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第120回通常会員総会 三村会頭あいさつ

総会であいさつする三村会頭

本日は、日本商工会議所第120回通常会員総会を、安倍内閣総理大臣、小渕経済産業大臣をはじめ各政党のご来賓の皆さま、また、全国各地の商工会議所から、多数の皆さまにご出席いただき、盛大に開催することができ、誠にありがとうございます。

まずもって、広島、福知山、津をはじめ、各地で発生した台風および豪雨災害に見舞われた、被災者ならびに被災地の皆さま方に、心からお見舞い申しあげます。

昨年11月の就任以来、被災地も含めた各地の商工会議所、女性会、青年部、会員各企業など、多くの関係者と意見を交換し、数多くの課題について議論を重ねてきました。こうした活動を通じ、私としては、以下の3点が、商工会議所の今後の大きな課題であると考えております。

その第一は、アベノミクスは、需要創出策として需給ギャップを縮減するなど、その成果は大きく、高く評価すべきですが、地方および中小企業はまだその効果を十分享受できていないことです。また、消費者も企業経営者も依然としてデフレマインドを脱却しきれておらず、適正な価格転嫁や設備能力増強投資など、経済の好循環を生むサイクルに至っていません。

二つ目は地方創生への取り組みです。全体の人口減少に加え、都市部への人口流出という二重の人口減少に直面する地方の創生は、待ったなしの危機的状況にあります。そして、この地方創生という極めて困難な課題を解決するために、商工会議所は非常に大きな役割を担うべきということです。

三つ目の課題は、震災復興の加速化と福島再生です。被災地では、中小企業をはじめ事業の再開はこれからというところも多く、本格復興への歩みを加速させることが必要であります。また、福島においては、除染や汚染水問題を早期に解決し、企業立地の促進や風評被害対策を強化することが不可欠であります。

地方創生へ人口減少対策を急げ

まず一つ目の課題についてですが、行き過ぎた円高の是正はアベノミクスの大きな成果のひとつですが、円安により恩恵を受けるのは輸出比率の高い大企業が中心であり、内需依存型の中小企業は、円安が過度に進むことは、むしろエネルギーなどの仕入コストが上昇し、収益にはマイナスとなってしまいます。

さらに、需給ギャップは改善されつつあるものの、依然として家計も企業もデフレマインドから脱却できておらず、コストアップの価格転嫁が進んでおりません。また、設備投資も大企業を中心に計画ベースの総額が増加するなど、持ち直しの傾向が見られていますが、老朽更新が中心で、残念ながら、新たな需要増を見込んだ本格的な能力増強投資増には至っていません。

このようにデフレマインドが解消されていないことに加え、中小企業は、大企業との力関係もあり、仕入コスト、消費税増税や労務費アップを適正に価格に転嫁できず、非常に厳しい経営を強いられている会社が数多くあります。

直近の商工会議所の調査では、エネルギーコストは90%以上、原材料費は80%以上、人件費については約95%の事業者が一部のみまたは全く転嫁できていないとの結果となっています。

また消費税については、大々的なキャンペーンを実施した結果、全て転嫁できた企業が60%に達するなど、全体としては円滑に行われたと評価できるものの、小規模企業などでは転嫁が困難な状況であり、引き続き注視が必要です。

消費税の10%への引き上げについては、こうした経済情勢や転嫁の実態をきめ細かく検証することが不可欠です。他方、社会保障と税の一体改革の本質的な目的や国際的な信認の観点を十分踏まえ、環境を整備していくことも強く求められます。

二つ目の地方創生についてですが、人口問題と表裏一体の課題であります。

内閣府の調査によりますと、地域の経済活性化と人口増とは相関関係があり、出生率が高く、若者の多い地域は、生産・支出・所得の指数が高く、持続的な地域経済を形成できる傾向にあります。

私は、経済財政諮問会議のもとに設置された「選択する未来」委員会の委員長を務めており、50年後に1億人程度の安定した人口構造を保持することを、政府の目標として明確に掲げ、その実現に向けた施策を総動員することを提言しました。

