テーマ別企業事例 地域も会社も潤う “農商工連携”で千客万来!

事例4 女性目線で農業を6次産業化「農村→NO損」で「百姓→百笑」に

シュシュ(長崎県大村市)

レストランのランチバイキングでは、味はいいが形や色が“規格外”の旬の食材を活用

地域の活性化と農業後継者の育成を目的として、1996年に「食と農」を主体としたアグリビジネスをスタートしたシュシュ。同社が開設した農業交流拠点施設「おおむら夢ファーム シュシュ」では、地元農家が生産した旬の農産物をさまざまな形で提供し、今では年間約49万人が訪れる観光ファームに成長している。

専業農家8戸が集まり農産物直売所からスタート

長崎空港から車で約15分。大村湾を望む見晴らしのいい高台に「おおむら夢ファーム シュシュ」はある。施設内には、農産物や加工品を販売する直売所を中心に、アイス工房やパン工房、洋菓子工房、レストランなどが立ち並ぶ。同施設を運営しているのがシュシュだ。

この地域では野菜や果物、米などさまざまな農産物がつくられ、40数年前から梨狩りやブドウ狩りなどの観光農業にも取り組んできた。しかし、収穫体験に訪れる観光客は8~9月の2カ月に限られ、それ以外の時期はほとんど人が来ない状況だった。

「私がかつて農協で営農指導員をしていたとき、地域の農家は収入が安定せず、やがて高齢化し、廃業していくのを見てきました。これでは希望が持てず、後継者は育ちません。この辺りでは1年中農産物を育てているのだから、年間を通じてお客さんに来てもらいたいと考えました」と同社社長の山口成美さんは発端を説明する。

そこで着目したのが6次産業化だ。農業生産だけでは利益は出にくいが、加工や販売・サービスまで事業化することで、「農村」は「NO損」、「百姓」は「百商・百笑」のイメージに変えたい。その手始めとして、1996年に大村市内の専業農家8戸が集まり、ビニールハウス内に農産物直売所「新鮮組」をつくった。その翌年には牛乳と卵をふんだんに使った手づくりアイス工房をオープンし、初日から1000人以上が訪れる人気スポットとなった。

安易に安売りせず加工品やランチバイキングに活用

さらなる集客を目指して、全国の農産物直売所も視察した。すると農家や地域の人が運営している施設ほど成功していることがわかった。そこで行政の三セク方式ではなく自分たちの力でやっていこうと決め、総額4億円を投資して、2000年に「おおむら夢ファーム シュシュ」を開設した。

「農家が商売をしてうまくいくはずがない、無謀だ、99%失敗すると、周りからは散々言われました。でも、何もしなければ地域農業は衰退していくだけ。残りの1%に望みを懸けました」

「新鮮組」の運営で意識したのは、お客と生産者の距離感だ。生産者の顔写真を商品棚に掲示しているほか、生産者自身が多いときで1日7~8回も納品に訪れ、自ら棚に陳列していく。お客と生産者が直に接する機会があるのだ。しかもひんぱんに納品されれば、時間帯によって商品が品薄になったり、鮮度が落ちる心配もないため、お客から喜ばれる。生産者もお客の消費行動が見られるというメリットがある。

「同じ野菜でも売れるところと売れないところがある。その場合、私は生産者に『値段で勝負しないで』と言っています。値段を下げれば売れるかもしれないが、その分儲(もう)けも減ってしまう。値段は変えずに、袋詰めの仕方や商品の並べ方、POPの書き方などで工夫するようにとアドバイスしています」

また、同社でも安売りをしないために、アイス工房やパン工房、レストランなどと連携し、農産物をもれなく活用する対策をとっている。

「いくら旬でも毎日ニンジンは食べません。また、味は良くてもサイズが小さかったり、形や色が悪かったりすると売れ残ってしまいます。それらをジュースやジャムなどに加工したり、アイスやパンの材料にしたり、レストランのランチバイキングに活用したりしています。レストランで食べておいしければ、帰りに直売所で買ってくれるので、一石二鳥なんです」

同社ではこれらの売り上げを1週間ごとに集計し、生産者には翌週水曜日に振り込む。農家にとっては月に4~5回、‶給料〟が支払われる形だ。毎週お金が入ることも、つくり手の意欲につながっている。

女性従業員が女性客の欲しがる新商品を開発

同社は09年に農産物加工センターを開設し、今では約300種類の農産物や加工品を販売している。新商品開発の主戦力は、同社の約8割を占める女性従業員だ。

「直売所のお客さんの7割は女性です。その人たちがどんなものを欲しがっているかを知るには、女性目線や生活感覚が必要なんです」

そうしてできた一例が「ベジタブル&フルーツジュレ」だ。食材の旬の味をそのまま閉じ込め、なめらかでとろりとした食感に仕上げたスイーツで、同社の新卒採用試験で募った新商品アイデアから生まれた。ほかにも特産品を使った「黒田五寸人参ジュース」、卵の味と形を生かした「いつまでも君(きみ)を愛す」など目を引くものが多く、そのほとんどが全国地産地消コンクールや特産品グランプリなどで数々の賞を受賞している。

現在、同社では販売だけでなく、食育や体験教室、ウエディングや農家民泊なども幅広く行う。年間約49万人が訪れ、地域ににぎわいを創出している。

「地元に人を呼ぶという目標はある程度達成できました。今後は地元が誇る味を国内外の人に広く食べてもらえるように、オンラインショップなども充実させていきたい」と山口さんは屈託ない笑顔で語った。

会社データ

社名:有限会社シュシュ

所在地:長崎県大村市弥勒寺町486

電話:0957-55-5288

代表者:山口成美 代表取締役

従業員:80人

HP:http://chouchou.co.jp/

※月刊石垣2020年5月号に掲載された記事です。

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