2022年2月にロシアがウクライナに侵攻し、23年10月にはガザ地区を舞台にパレスチナ対イスラエルの衝突が再燃した。あまり物騒な予想は語りたくないが、今年はアジアの番かもしれない。というのは、ロシアのウクライナ侵攻とガザ地区での衝突は巨視的、歴史的に見れば、共通した二つの要因があるからだ。
一つは「冷戦後」秩序の動揺であり、もう一つは中国|ロシア|イラン枢軸による米国主導の世界への挑戦である。1991年12月のソ連崩壊によって、世界は米ソ冷戦後の時代に入り、社会主義陣営は縮小した。そして米国主導でヒト・モノ・カネが自由に世界を動き回る、グローバリゼーションがやって来た。その最大の受益者は中国である。「改革開放」政策を推進し、世界第2位の経済大国になった。ロシアとイランは石油、天然ガスの資源をベースとして今世紀に入って、着実に国力を回復した。
いずれも強権的な統治体制の中国、ロシア、イランがモノづくりや資源などリアルな力を蓄えたのに対し、米国、欧州、日本などは工場を途上国に移転し、金融とIT、デジタルといったバーチャルなフィールドで利益を追い、生産力などリアルな国力を低下させた。プーチン大統領も習近平主席もその隙を見逃さず、米国主導の「冷戦後」秩序の修正を今、求めているというわけだ。 「ウクライナはロシアの一部」と主張するプーチン大統領は、対立と混乱の「冷戦」時代への郷愁を持っていると思われる。73年の第4次中東戦争の開戦記念日と同時期にミサイル攻撃を始めた、イスラム組織ハマスも同様だろう。中国、イランはプーチン政権に協力することで「冷戦後」秩序の修正、米国の影響力低下と、自国に有利なグローバル環境づくりを狙っている。
アジアには「冷戦」時代が“冷凍保存”された場所がある。それは朝鮮半島である。50年6月25日に北朝鮮は、ソ連と中国の同意と支援を受けて38度線を越え、韓国に侵攻した。3年続いた朝鮮戦争は、今も38度線を挟んで休戦状態である。
昨年末から、金正恩朝鮮労働党総書記が「韓国は主敵」「同じ民族でも統一の対象でもない」などと主張し始めている。ロシアとの蜜月が金総書記を強気にさせているとすれば、朝鮮半島の現状を“解凍”する動きが出てくる可能性もある。今年は東アジアの状況をしっかり見ておくべき年になりそうだ。
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