お金とマネーは違います。分かりやすくいえば、生活のために使うのがお金。株など投資するために使うのがマネーです。例えば、ソフトバンクグループ会長の孫正義さんが1兆円のお金を持っていたとします。生活のために使うのはせいぜい3億円から5億円。それだけあれば一生楽に暮らせるわけです。あとの9997億円から9995億円は? それがマネーです。それは生活に直結したものに使うのではなく、投資や、企業買収するなど、生活以外の目的に使うものです。
そもそも資本主義というのは自分の持っているお金をいかに増やすか、という行為。いわばゲームです。ところが今や、企業が企業を買収するようになり、資本主義のお金はマネーに変わりました。余裕のある人がマネーで株を買うならまだしも、お金に窮している人が一獲千金を夢見て、お金をお金として株や先物取引に手を出し、失敗したら結果は悲惨です。
具体例を挙げましょう。島根県の中ほどに位置する大田市。隣接する出雲市とともに県中部の中心地域ですが、今から20年ほど前に大手ショッピングセンターが進出。当然、地元の商店街は反対しましたが、ほどなく開業しました。便利さから近隣の人々は足を運ぶようになり、商店街は衰退しました。かつては大田で商売しもうけた人が、大田で生活しお金を使う仕組みでお金は回っていました。ところが、大手ショッピングセンターが利益を上げるようになると、お金はその本社に流れます。お金が本社に入った瞬間にマネーに変わり、地方のお金は回らなくなってしまったのです。
もう一例。東京・銀座を1丁目から8丁目まで南北に走る大通り、かつて電通通りとも呼ばれた通りを、ソニービルあたりから新橋あたりまで歩いてみて、街がすっかり変わっていたことに気が付きました。40年ほど前、通りには家族経営の理髪店もあれば喫茶店もありましたが、今やそれらの店は1軒もなく、代わりにコンビニやカフェ、牛丼屋など、大手のチェーン店が支配しているのです。銀座はお金がマネーに変わる場所へと変貌してしまったことを、街並みから感じとりました。
今の世の中、お金とマネーは全く別の働きをするようになりました。資本主義の仕組みが変わってしまったわけです。「お金とマネーは別物」。その事実を、肝に銘じなければなりません。
コロナ危機で実体経済は悪化が確実視され、100年に一度の大不況が叫ばれている中、米国をはじめとする株価の急回復はIMFも警戒しております。
「素人が手を出すな!」とは言いませんが、大切なお金をマネーとして失うことのないように気を付けてください。
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担当:髙橋
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