事例3 遊休機械無償マッチングをけん引する刈谷方式
刈谷商工会議所(愛知県刈谷市)
全国の企業から遊休機械を無償で提供してもらい、ニーズがある被災企業に役立ててもらう。そんな志のもとに、日本商工会議所と東北六県商工会議所が進めている「遊休機械無償マッチング支援プロジェクト」は、平成23年6月に発足した。今年で4年目を迎え、全国の商工会議所から多くの支援が寄せられている。中でも愛知県の刈谷商工会議所は質・量ともにトップクラスの支援を誇り、このプロジェクトのけん引役として注目を集めている。
ものづくりの地から沸き起こった協力の声
平成27年1月29日、刈谷商工会議所で提供機械の引き渡し出発式が開かれた。これで出発式は13回目となり、通算で提供企業は136社、無償提供の点数は3338に上るという。
「プロジェクトの話を聞いたとき、とてもいいことだと思い、すぐに会員企業に意見を求めました」と同所の加藤善弘事務局長は振り返る。しかし、当初はなかなか賛同会社が集まらなかった。「機械には使い手のクセがついている」「移動させると故障しやすい」「中古を贈るのは失礼」といった消極的な意見が続出し、一度は参画を断念したという。
そんな折、豊田自動織機の協力会社で構成される「豊永会」から参加の申し出があった。それを機に、風向きはガラリと変わることになる。
もともと、刈谷はトヨタ自動車発祥の地であり、トヨタグループ企業の本社が立ち並ぶ工業都市。ものづくりのまちとして、できることから参加したいという会員企業が続々と名乗りを上げた。
「とはいえ、漠然と『お宅の遊休機械を提供してください』、ではなかなか集まりません。無駄を省くというトヨタの5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ))が浸透しているところでは、なおさら〝遊休機械〟などないわけです。しかし、機械の更新ならあるでしょう。その時期を少し前倒ししていただいて、まだ使えるものをご提供いただけないかと、職員一人ひとりが担当企業を回りました」
「三方よし」の刈谷方式が職員も育てる
プロジェクトを実施していくうちに、フォークリフトやボール盤などの工業用の機械類だけが望まれているわけではないと気付く。工場ばかりではなく、商業や病院などさまざまな業種も同じように被災し、物不足に悩んでいる。視点を変え、多業種に募集の窓口を広げた。その結果、車イスやハンドリフト、大型冷蔵庫、乗用車なども集まってきた。
「被災企業よし」「提供企業よし」「商工会議所よし」の「三方よし」の考えを企業のCSR(社会貢献活動)に結びつけ、刈谷らしい取り組みが本格化していった。さらには、そこから商工会議所職員の資質向上と、会員との人間関係をより強固なものにすることも目指した。
「戦略的CSR、つまり、『刈谷式CSV(CreatIng Shared Value=共通価値の創造)』と名づけました。商工会議所の職員は、お願いすることが業務の中心です。このプロジェクトを通じて、職員の意識が高まり、共済事業の新規契約獲得数が増えるなど、他の業務にも好影響を及ぼしてくれました」
今では、会員企業だけでなく、広く市民にも認知された刈谷のマッチング事業。東北と三河の結びつきは強まるばかりだ。
※月刊石垣2015年3月号に掲載された記事です。
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