今年8月、東京に中国のカフェチェーン「COTTI COFFEE(庫迪咖啡)」が日本1号店をオープンした。日本では聞き慣れない店名だが、1年足らずで中国に5000店を展開したという驚異的なチェーンだ。設立したのは、「luckin coffee(瑞幸咖啡)」の創業者である陸正耀氏と銭治亜氏。luckin coffeeは2017年に創業し、たった2年でナスダック上場を果たしながら、粉飾決算で信用が失墜した。しかし経営陣が変わり、勢いを取り戻して中国で6000店を展開し、スターバックスの店舗数を抜いた。COTTI COFFEEも急成長し、日本、韓国、インドネシアなどへの展開を始めた。
12月には、タイで3000店を展開する「Café Amazon」も、千葉県の商業施設内に常設店として日本初出店する。同チェーンはタイ石油公社(PTT)がガソリンスタンド併設カフェとして始め、バンコクなどの繁華街やショッピングモールに出店してきた。アマゾン川に着想を得たといわれる、多数の植栽を配した独特の店内が人気を博している。
ベトナムのホーチミン、ハノイなどでは、地場のカフェチェーン「PHUC LONG(フックロン)」や「HIGHLANDS COFFEE」がスタバ以上に目立つ。台湾では、タピオカミルクティー発祥の店とされる「春水堂(チュンスイタン)」や「貢茶(ゴンチャ)」などティーチェーンが充実し、両者とも日本で店舗展開している。 もともとコーヒー文化のなかったアジアで地場のカフェチェーンが急成長する背景に、ベトナム、中国、ラオスなどでのコーヒー豆栽培の拡大がある。世界のコーヒー生産量(21年、国際連合食糧農業機関による統計)では、トップのブラジルに続いてベトナムが2位、インドネシアが3位。さらにインドが9位、ラオス13位、中国15位などアジア各国が力を入れている。地産の商業作物を消費拡大しようという戦略が、各国のカフェチェーン急成長を後押しする。
加えて、COTTI COFFEEの主力商品であるココナッツラテや春水堂のタピオカティーなど東南アジアの産品を積極的に活用し、特色を出そうという戦略もある。PHUC LONGは人気商品のハーブティーに使うさまざまなハーブを自社農場で生産し、品質面での差別化を図っている。 地場のチェーンが急成長する底流には、アジアの消費行動の変化がある。コーヒー1杯への支出額、注文される飲料の種類などには、新事業へのヒントが隠れている。
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