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まちの視点 真っ正直に顧客最優先

ドン・キホーテの原点「泥棒市場」

4月30日限りで終わりを迎える「平成」の代。この30年間は、日本の近現代史において特異な時代だったと後世に振り返られるかもしれない。

特筆すべきは明治、大正、昭和と経験した対外戦争を経験しなかったことである。その意味で日本は極めて健全な経済活動を謳歌(おうか)できるはずだった。

しかし、バブル崩壊、リーマンショックという激烈な景気インパクトにより、日本経済は長くデフレに苦しんできた。また、阪神大震災、東日本大震災など頻発する自然災害が将来への不透明感をかき立て、さらには急激に進む少子高齢化・人口減少社会への閉塞感を際立たせた時代でもあった。

過去の成功体験は通用しない

日本社会は平成の中ごろに人口のピークを迎え、これからは急勾配のジェットコースターを降りていくように人口減少が進んでいくことが各種の統計から明らかになっている。65歳以上人口の割合を示す高齢化率は50%へと迫り、世帯形態はかつて標準世帯といわれた「夫婦と子」という核家族から「単身」がその主流となっていく。しかも、その多くが高齢者世帯。〝お年寄りの独り暮らし〟が日本のスタンダードとなるのだ。

つまり、これまでの人口増加社会において企業成長を約束してきたビジネスモデルは、もはや通用しない。そのとき、過去の成功体験はこれからの企業成長の反面教師とはなっても、ロールモデルとはならない。

百貨店はインバウンド需要で一息ついたものの縮小が止まらず、総合スーパーはその総合性ゆえに利益を出しづらいという構造的弱点を抱え、コンビニエンスストアは過当競争ゆえの曲がり角を迎えている。また、ショッピングセンターは強みとしていた品ぞろえの豊富さ、一度で事足りる利便性の良さをインターネット通販に凌駕(りょうが)され、廃業数が開業数を上回る恐れさえ現実化しつつある。

では、どこに活路があるのだろうか。平成の時代に成長を続けた、ある小売企業が参考になるかもしれない。

平成の30年間増収増益

現在、日本には株式上場企業が3654社ある。その中で他社を引き離して長く連続増収増益を続けている企業2社をご存知だろうか。共に小売業で、31期を数えるニトリホールディングスと、29期と続くドンキホーテホールディングスである。

「業界常識は勝利者の論理であって、勝利のための論理ではない。だから、後発企業が先発企業のまねをしても絶対に勝てない」

こう語るのは、ずぶの素人から1978年に18坪の雑貨安売り店「泥棒市場」を創業し、いまや売上高約1兆円、店舗数およそ700店を数える異形のチェーンストア、ドン・キホーテの創業者、安田隆夫氏。同社の成長要因である「深夜営業によるナイトマーケットの開拓」「魔境のような圧縮陳列」「商品の価値を饒舌(じょうぜつ)に伝える大量の手書きPOP」のいずれもが、業界常識を疑い、過去の成功体験を否定し、ひたむきなまでに目の前のお客の満足実現を追求してきた成果にほかならない。

同社では、この在り方を「顧客最優先主義」と呼ぶ。それは、商業界創立者、倉本長治が唱えた「店は客のためにある」という教えと一致する。

そして安田氏はこう続ける。

「結局、商売は真っ正直にやるのが最終的に一番もうかる方法だ。それはつまり、顧客最優先主義の徹底に尽きる」

ここに、新しい御代を勝ち抜く根本原理がある。

(商業界・笹井清範)

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