政府において、先日、公表された政府の「骨太の方針」に、1億人を国家目標とすること、少子化社会対策の大綱を策定することが盛り込まれました。また、対策の司令塔となる本部(まち・ひと・しごと創生本部)の設置も決まりました。いずれも大きな前進として評価したいと思います。

この難題を解決するためには、何よりも若者が地方で職を得、安心して結婚し、希望どおりに子どもを産み育てられる環境をつくることが柱となります。政府や民間企業だけでなく、自治体の首長、地域住民ともに危機意識を共有して、関係者の知恵と工夫を総動員し、効果的な政策や対策を早急に具体化し、実行することが求められています。

三つ目の震災復興ですが、被災地の現地視察や被災地商工会議所との意見交換会などを通じて、現地では、特区制度や復興交付金、グループ補助金などさまざまな支援措置により、被災企業が徐々に事業再開を果たしている一方で、観光業などをはじめ風評被害による著しい売上減少や、喪失した販路の回復など、地域産業の再生に多くの課題が存在していることをあらためて実感いたしました。本格的な復興に向けては、まだまだ取り組みを根気よく継続していくことが求められています。

外形課税導入には全面的に反対

続いて、各課題の解決に向け、商工会議所が果たすべき取り組みについてご説明します。

一つ目の中小企業の課題についてですが、各中小企業が自助努力で克服するのがもちろん原則ではありますが、個社の努力ではいかんともしがたい構造的な問題については、商工会議所が意見を取りまとめ、政府などに提言し、政策に反映させることが必要です。

そのひとつは、エネルギー問題です。全原発が停止していることに加え、円安の進展によりわが国は、先進国で最もエネルギーコストが高い構造になっています。エネルギーコストを価格転嫁することが困難な中小企業の中には、廃業を選択せざる得ない会社も増加しています。2011年暦年と比較し、エネルギーコストの上昇した2013年暦年では、廃業企業数が3千社以上増え、約2万9千社となっています。

安全基準をクリアした原発の再稼働は待ったなしの喫緊の課題となっていますので、商工会議所として強くその実現を求めてまいります。

もうひとつは税制に関する課題です。先進国において米国に次いで法人実効税率の高いわが国において、国際的イコールフッティングの観点から、法人税減税は議論の余地なく早急に実施すべきであります。

ただし、その財源として外形標準課税を一律に適用することには反対であります。中小企業は、平均売上高利益率が2・0%、平均損益分岐点比率が90・1%と極めて収益率の低い経営を余儀なくされおり、否応なく黒字・赤字を行き来している会社も多数あります。そうした実態にもかかわらず、収益とは関係なく付加価値額に一律課税することは、多くの中小企業にとって経営が成り立たなくなることを強要することになります。

中小企業は、付加価値額のうち約8割が人件費という実態を踏まえますと、中小企業に対する外形標準課税の適用は労務費に対してさらに課税することにつながり、政府が全力で各企業に賃上げを要請していることとも矛盾するものであります。

また、地方においては中小企業が雇用の柱となっていますが、労務費に課税されることになれば、中小企業は雇用を抑制せざるを得なくなり、地域の疲弊に直結します。外形標準課税の導入は、現在の政策の柱となっている地方創生にも逆行することになるのです。

商工会議所としては、こうした中小企業経営の構造上の実態を明確に示した上で、外形標準課税の一律適用は中小企業にとってマイナスとなるだけはなく、日本の産業構造の土台を支える中小企業の存立、さらには地方経済に深刻な影響を及ぼし、わが国経済の成長に多大なマイナスを招くことになる、従って全面的に反対である旨をしっかりと主張してまいります。

また、経済連携による貿易・投資ルールの整備は、中小企業にとっても、競争力強化につながる重要な課題です。TPP交渉の早期妥結はもとより、日EU・EPA、日中韓FTA、RCEPの進展を強力に働きかけてまいります。

