まるで本物の“恐竜メカニカルスーツ”を独自開発し、それを利用した恐竜ライブショー「DINO-A-LIVE」をプロデュースしているオンアート。高い造形技術により誕生した“歩き回る恐竜”たちが繰り広げるショーは迫力に満ち、驚きと感動、学びや発見を与えて、多くの来場者を魅了している。同社が恐竜を通じて伝えたいメッセージとは―。
博物館の展示から着想を得た“動く恐竜”
恐竜たちが行き交う夜のサファリを舞台にガイドとともに巡ったり、恐竜がこの世に誕生した時代を旅したり、その生きざまを間近で体験したり―。これらはオンアートがプロデュースする「DINO-A-LIVE」の内容の一部だ。至近距離から見ても本物と錯覚するほどリアルな恐竜たちが、生き生きと動く様子は迫力満点。ショーの台本や演出、BGMに至るまで、全て同社が手掛けている。
「『DINO-A-LIVE』は、生き物による生き物のための物語です。この恐竜体験が時間や空間を超えてイマジネーションをかき立て、身近な自然や生き物に興味を持つきっかけになれば、という思いでつくっています」と社長の金丸賀也(かねまるかずや)さんは語る。
同社は、ともに東京藝術大学出身の金丸さんと副社長の小塚明美さんが設立し、博物館の展示やジオラマ、壁画などの製作を手掛ける会社としてスタートした。さまざまな造形物を扱う中、キノコの遊具を製作する。触ると柔らかいのに子どもが乗って遊べるほど頑丈な上に、見た目がリアルで教材にもなるという優れモノだ。そこに使われた独自の技法が後の恐竜づくりにつながっていく。
「仕事で関わっていた博物館から、『どうしたら来場者を増やせるか』とよく相談されたんです。傍らに展示されていた恐竜の化石や、ロボット恐竜を見て、ふと生きているように歩き回る恐竜がいたら子どもたちも面白がるんじゃないかと思い付きました」(小塚さん)
5年もの歳月を費やした開発が年間20万人動員のショーに発展
2003年、2人は恐竜型メカニカルスーツの開発に乗り出した。皮膚は緻密な彩色技法を駆使して質感を表現し、骨格にはカーボンファイバーを使用して、全長8mの恐竜でも30㎏台という軽量化を実現した。内部では、訓練を受けたパイロットが装置を巧みに操り、手足や首、口を動かしたり、まばたきを行ったりする。着想から約5年の歳月を経て、第1号となるアロサウルスが完成した。
「最初はどうマネタイズすればいいのか分からなかったんですが、飛び込みで恐竜博のイベントに営業に行ったら、担当者が面白がってくれてデビューを果たしました。さらに、それを見たメディアや商業施設から声が掛かり、『これでショーをやりましょう』という話になりました」(小塚さん)
その後、歩く恐竜体験プロジェクト「DINO-A-LIVE」のシリーズ化を目指して、次々と新型恐竜を製作した。当初は2~3頭で小さなショーをこなしていたが、17年、渋谷ヒカリエで開催された「ディノサファリ」で本格ライブを果たす。7~8頭が登場する約60分間のショーで、見る者に驚きと感動を与えて評判となる。以降、同施設の定番公演となり、毎年2~3万人の来場者を動員する人気コンテンツに成長した。ほかにも、テレビ番組とコラボした全国アリーナツアー「世界一受けたい授業 恐竜に会える夏!」、福井県立恐竜博物館での「蘇ったフクイラプトル!」、国内劇場ツアー「恐竜ラボ!」など、エンタメだけでなく教育的要素も取り入れたさまざまなライブショーを展開している。
その過程で同社は、専門家のアドバイスや最新の学術研究を反映し、トリケラトプスの表皮にトゲを生やすなどのアップデートを重ねてきた。現在、製作した恐竜は37頭を数える。ショーの内容も進化を続け、昨年開催した「ア・ダイナソーオデッセイ」は大きな反響を呼んだ。恐竜たちが現代に降り立ち、生命の誕生から恐竜の絶滅までを繰り広げるというストーリーで、音楽、ダンサー、映像、舞台効果によってアーティスティックに表現されている。
「ノンバーバル(非言語)にこだわって、言葉を使わずに構成しました。ずっとやりたかったものの、言葉がなくて伝わるだろうかとなかなか踏み出せなくて。ですが、ふたを開けたら大好評で手応えを感じました」(金丸さん) 確かな技術と挑戦の結果、「DINO-A-LIVE」は年間最大20万人を動員する人気ショーとなった。
SNSが後押しする次なるステージは世界
「DINO-A-LIVE」は同社の宣伝活動以上に、来場者によるSNS投稿が人気を押し上げてきた。動画映えする恐竜のライブパフォーマンスは拡散力が高く、実際に2000万回以上再生されているショーもある。それがさらに認知を広め、近年では海外からも熱い視線が注がれている。
「海外からのオファーは毎年来ていますが、輸送コストや人的リソースの問題でまだ1頭での出演しか実現していません。ただ、海外にも通用するノンバーバルのライブショーをつくることが目的だったので、ぜひ実現したいですね」と小塚さんは語り、金丸さんもこう続ける。「AIの発達によって、まちを歩く恐竜の動画が簡単につくれてしまう時代です。だからこそリアルの力強さを感じるし、今後も恐竜のリアリティーを追求して、生命の素晴らしさや自然のすごさを世界中の人に伝えていきたいです」
一体の恐竜の造形から始まった同社の挑戦は、次なる進化のステージへと歩みを進めている。
会社データ
社 名 : 株式会社ON-ART(オンアート)
所在地 : 東京都立川市高松町1-100
電 話 : 042-519-3105
代表者 : 金丸賀也 代表取締役社長
従業員 : 13人
【立川商工会議所】
※月刊石垣2026年3月号に掲載された記事です。
