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事例2 業者のデータ化と料金の透明化で産業廃棄物のリサイクルを推進する

ワイルドディープ(東京都足立区)

ワイルドディープは、廃棄物処理に関する情報やサービスを提供している。同社が運営する廃棄物処理の情報サイト「リサイクル・ハブ」は、廃棄物の排出企業と廃棄物の回収・処理を行う業者との最適な取引のマッチングを行っている。全国の廃棄物処理・リサイクル業者の情報を簡単に検索することができ、見積もり比較から発注・処理まで、一連の廃棄物取引にワンストップで対応している。

「リサイクル・ハブ」のサイトでは、簡単に全国の産廃業者を検索できる。また、廃棄物やリサイクルに関するコラムなども掲載し、サイトを訪れる人に価値ある情報を提供している

12歳の少女によるスピーチに感動してリサイクルの道へ

「産廃業者は全国に10万社近くあり、企業から家族経営のところまで規模も処理能力レベルもさまざまです。しかし、そういった産廃業者の情報が少ないため、ゴミを出す企業側にとってどの業者がいいのかが分かりにくい。数年前に飲食チェーンが廃棄カツを産廃業者により不正転売される事件が起こりましたが、あれはその産廃業者のことをよく知らなかったことが原因です」と、ワイルドディープ社長の荒深正博さんは言う。

そこで同社では、廃棄物の処理を依頼したい企業に代わって、廃棄物の種類や内容に対して適切な産廃業者をマッチングするサービスを提供している。その特徴は、デジタルで情報を分析し、スピーディーに対応していること。そのプラットフォームとなっているのが「リサイクル・ハブ」である。

荒深さんは大学卒業後にシステムエンジニアとして就職し、その後は外資系コンサルティング会社で廃棄物処理業を含むさまざまな業種の経営コンサルティングに携わってきた。その経験を生かし、2015年7月にワイルドディープを創業した。

「私がリサイクルに注目するようになったのは、社会人3年目のときに、セヴァン・スズキさんという12歳の少女が地球環境サミットで行ったスピーチをビデオで見たことからです。『どうやって直すのか分からないものを、壊し続けるのはもうやめてください』という言葉に衝撃を受け、ゴミを資源として循環させる必要があると思いました。それと同時に、これはビジネスになると考えたんです。そこで、仕事をしながらリサイクルビジネスの研究を進め、その事業プランが国から創業促進補助事業に採択されたので、その補助金を活用して創業しました」

産廃業者の情報数を増やしリサイクル処理方法も明確に

会社を立ち上げると、「リサイクル・ハブ」のウェブサイトを構築しながら、掲載する産廃業者の情報を集めていき、翌年3月からサービスをスタートした。

「サイトの売りは全国の廃棄物処理・リサイクル業者の情報をデータベース化していることで、検索は廃棄物の種類と地域に合わせて検索できるようにしました」と、自信を持って始めたが、1年目はアクセス数も注文もほとんどなかった。そこで、データベース化する産廃業者数を拡充していき、開始当初は3千社だった業者情報を1万社にまで増やす。各業者が行っているリサイクル処理も、サーマル(焼却処理の際の熱エネルギーを回収・利用)、ケミカル(化学的に処理して化学原料として再利用)、マテリアル(廃棄物そのものを素材として再利用)に分類し、廃棄物がどのようにリサイクルされるかが分かるようにした。

「また、知名度を上げるために業界紙に連絡して、こういう新しいコンセプトでやっているので、記事にしてくださいとお願いしていきました。すると、サイトのアクセス数が少しずつアップしていき、それに比例して問い合わせや見積もりの相談件数も増えていきました。それ以外にも、ツテを頼って企業を訪問し、少しずつ案件を獲得していきました。軌道に乗ってきたのは2年目後半からでした」

初年度は数百万円の赤字で、従業員2人の給料を払い続けるのにも苦労したが、その後は右肩上がりで収益を上げていった。

国内の再資源化処理を増やしSDGsの達成に貢献する

現在ワイルドディープが提供しているサービスは、単なるリサイクル業者のマッチングにとどまらず、回収の手配から産廃マニフェストの管理代行、さらには廃棄物処理場の現地確認にまで及んでいる。これらの専門的サービスの対価を、処理費用とは分けて廃棄する企業に請求する形を取っており、産廃業者から手数料などは徴収していない。これが同社の料金システムの特徴ともなっている。

「その理由は、産廃業者による不法投棄・不適正処理を無くすためです。実際、産廃業者に処理費用を下げさせて、排出企業側にはその額を見せずにマージンをかなり上乗せして請求する仲介会社もあります。そうすると、産廃業者側は自社の利益を確保するためになるべくコストをかけずに処理しようとします。それが不法投棄や不適正処理の原因につながるのです。そして、もう一つの理由が透明性の確保です。産廃業界は元来グレーと思われている業界ですので、料金体系もできる限りガラス張りにして、正々堂々と私たちのサービスの価値を認めてもらおうという思いがあります。ですので産廃業者には適正な処理費用を請求してもらい、私たちは排出側の企業に対して、安全・安心・便利な廃棄物対応サービスを低廉な価格で提供することにしたのです」

創業当時からのビジョンである、ゴミを再資源化するリサイクルにはこれからもこだわっていくという荒深さんだが、数年前から状況が大きく変化したという。

「中国の環境規制により、廃プラスチックを中国に輸出して再生資源化することができなくなり、国内での焼却処分が増えています。そのため今後は、産廃処理やリサイクルの業者に対して、海外の新しいリサイクル技術や設備を提案していきます。それにより国内でのリサイクル処理を増やし、国内循環による廃棄物の再資源化に貢献していきたいと思っています」

国連が掲げたSDGs(持続可能な開発目標)に「2030年までに予防、削減、リサイクル、再利用により廃棄物の排出量を大幅に削減する」という項目がある。ここに力を入れていく企業が増えると見込まれており、リサイクル業務は今後、その必要性を増してくる。ワイルドディープはそれに貢献していくことを目指している。

会社データ

社名:ワイルドディープ株式会社

所在地:東京都足立区千住1-4-1 東京芸術センター11F

電話:03-6457-1653

HP:http://www.wilddeep.co.jp/

代表者:荒深 正博 代表取締役

従業員:4人(パート含む)

※月刊石垣2021年2月号に掲載された記事です。

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