業務用や工場用が大部分で、家庭用があったとしてもほとんど露出していなかったため、家の中でサーキュレーターを使うということを知らない消費者がほとんどでした。その一方で私たちは、エアコンを使っている室内でサーキュレーターを使って空気を撹拌すると、エアコンの電気消費量が減り、電気代が安くなることを知っていました。そこで、家庭用のサーキュレーターを開発して売り出したのです」

開発していくにあたり、技術的な面では、家庭の室内で使うための場所を取らないコンパクトな大きさと、空気を撹拌するために風量が多く、かつ音が静かという点が重視されたという。しかし、さらに大きなポイントは別のところにあった。

扇風機とは違うことを機能や効果で伝えていく

「それは売り方です。扇風機とどう違うのか、サーキュレーターはエアコンと一緒に使うものなのだということを伝えていく必要がある。そこで、扇風機よりも風量が多く音が静かということだけでなく、エアコン稼働時にサーキュレーターで室内の空気を撹拌すると20%の節電になることを強調し、消費者に訴求していきました。さらに、サーキュレーターの各製品で何畳用かを明示しました。これにより消費者は、自分が使う部屋用にはどの製品を買えばいいのかがすぐ分かります。また扇風機ではこのような区分をしないので、扇風機とは違うということをしっかりと伝えられるのです。これがこの商品の一番のポイントでした」

このようにして同社のサーキュレーターはヒット商品となった。そして11年の東日本大震災の後、原発の運転停止により節電が叫ばれるようになると、サーキュレーターを使えばエアコンの節電ができると、さらに普及していった。

それ以来、今に至るまでずっと売れ続けているのだが、そこにも理由があった。それは、サーキュレーターを毎年改良して新たな製品を出しているからだ。

「この製品はいかにコンパクトにして室内で邪魔にならないようにするかが重要なポイントなので、風量を維持したまま形を小さくするよう改良を進めています。毎年新しい製品を出していくことで生活者のニーズに応える努力をしています」

新たなニーズを掘り起こしてその解決策を提供していく

扇風機から形と機能を変えて通年商品としてヒットしたサーキュレーターだが、実は開発した際には、季節外れをなくそうという考えはなかったという。

「販売する段階で、夏しか使わないと思われていたものを冬の暖房時にも使えると訴求することは、季節外れをなくすという考えに近い。しかし開発の段階では、消費者の悩みを解決したいという思いが先にありました。エアコンを使うと冬は部屋の上が暑くなり、夏は下が寒くなることに不満を持っている人が多い。それを解決しようという発想で開発したのです。つまり、新たなニーズを掘り起こして解決策を提供したわけです。このようにユーザー目線の発想から生まれたものは、ヒット商品につながることが多いですね」

こういった発想を形にしていくのが、毎週月曜日に行われる「新商品開発会議」である。そこでは、商品開発部の担当者が新商品に関するプレゼンを行っていく。社長を含めた会社の幹部と各部門の責任者が一堂に集まっているため、即断即決できるシステムになっている。同社では毎年1000種類以上の新商品が発売されているが、すべてがこの会議を通じて生まれているという。

「その際に重視されているのが〝値ごろ感〟です。開発担当者がプレゼンした機能と価格を見て、自分がお客さんだったらこの価格で買うかということから始まるのです。また、この会議を毎週行うのは、商品開発のスピードを早めるため。お客さまのニーズは常に変化しています。そのニーズに対して新鮮さを保ったまま新商品を出していくには、スピードが重要になってきますから」

消費者に便利な〝なるほど〟を考えながら開発していく

同社では、サーキュレーターと同様に、季節商品が通年商品になったものがある。それは布団乾燥機である。

「布団乾燥機は、外で布団が干せない梅雨に売れるものでした。ところが東北地方のように寒い地域では、冬の時期に寝る前に布団を温めるためにもよく使われていることが分かったんです。ただ、形がやや大きめで準備に手間がかかる。そこで、普通の布団乾燥機よりコンパクトにして、10秒で布団にセットできるものを開発しました。そして、布団を温める機能をメインに訴求したところ、今では冬場の方が多く売れるようになりました」

このような新しい商品のアイデアは、社員自身の体験やその家族から出た意見や不満などから生まれることも多い。そのニーズや不満に対して〝なるほど〟と思える便利な機能を加えることが、ヒット商品を生むためのポイントなのだという。同社では、こういった発想で生まれた家電製品を「なるほど家電」と名付け、商標登録もしている。

「新商品開発会議でも、よく社長から『この商品の〝なるほど〟はなんやねん』と関西弁で聞かれます。当社はこれからも〝なるほど〟と思っていただける商品を値ごろ感のある価格でご提供していきたいと考えております」

ユーザー目線の発想から生まれたヒット商品。季節商品の季節外れをなくしていくためには、こういった別の視点から取り組んでいくことも重要になるだろう。

会社データ

社名:アイリスオーヤマ株式会社

所在地:宮城県仙台市青葉区五橋2-12-1

電話:022-221-3400(代表)

HP:[https://www.irisohyama.co.jp/(https://www.irisohyama.co.jp/)

代表者:大山健太郎 代表取締役社長

従業員:3,257人(2018年1月現在)

※月刊石垣2018年6月号に掲載された記事です。

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