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テーマ別企業事例 地域一番の“売り”を決めてインバウンドを呼び込め

事例2 固有の地域資源「海女文化」を柱にインバウンドを呼び込む

鳥羽商工会議所(三重県鳥羽市)

海女に会いたくてニューヨークからやってきた女性

2016年に開催された伊勢志摩サミットにより、一気に世界の注目を集めた伊勢志摩エリア。そのほぼ中央に位置する鳥羽市では、鳥羽商工会議所が主体となって、同市が誇る「海女文化」や「御食国(みけつくに)」など固有の地域資源を強みに、インバウンドを誘致するさまざまな取り組みを展開している。

伊勢志摩エリアが協働して外国人客を誘致

三重県南東部に位置する伊勢市、鳥羽市、志摩市などの市町で構成される伊勢志摩エリア。そのほぼ中央に位置する鳥羽市は、素潜りでアワビ、サザエ、ウニなどを採る海女漁が今でも行われ、「日本一の海女のまち」として知られる。また、そうした新鮮で上質な海産物などを、古代から平安時代まで御食料として皇室や朝廷に貢いでいたとされることから、「御食国」と呼ばれている。そうした地域資源を強みに、インバウンドを誘致する取り組みを展開しているのが鳥羽商工会議所だ。

その端緒となったのは、2003年に設立された「伊勢志摩地域・鳥羽市外国人観光客誘致促進協議会」である。これは同所が主体となってスタートしたもので、国の観光立国宣言と同時に始まったビジットジャパン地方連携事業の受け皿としての役割も担っていた。13年には、伊勢市と志摩市も同協議会に加わり、民間企業を中心としたワーキンググループを設置する。PRや商談、施設のインバウンド対応など、民間企業の積極的な参加を後押しした。16年には名称を「伊勢志摩鳥羽インバウンド協議会」に変更し、同協議会が意思決定を行い、行政や民間団体、商工会議所などで構成される事業推進会議が実務を担当することになった。

「鳥羽を訪れるインバウンドは長らく2万人台で推移していましたが、伊勢神宮式年遷宮の関連行事が始まったころから増えてきました。そこへ伊勢志摩サミットの開催が決定し、世界の注目が集まりました。その流れをつかもうと、インバウンド誘致に拍車がかかりました」と同所専務理事の清水清嗣さんは振り返る。

サミット効果で知名度アップファムトリップが急増

それまでは海外の旅行会社やメディア向けに誘致のプロモーションを行っても、「まずは伊勢志摩の知名度を上げてほしい」と言われたという。しかし、サミットによって一気に注目されたことで風向きが変わり、ファムトリップが急増した。ファムトリップとは、海外の旅行会社やメディア、ブロガーに視察してもらうツアーのことだ。これを積極的に受け入れて、伊勢志摩の魅力をPRしてもらえれば、インバウンドの誘致につながる。

ファムトリップの受け入れで重要な役割を果たしているのが、同所にインバウンド専門担当職員として採用されたカナダ人のクリストファー・ダグラス(以下クリス)さんだ。鳥羽に在住して8年になるそうだが、周りを山に囲まれたカナダと違い、海に面した鳥羽は新鮮だったという。そんな外国人目線を生かしつつ、ファムトリップに対応している。

それと並行して進めたのが、看板やHP、地図などの英語表記ミスのチェックだ。

「グーグルマップの英語ページを見ると、間違ったアルファベット表記がたくさんあります。例えば、鳥羽にある城山公園は『しろやまこうえん』と読みますが、グーグルマップでは『じょうやまこうえん』と書かれていました。これでは城山公園にたどり着けません。こういう表記ミスを一つ一つ見つけて、訂正していきました」とクリスさんは話す。

「文化」と「食」の両面から魅力的な旅行商品を企画

インバウンド誘致を開始して15年。地道な取り組みにより、現在の観光入込客数は年間約11万人を数え、宿泊者数も5万人を超えた。国別にみると、香港、台湾、中国、フランス、マレーシアの順に多く、アジアからの観光客が大半を占めるが、欧米からも年々増えている。

「伊勢志摩サミットの効果は、そろそろ終わりだと考えています。今後は外国人客が『行ってみたい、体験してみたい』と思えるようなツアーや商品を企画することが大事。旅行の目的は国によって違います。例えば、アジアの人は全般的に食べ物に関心を示す一方、欧米の人は歴史や文化に興味を持ちやすい。そういう意味で鳥羽の海女文化は、両方の人から満足してもらえる地域資源だと思います」(クリスさん)

現在、伊勢志摩エリアには約660人(17年海の博物館調査)の海女が操業している。古代から続く長い歴史、素潜りという独特の潜水技術による漁法。しかも日本と韓国の一部でしか行われていない希少性は、歴史や文化に興味がある人に魅力的に映るだろう。また、海女漁で獲れた新鮮な海の幸が味わえるのは、食に興味がある人にとっても大きな動機付けになる。

「さらにもっと深く『海女文化』や、『御食国』の食文化を体験できるツアーや商品を生み出し、広く世界に発信していくつもりです。ただ、文化をすべて観光資源にするのは危険な部分もあります。例えば、海女漁を堪能できる企画を立てたことで、実際の海女漁に支障が出てしまっては本末転倒です。そこで、『サスティナビリティー(持続可能性)』をキーワードに、文化も観光もしっかり将来を見据えながら、伊勢志摩エリア全体が横の連携を密にして取り組んでいきたい」と清水さんは締めくくった。

会社データ

名前:鳥羽商工会議所

所在地:三重県鳥羽市大明東町1-7

電話:0599-25-2751

HP:http://toba.or.jp/

※月刊石垣2018年9月号に掲載された記事です。

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