Q 当社は、従業員30人の会社でしたが、この5年間で従業員が50人になりました。従業員が一定人数増えると障害者を雇用しなければならないと聞きましたが、どのような制度でしょうか。また、障害者を雇用しない場合、罰則があるのでしょうか。
A 常時雇用する従業員が45.5人以上の会社は、2.2%以上の障害者を雇用しなければなりません。順守できないときには罰則は科せられませんが、行政指導の対象となります。
1 障害者の雇用促進とは
障害のある人もない人も社会の一員であり、共生していかなければなりません。障害者も働くことを希望していますが、従業員の採用を企業側に委ねていると、なかなか、障害者に対して就職の機会が生まれません。
そこで国の施策として一定の規模以上の企業に障害者の雇用義務を課し、障害者の雇用促進を図るようにした法律が「障害者の雇用の促進等に関する法律」(以下「同法」といいます)です。
同法は次のような内容です。
①障害者に対する職業リハビリテーション(障害者に対する職業指導、職業訓練、職業紹介)の推進
②障害者に対する差別の禁止(募集、採用についての均等な機会付与、待遇についての不当な差別禁止)
③障害者の雇用義務を定めることによる雇用促進
2 障害者の雇用義務
障害者雇用促進の大きな柱の一つは、一定の規模の企業に対する障害者の雇用義務です。雇用義務の概要は以下の通りです。
①雇用義務の対象となる障害者…障害者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者
②雇用義務の対象となる事業主…従業員を45・5人以上雇用している者(小数点以下があるのは、短時間労働者は0・5人と計算するからです)
③法定雇用率…障害者である従業員を分子、総従業員を分母とした割合
3 法定雇用率未達成の場合
法定雇用率が未達成の場合には、行政指導が入り、それでも改善されない場合、企業名が公表されます。
また、常時雇用する従業員が100人を超える会社については、法定雇用率で計算した障害者雇用数を下回る人数しか障害者を雇用していない場合は、その未達成人数に月額5万円を乗じた金額を障害者雇用納付金として国に納付しなければなりません。
4 障害者雇用調整金の支給
他方、常時雇用する従業員が100人を超える会社が法定雇用率で計算した障害者雇用数を上回る人数の障害者を雇用している場合は、その超過人数に月額2万7千円を乗じた金額、常時雇用する従業員が100人以下の会社の場合、その超過人数に月額2万千円を乗じた金額が障害者雇用調整金(報奨金)として国から支給されます。
5 本相談事例の場合
従業員が50人の会社ですと、50人×2・2%=1人の障害者を雇用する必要があります。
会社が通常の募集採用活動を行う中で、採用者の中に障害者が含まれていれば、それで法定雇用率をクリアすることになります。募集して応募者の中に障害者がいなければ、ハローワークに求人を出す方法もあります。
前述の通り、法定雇用率を順守できない場合、罰則が科せられるというわけではありませんが、行政指導の対象となりますし、従業員が100人以上の会社の場合には、障害者雇用納付金の納付が必要となります。 (弁護士・山川 隆久)
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