海外の魅力的なボードゲームの輸入販売を主軸に事業展開するエンゲームズ。それと並行してオリジナルゲームの開発にも乗り出し、「ノコスダイス」を商品化した。伝統的なトリックテイキングゲームを踏襲しているが、最後に残したダイス(=ノコスダイス)が勝負を決めるという画期的なルールが海外で高い評価を得て、国内外で大きな注目を集めている。
世界のゲーム愛好家が注目 日本発の新感覚ボードゲーム
ボードゲームとは、紙のカードやボード、木でできた駒などを用いるアナログゲームの総称で、人生ゲームやUNO、モノポリーなどが有名だ。ゲーム市場ではデジタルゲームが圧倒的なシェアを誇る一方、ボードゲームの創造性やコミュニケーション価値が再評価され、近年、幅広い層でユーザーが拡大している。その中で話題を集めているのが、エンゲームズが2019年に発売した「ノコスダイス」だ。配られたカードと獲得したダイス(サイコロ)を組み合わせて戦う新感覚のトリックテイキングゲームで、自分が勝つ回数を事前に宣言することが一般的な中、手元に残したダイスの出目が最終的な勝利条件になるという独自ルールが特徴だ。
「トリックテイキングというのはボードゲームの伝統的なジャンルで、基本的に手札からカードを1枚ずつ出し合うミニゲーム(トリック)の繰り返しによって勝敗を決めるものです。『ノコスダイス』も同様ですが、ダイスの出目という運の要素もありつつ、他のプレイヤーが残しているカードやダイスを推理し、最終的に自分が何勝するかをゲーム中に予想するところが新しい点。熱い心理戦が繰り広げられるのが魅力です」と同社社長の杉木貴文さんは説明する。
長年培った経験と目利き力でオリジナルゲームづくりへ
杉木さんは、子どもの頃からアナログゲームに親しんできた。中学生の時に世界初のトレーディングカードゲーム(TCG)「マジック:ザ・ギャザリング」と出合い、以降没頭する。大学院時代には海外のプロツアーにも出場し、TCGの開発支援やイベント運営を行うなど人脈も築いてきた。卒業後は、大手ICT企業に就職したが、実家の寺を継ぐために富山に戻り、17年に起業してボードゲームカフェをオープンした。
「とはいっても、当初はお客さんもあまり来なくて時間に余裕があったので、海外の魅力的なゲームを日本に輸入して販売できないかと考え始めました」
海外の出版社と交渉し、輸入販売事業を開始した。ボードゲーム市場は世界的に成長しており、フォーチュンビジネスインサイトの調査では24年に約2・5兆円、32年には5兆円規模になると予想されている。そんな追い風と、長年の経験で培った目利き力により、杉木さんが輸入販売するゲームは注目を集め、事業は軌道に乗る。そんな中、杉木さんはオリジナルゲームの開発・販売を模索し始めた。
「『ゲームマーケット』という毎回3万人ほど集まるアナログゲームの祭典があり、約1200人のアマチュア作家が作品を発表するんです。その中で昔からのゲーム仲間の松本裕介さんがつくったゲームが革新的で、これを世に出したら人気が出ると直感しました」
それが「ノコスダイス」だ。杉木さんは、松本さんに商品化を提案し、ルール設計はそのままに、パッケージデザインや内容物など製造全般を担当。初めての商品化で工場選定や輸出手続きなどにてこずったが、それ以外はスムーズに進んだ。
「市場の反応を知るために、19年のゲームマーケットで先行販売しました。ゲームファンは新しいゲームをいち早く遊び、その感想をSNSで発信してくれるんです。想像以上に反響が大きく、初回に生産した3000部が2週間で完売しました」
コロナ禍で加速したゲーム需要 海外市場へアプローチを強化
その後コロナ禍のおうち時間の増加により、ボードゲームの需要が急拡大し、日本の市場規模もコロナ前の50億円から100億円へと倍増した。同社が扱うボードゲームは、過去6年の日本ボードゲーム大賞で3回受賞を果たし、有識者やユーザーからも高い評価を得ており、販路は全国で約500店舗に拡大。看板商品である「ノコスダイス」も順調に売れ行きを伸ばす。杉木さんは、日本の約200倍という市場規模を持つ海外に打って出るため、23年にノコスダイスのリニューアル版を発売した。
「ドイツで開催される世界最大のボードゲーム見本市に出展するに当たり、海外の代理店にヒアリングをしたところ、20ドルの価格に対して箱のサイズが小さいとフィードバックを受けました。そこでパッケージを変更し、新たにボードも追加しました」
同見本市に約1500のゲームが出品された中、「ノコスダイス」はその高い戦略性が大きな評価を得る。それも追い風となり、現在、国内販売累計は約1万1000部、海外では4万数千部の契約が成立、さらに70カ国の代理店と交渉中で、最終目標は60万部を見込んでいる。
昨年にはオリジナル2作目となる「ゴーストリフト」を発売し、こちらも海外で高評価を得ているほか、日本人のゲーム作家作品では初の「ドイツ年間ゲーム大賞2025」を受賞した「ボムバスターズ」の日本代理店となるなど、会社の知名度も上がっている。
「エンゲームズが出すゲームなら面白いよね、という信頼とブランド力はついてきたかなと思います。今後も国内はもちろんですが、海外市場へのアプローチをさらに強化して、3年後に海外売り上げ2億円を達成したい」と杉木さんはグローバルなビジョンを語った。
会社データ
社 名 : 株式会社Engames(エンゲームズ)
所在地 : 富山県射水市流通センター水戸田2-3-1
電 話 : 0766-75-8967
HP : https://engames.jp
代表者 : 杉木貴文 代表取締役社長
従業員 : 3人
【富山商工会議所】
※月刊石垣2026年7月号に掲載された記事です。