二つ目の地方創生についてですが、地方も自らの努力によって自律的に再生を図ることが基本であります。ただし、孤軍奮闘せよということでは決してありません。一地方では乗り越えられないボトルネックや組成困難なプラットフォームに関して、さまざまな関係者や近隣地域などと連携することで解決を図れるはずです。

まさに、商工会議所がリーダーシップを発揮することで、各地の広域連携を実現し、地方の持つ資源・強みを「点」ではなく「面」としてストーリー化し発信することで、活力に結び付けていけます。

地方の持つ重要な資源のひとつは農林水産業です。既に地域の農協が商工会議所の会員企業となり、さらには商工会議所内に農業部会を設置し、農業との具体的な産業連携を実現し、大きな成果を上げている例があります。

例えば、和歌山商工会議所では、JA和歌山と特産品の新ショウガの商品開発・販売促進で連携し、新感覚のジンジャーエールとして売り出したところ、全日空の機上飲み物サービスに採用されました。また、秋田では、「JA新あきた」が、農政改革やTPPを見据え、今年度から商工会議所に入会し、えだまめの販路拡大プロジェクトなど、農産物の販路拡大で商工業者との連携強化を実現しています。

各地の農林水産業関係者もこうした好事例を是非実現したいと望んでいるはずですから、従来の枠組みにとらわれることなく、是非、地域のさまざまな関係者との連携を推進してください。

また観光は地方の持つ大きな強みであり、地域活性化の目玉ですが、観光についても、商工会議所がリーダーとなって、各地の魅力を、行政区域を越えてうまく連結させ、大きなストーリーとして魅力を倍増させることで、観光戦略として成功している事例があります。

例えば、山口、防府、萩の3商工会議所では、各行政、観光協会などとも連携し、各市を縦断する約53キロの「萩往還」ガイドブックを作成、モニターツアーなどを行うことで、歴史街道を活かした広域連携観光を実現しています。

観光は一カ所で頑張るより、複数カ所が、トライアングルのように連携して企画立案・PRした方が、観光客の誘致には圧倒的に効果がありますので、ネットワークの強化が何より大事です。

日本商工会議所では、今後3年間で全国514商工会議所が観光振興に取り組んでいくための行動指針を決議いたしました。本指針において、商工会議所が行政区域を越えた連携の促進に主体的に取り組めるよう、「商工会議所観光ネットワーク」として、すべての商工会議所に観光委員会などの組織または観光担当者を配置することとしました。各地においてその配置が完了したとのことですので、本ネットワークを活用した観光広域連携の推進を是非よろしくお願いいたします。

さらに、地域に根差した小規模企業の下支えも商工会議所の重要な役割であります。本年6月に、小規模企業の振興を図る法律が整備されましたが、これを機に、商工会議所は、地域における小規模事業者支援の中核拠点として、さらに取り組みを強化してまいります。

最後に、震災復興の加速化についてですが、全国514商工会議所の絆をもとに、各地の会員企業から被災企業に工作機械を無償で提供する「遊休機械無償マッチング支援プロジェクト」や「販路開拓」などの活動を精力的に継続するとともに、一日も早い本格復興に向けて、現地が必要としている施策を丁寧に取りまとめ、政府などへ提言してまいります。

キーワードは人と資源の広域連携

このように、現下のわが国が抱える大きな課題に関し、われわれ商工会議所が果たすべき役割は極めて大きいものがあります。今一度、その責任の重さを再認識するとともに、514商工会議所のネットワーク力など自らの持つ力に自信を持ち、「人と資源の広域連携」をひとつのキーワードとして、地域におけるリーダーシップをいかんなく発揮してください。

また、経済成長の原動力である民間企業は、デフレマインドの殻を率先して打ち破り、積極的に需要を捕捉し、貯蓄主体ではなく本来の投資主体として、利潤を適正に投資に回し、さらなる需要を喚起させ、利潤の拡大、賃金上昇につなげていく好循環を生み出していかなければなりません。

私も率先して、頑張ってまいりますので、力を合わせてまいりましょう。皆さまの多大なるご支援、ご協力をお願いして、私のあいさつといたします。

(9月18日)