内閣府と中小企業庁は5月18日、「第1回未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」をテレビ会議形式で共同開催した。日本商工会議所の三村明夫会頭が出席。自身が座長を務め、大企業と中小企業が共に稼げる共存共栄関係の構築に向けて施策の方向性を示した「価値創造企業に関する賢人会議」の取りまとめ内容を報告するとともに、「サプライチェーン全体で新たな共存共栄関係を築くことが必要」と強調した。
同会議は、労務費などの価格転嫁に関し、下請中小企業振興法第3条に規定する「振興基準」の順守など個社による自主行動宣言を通じ、発注側の大企業と受注側の中小企業の協議を促進すると同時に、サプライチェーン全体の生産性向上の取り組みを推進し、大企業と中小企業が共に成長できる持続可能な関係の構築が目的。中小企業庁において、大企業と中小企業の取引構造を見直し、個別取引の適正化を図るために設置された賢人会議の検討成果(2月28日中間報告)を受けて、安倍首相から「関係省庁と連携しながら大企業と中小企業の共存共栄に向けた取り組みをしっかりと進めてほしい」と、西村康稔内閣府特命担当大臣(経済財政政策)と梶山弘志経済産業大臣に検討指示が出され、設置された。政府側は両大臣のほか、加藤勝信厚生労働大臣、江藤拓農林水産大臣、赤羽一嘉国土交通大臣、西村明宏内閣官房副長官、岡田直樹内閣官房副長官がメンバー。経済界からは三村会頭と日本経済団体連合会の中西宏明会長、労働界からは日本労働組合総連合会の神津里季生会長で構成されている。
会議で三村会頭は、「ソサエティー5・0時代に、わが国の国際競争力を高めるには、大企業と中小企業が協力して新たな価値を創造し、適正な取引価格の実現により、サプライチェーン全体での新たな共存共栄関係の構築が必要」との見解を示した。「新たな価値の創造には、系列や業種を超えたオープンイノベーションの推進が大切である」と述べた。また、「取引価格の適正化について、中小製造業は20年以上、労働生産性を3〜5%伸ばしているが、価格転嫁が十分できず付加価値が減少し、結果として名目労働生産性の伸びが1%程度にとどまり、設備投資や人件費引き上げが困難な状況が継続している。特に、リーマンショックや超円高などで大企業が経営悪化した際は、取引価格の中小企業へのしわ寄せが発生し、現在に至っても未解決である」と懸念を示し、現在のコロナ禍で同様の状況に陥るのを防ぐことが重要と強調した。
同会議での検討結果は、今夏の成長戦略や骨太の方針に反映されることになっている。
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