〝体が硬い〟というのは、体の柔軟性が乏しい状態をいいます。柔軟性は筋肉や腱が伸びる能力のことで、関節の動かしやすさと関節可動域(関節の動く範囲)で決まります。
体の硬さを客観的に測る方法として立位体前屈が知られています。お尻、太ももの裏側、ふくらはぎの柔軟性を見るものですが、最近では頭部を下げた状態で測定を行うと血管系疾患がある人にリスクがあることから、座った状態で測る長座体前屈がよく用いられています。長座体前屈の結果を見ると、体の柔軟性は男子17歳、女子19歳でピークを迎え、その後は徐々に低下する傾向があります。加齢とともに体が硬くなっていくのは、筋肉繊維の柔らかさが乏しくなるためです。さらに関節を動かす力も弱くなるので、可動域も狭くなって体が硬くなります。
これを放置すると思わぬ不調を招く場合があります。しなやかな動きができなくなるので、柔軟性があった頃と同じ動作をしても、体の1カ所に負担が掛かってしまい、けがをする、腰痛が出現する、肩凝りや膝痛など慢性的な痛みが治らないといった問題が起こってきます。また、動かしにくい体を動かすのに多くの力を使うため、疲れやすくなるのです。動作にしなやかさが乏しいと老けて見えたり、一説には太りやすくなったりするともいわれています。さらに危惧されるのは動脈硬化との関連性です。体の柔軟性が失われると体内の血管が適度に伸ばされる機会が減るので、血管の柔軟性も保ちにくくなります。それが動脈硬化の進行に影響を及ぼす可能性があると考えられます。
柔軟性を保つためには、体を心地よく伸ばす習慣が大切です。例えば、ラジオ体操の動作を一つずつきちんと行うと、体を各方向にまんべんなく伸ばせます。ストレッチも効果的で、テレビを見ながら床の上で開脚して股関節を伸ばしたり、肩甲骨を動かすイメージで腕を大きく回したりするのも気持ちいいものです。これらを日々のルーティンとして定着させると、関節の可動域が徐々に広がり、しなやかで若々しい体を維持していけるでしょう。
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