毎年、春先になると腰の調子が悪い……という人はいませんか?実は、春は腰痛に注意が必要な季節なのです。
理由はまず、冬の間に寒さで活動量が減り、腰を支える筋肉が弱っていることが挙げられます。運動不足で血行が悪くなると、筋肉に酸素や栄養素の供給が少なくなり、老廃物も取り除かれにくくなって、筋肉の修復力が弱まります。
また、この時期は寒暖の差も大きく、風の強い日は体感温度も下がるなど、意外に体が冷えています。冷えは血行を悪くするので、筋肉が固くなってしまいます。
さらに3月といえば年度末で、仕事が慌ただしい時期です。腰痛は精神的な影響を受けやすいといわれているので、忙しさからストレスがたまっていると、そのしわ寄せが腰に来るケースも少なくありません。つまり、春は腰痛持ちにとって〝鬼門〟といえるのです。
そこで大事に至る前に、固くなった筋肉を動かして、しなやかさを取り戻しましょう。いきなり運動を行うのではなく、普段から腰の周りの筋肉をこまめにストレッチするのが効果的です。
例えば、いすに座った姿勢で上体を左右にひねると、腹筋や背筋(はいきん)を心地よく刺激できます。また、立った姿勢でアキレス腱を伸ばすのも有効です。アキレス腱を伸ばすと、足全体の血行がよくなるので、腰の筋肉の修復にもつながります。これらはオフィスや工場など、どこでも手軽に行えます。
体が固くてストレッチが苦手な人は、入浴中がお勧め。湯船に漬かると筋肉も緩み、適度な水圧も加わって、心地よく伸ばすことができます。 筋肉をしなやかないい状態に保つことは、腰痛をはじめ、全身の凝りや痛みの改善にもなります。これを機に、〝いつでもストレッチ〟を習慣にしてみてはいかがでしょうか。
福田千晶(ふくだ・ちあき) 医学博士・健康科学アドバイザー 1988年慶應義塾大学医学部卒業後、東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学科に勤務。96年よりフリーランスの健康科学アドバイザーとして、講演、執筆、テレビ・ラジオ番組への出演などで幅広く活躍。また、診療所などで診察を担当するほか、産業医として企業の健康管理や健康啓発にも携わる。主な著書に『メタボがわかれば寿命がのびる!』(白夜書房)、『体脂肪を燃焼させるスロートレーニング』(永岡書店)など多数
最新号を紙面で読める!