毎年1月初旬に開催される「松本あめ市」。江戸時代前期から続くといわれ、ふく飴や市内各店の名物あめ、縁起物などを販売するだけでなく、時代行列なども行われ、松本の新春の一大イベントとして大変なにぎわいを見せる。松本は昔からあめづくりが盛んで、明治時代にはあめの生産高が日本一だったという。城下町・松本は“あめのまち”でもあるのだ。
市内には江戸時代創業のあめ屋が数軒、店を構えるが、思わずうなってしまったのが飯田屋の「あめせんべい」だ。見た目はその名の通り、薄いせんべいかウエハースだが、れっきとしたあめである。かむとパリッと音を立てる食感は小気味よく、口に入れるとすぐに溶けて、舌の上に爽やかで上質な甘味を残す。少し物足りないようだが、うま味は強く印象に残る。断面を見ると、筒状の管が幾重にも重なり合っている。管の大きさが不揃いなのは手づくりの証拠。これがおいしさの秘密の一つなのだ。
つくるときは、熱いうちに手でしっかりこねて長く延ばしたあめを、2人の職人があうんの呼吸で手早く交互に切って細工を施す。すると琥珀色のあめが見る見る絹糸のように白く輝き、薄く板状になるという。
〝あめ道〟の素晴らしさに乾杯!
Data
社名:有限会社飯田屋製菓(いいだやせいか)
所在地:長野県松本市大手2-4-2
電話:0263-32-1983
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