今号は、新たな商材の取り扱いで事業機会を広げている事例をご紹介します。
企画力・対応力を発揮し他分野を模索
東京都新宿区に「そら」という印刷会社があります。創業は平成16年、社名の由来はラテン語の太陽(sol)にαをプラスしたもの。明るい社風の中で付加価値を提案できる企業に、との意がありました。社長の牧隆夫さんが最も意識したのは、自社の強みである「企画力」や「対応力」の発揮でした。当初から印刷の機械設備は導入せず、協力関係にある印刷業とのネットワークを生かし、顧客のニーズを先読みして小回りを利かせることに注力したのです。大手印刷会社とも直接に取引口座を持てるなど、順調な滑り出しでした。
しかし、一方で企画力・対応力などは目に見えにくく、印刷業界の〝安売り競争〟に巻き込まれることを懸念していました。牧社長は〝下請け色〟を薄めようと、ソフトウェア開発など他分野への進出を試みるも、自社の強みを生かせず撤退を強いられました。不慣れな新分野では存在価値は発揮できないと反省、「餅は餅屋」ならぬ〝紙は紙屋〟として、本来の紙の分野で新展開を図ろうとしました。
新たな商材との出合いが本業の呼び水に
きっかけは香港で行われた展示会でした。出展したドイツのメーカーのおしゃれな紙製小箱を見て、これを日本に導入しようと決断します。商社を経由すると割高になるため、メーカーと直接交渉して直輸入を開始しました。
当初は宝飾品メーカーなどを客先として想定していた牧社長。しかし、始めてみれば、タオルメーカーが安産のお守りとして高級タオルセットの飾り箱にしたり、食品メーカーが宝石箱に見立てて使用するなど、当初の想定を超えた用途での引き合いが中心でした。いずれも、この紙製小箱に意外性、ユニークさを意識した「販売促進のツール」としての価値を見いだしたのです。牧社長は「お客さまは、独自の使い方をわれわれ以上に考えていた」と振り返ります。
この商材は、都内のギフトショーなどに出展して営業活動を行っています。箱そのものを展示する出展者は少ないため、逆に存在が目立つと言います。この箱が〝呼び水〟となって自社に興味を持ってもらい、本業である印刷の商談に結びつくことも多く、相乗効果が発揮されています。
既存事業にとどまることなく、新たな商材の可能性に着目し、顧客との接触機会を増やすことで、本業のビジネスチャンスが広げられることを教えてくれる事例です。
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