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テーマ別企業事例 シニア市場に異変あり ひと味違う「健康長寿」ビジネス

事例1 40歳以上のスキークラブ主催が店の高付加価値となり、商売につながる

オオイワスポーツ(東京都千代田区)

会員27人で始まったBASCも、今では80人にまで増えている

東京都千代田区にあるオオイワスポーツでは、40歳以上の人を対象にしたスキークラブ「BASC(バスク)」を主催している。会員は同店の顧客が中心で、創設21年目を迎えた現在、平均年齢はなんと71歳。年に7、8回、講習会やスキーツアーを開催している。BASCの活動は顧客にスキーを楽しんでもらうために行っているものだが、その精神が結果的には商売に結びついている。

きっかけは中高年の顧客を集めたスキー教室

古書店街で知られる千代田区神保町から小川町にかけての通りには、数多くのウインタースポーツ店が並んでいる。スキープロショップのオオイワスポーツは、1970年にこの地で創業した。同社の創業者でベアーズかぐらスキースクールを経営する、BASCの最高顧問を務める大岩紘さんは当時を振り返る。

「クラブがスタートしたのは98年で、そのころはスキー人口が約1200万人、スキー板は年間約240万台も売れていました。ちなみに今の販売台数は24万〜28万台です」

クラブの発足は、太平洋戦争前から戦時中にかけて国の政策として出産が奨励された37〜43年ごろに生まれた人たちが60歳前後となり、定年退職を迎える時期と重なっていた。また、カービングスキーという、初心者でも曲がりやすいスキー板が出てきたころで、中高年スキーヤーが増加していた。

「当時は、そろそろ定年だからスキーを始めてみようかという人が増えていました。96年にNHKで『中高年のスキー術』という番組が放映され、そのテキストに、うちが中高年向けに開発したオリジナルのスキー板の広告を出したんです。それを見て店に買いにいらしたお客さんたちにお声掛けして、当時、千葉県習志野市にあった屋内スキー場にお連れして、夏の間にスキー教室を開催するということを2年ほど続けていきました」

そうしていくうちに、参加したメンバーたちの間でスキークラブをつくろうとなり、98年9月に会員27人でBASCが誕生した。そのクラブ名は「Beautiful Ambitious Ski Club」の略である。

競い合うことなく健康や喜びのために参加する

「当初は、中高年の会だから温泉に入ってゆっくりするようなイメージで始めましたが、それは間違いでした。スキークラブである以上、参加しているメンバーたちをスキーに夢中にさせなければいけないことに気付き、そういう方向にもっていきました。スキーを教える講師にも、有名な選手やインストラクターを招きました。やはり皆さん、そういった人たちから教わりたい。ですので、スキーが上手なクラブ員が教えるといったことはしませんでした」

昼間は夢中になってスキーをすると、夜はリラックスしたい。宴会でカラオケで歌ったり踊ったりと大いに盛り上がるが、夜10時にはぴたりと終わらせるという。「皆さん中高年ですから、そうしないと体に無理がかかり、健康に良くありません。また、行事に参加する数日前は睡眠時間をちゃんと取るようにと注意事項にも書いています。それが長続きしている秘訣の一つだと思います」

大岩さんによると、長続きしているもう一つの秘訣は、クラブのモットーである「無理しない、競わない、頑張らない」だという。

「競わないことで会員同士がライバルにならない。だから、皆さんがやめることなく今まで続いているのです。また、スキーはスポーツだという発想でない方がいい。大自然の中で自分の好きなように滑るのは、スポーツというより健康や喜びのためで、自然の雄大さを感じながらやるのがスキーなんです。そして、スキーが上達する喜びは生きがいにもなる。そこに出てくるのが笑顔で、笑顔が絶えない組織でないと長続きしませんし、健康に役立ちません。シニア層に一番大事なのは笑顔で、笑顔が最高の健康の秘訣ですから」

感動と生きる意欲をつくり出す源を提供する

笑顔だけでなく、スキーが健康に役立つという医学的な理論もあると大岩さんは言う。登山家の三浦雄一郎氏の息子で、プロスキーヤーであり医学博士でもある三浦豪太氏によると、スキーのターンのように骨に長い時間負担を掛ける運動には、体がカルシウムを吸収して骨が強くなる効果がある。紫外線を浴びることで体内のコレステロールがビタミンDに変化して、身体能力が上がるのだという。

「BASCはお客さんに満足していただくことだけを考えてやっています。うちはスキー用品を販売していますが、単なる物売り屋にはなりたくない。お客さんに喜びや感動、生きる意欲をつくり出す源を提供したいと考えています。スキーによる『生きがい』に健康や安心、満足を加えたものが店の高付加価値となり、結果的に商売につながるのです」

同社では、スキー用品以外にヘルスケアやフットケア用品も取り扱っている。履いて歩くことで姿勢が正しくなり、足腰が鍛えられて健康になるシューズや、血流を良くして体力の回復を助ける繊維を使ったウエアなども販売している。

「健康は与えられるものではなく、自らつくっていくものです。何かに頼るのではなく、運動や生活の中で使うことで体が鍛えられ、健康が維持できるグッズのみを販売しています。また、お客さんにしっかり説明して納得してもらうため、すべて対面販売です。うちの店が売っているのは安心と満足です。それが商売をこれまで続けてこられた一番大きな理由ですね」

物を売って終わりではなく、スキー活動を通じて健康になる喜びを提供することで顧客とつながり続けていく。これも健康長寿ビジネスには欠かせない要素といえる。

会社データ

社名:株式会社オオイワスポーツ

所在地:東京都千代田区神田小川町2-2サンブリヂ小川町ビル1F

電話:03-3294-3474

HP:http://www.oiwa-sports.jp

代表者:大岩紘 代表取締役会長

従業員:8人

社名:株式会社ベアーズかぐらスキースクール

所在地:サンブリヂ小川町ビルB1F

電話:03-3518-9190

HP:http://www.kagura-ss.jp/

代表者:大岩紘 代表取締役社長

従業員:40人

※月刊石垣2019年2月号に掲載された記事です。

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