インドネシアで今年7月にジャカルタとバンドン間(142㎞)を結ぶ中国主導の高速鉄道が開通する予定となった。当初より5年遅れの完成だが、東南アジアでは初の時速250㎞超の高速鉄道となる。これに先行し、中国主導で建設された雲南省昆明とラオスの首都 ビエンチャンを結ぶ全長1035㎞の準高速鉄道が2021年12月に営業運転を開始している。
こうした中、日本を驚かせたのはベトナムが今年1月に日本政府にハノイ―ホーチミン間の高速鉄道整備への協力を要請したことだ。この計画は07年に日本へ発注する政府方針が決まったものの、建設費用が巨額だったため、国会で否決され、立ち消えになっていたからだ。それは、ベトナム経済は22年の実質成長率が8.02%に達するなど高成長期に入り、高速鉄道の建設コストを負担できる力がついてきただけでなく、高い運賃を払っても短時間で楽に移動したいというビジネスマンなどが増えつつあることを示している。
ハノイ―ホーチミンの二大都市間は1560㎞と仙台から東京を経由して博多まで新幹線を乗った距離(1526㎞)に匹敵する。本来なら航空機が優位な距離とされるが、ハノイは空港が市内中心部から遠い上、二大都市間にはダナンやハティン、フエ、ニャチャンなど乗降客が見込める都市が多数ある。条件的には日本の東海道・山陽新幹線に近い。計画では30年までにハノイとゲアン省のヴィンの区間とホーチミンからニャチャンまでの区間を完成させ、その後、ヴィン―ダナン間、ダナン―ニャチャン間を完成させ、全通させるという。日本の新幹線も東京―博多は1975年、上野―盛岡が85年、東京―新青森が2010年など段階的に完成したことを考えれば、ベトナム高速鉄道は現実的なプランといえる。
東南アジア各国でもう一つの課題である都市交通でも、ベトナムはハノイの高架鉄道が21年11月に運転を開始、日本主導のホーチミンの地下鉄も2024年には開通する予定。中国企業が請け負ったハノイの高架鉄道は順調に運転されており、路線網が拡充されればバイクと自動車が混ざり合う道路渋滞の緩和につながる可能性もある。高架鉄道の駅や車両は近代的で、民家や商店が線路まで迫り、低速のベトナム国鉄とは大きな違いといえる。こうした公共交通インフラの整備が一気に進み始めるときが国民の消費が一気にジャンプするときであり、日本の中小企業にもビジネスチャンスが開けてくるといっていい。
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